浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



とんかつ考察+おまけ

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さて「東京とんかつ会議」。
かためて、浅草の掲載店をまわってみた。

[とお山]かつカレー。

[とお山]。

[ゆたか]。

[河金・千束店]河金丼(かつカレー)。

実は、とんかつやでは、もう一軒ある。
かなりの高評価で掲載されているところ。
行ってみたのだが、店名・詳細は書くことはやめる。
掲載から数年経ち変わってしまったのか。
肉は水準以上だとは思うが、油切れがもう一つで、
気持ち火も通りすぎに感じられた。
また、これは店との相性であろうが、注文を間違って、
かつ詫びない。客商売として、首をひねらされた。
下町らしい、という言い方もあるが、私はだめである。

さて、気分を換えて、浅草ととんかつの関係。

山本益博氏は浅草のご出身で、かつ、とんかつは
子供の頃からの好物。故郷の味。
やはり、これが多分に影響しているのであろう。
多少の贔屓目はやはり否定はできないように思われた。

ただ[ゆたか]はなるほど、老舗らしい店で
かつ、味も高レベル。客あしらいも上。
とんかつやに限らず、浅草には老舗は数多いが、
その暖簾と看板がかえって、高慢といってもよい
ことになるところも、まま、ある。

とんかつというのは、益博先生も書かれているが、
時代によって、変わってきている。
[河金]のものなどである程度想像ができるが、
以前は、ロースなどは多少薄いものであった。
厚いと火が入らなかったということか。
技術の進歩であろう。
油温の違う油で二度揚げする。低温でじっくり
など、技が磨かれてきた。

また、肉の進歩のことも益博先生は語られている。
豚肉は、50年ほど前、高度成長の頃といってよいのか、
一度、味の落ちた時期があったという。
それが、今から20年程度前、イベリコ豚が入ってきて
うまい豚肉というものが料理人の中でも見直され、
生産者も吟味したブランド豚を生産するようになって
きたという。

浅草には[河金]以外にも[喜多八]という大正創業の
有名店があった。ここは平成20年(2008年)閉店している。
残念ながら私は行ったことがないので味はコメント
できない。

上野も含めてこの界隈は、大正期、とんかつが生まれ
育った街といってよいのであろう。
昭和の日本映画界の巨匠、小津安二郎川島雄三両監督は
奇しくもとんかつ好きで上野の[蓬莱屋](小津)
同[井泉本店](川島)は縁の店である。
大正、昭和の戦前、さらに戦後の高度経済成長前まで
であろう。庶民のご馳走として特に上野・浅草で育った。
我が池波正太郎先生もここでこの時期、生まれ育ち、
とんかつは、大好物であったことは、改めて書く
までもなかろう。(池波先生は[ぽん多本家]目黒[とんき]
などがご贔屓であったよう。)

が、やはり一度、とんかつやは衰退期を経験した
といってよいのだろう。

浅草の[河金本店][喜多八]は閉店してしまったが、
そこを生き残った、上野の[ぽん多本家][蓬莱屋]
[井泉本店]の三軒は、並々ならぬ努力と工夫があった
のであろう。
浅草はこの時期、街自体の衰退期とも重なっていた
可能性は高そうである。

東京の人間でも益博先生世代より下、高度成長期に育った
世代以下では、もはや、とんかつが故郷の味と
感じなくなっていたのではなかろうか。私はそうである。
今の元浅草に住むようになり、上野の各銘店で食べ、
改めてとんかつのうまさを発見している。

浅草ととんかつの関係。
記憶はあったのであろうが、一度衰退、そしてとんかつ自体の
進化、浅草の街のにぎわいの復活、これによって、浅草の
とんかつも目を覚まし始めた、というところであろうか。
まだ、これから。コロナ禍もあり、予断は許されぬかもしれぬ。

さて、口直し、というのか、おまけ。

10月19日(月)第一食

例の、ご近所、左衛門橋通りと浅草通りの角、
[嬉嬉豚とんかつ『君に、揚げる。』(極)]

課題であった、ノーマルなロース定食。1200円也。
この下(?)にランチロースもある。

雨でもにぎわっている。

きれいである。

アップ。

切り口も、よい色。
衣もしっかり。
油切れも上。

上ロースとの違いは、単純に厚み、か。

うまい、が。

もちろん値段が違うが、厚いものの方が、満足感は高い。
上から食べてきたので、当然ともいえるかもしれぬが。

とんかつの肉のうまみ、というのは、一定以上の
厚みが必要といえるかもしれない。

今回、カウンター席。衣付け、揚げているのを目の前で
見ることができた。

外一人、二人体制でてんてこ舞い。

これだけの忙しさであるが、一定以上のクオリティー
保って、かつを揚げ続ける手際。
そして、そのさ中、この方、客対応をしつつ、都度、
いらっしゃいませ、お待たせしました、ありがとう
ございました、丁寧にすべてのお客に声を掛ける。
これ、大事である。

 

 

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