浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



博多かしわ飯 その3

引き続き、博多、福岡名物かしわ飯。

博多どんたく・小伝馬町店。

ごぼ天のうどんを食べ終え、かしわ飯にかかる。

これが[博多どんたく]のかしわ飯。

味は有楽町交通会館の[よかよか]までではないが
多少“あの香り”がする。
そしてやはり、甘め。

具は鶏とごぼう

やはり、甘め、というのが特徴なのであろう。

三軒のかしわ飯を食べてきたが、かしわ飯がどういうものか、
少しわかってきたような気がする。

さて、これ。

ここは、元気のいいお姐さんが注文を聞き、勘定をする場所。
麺の箱が重ねられている。

わざと、であろうが、ちゃんと製麺所の名前がわかるように
置かれている。

お分かりになろうか。
そう、浅草[開化楼]。

私の住む元浅草の製麺所にして、
有名ラーメン店の使う麺として、著名。

ほー。
[開化楼]さんはこうして、うどんの麺も作っているのか。
まあ、考えてみれば[開化楼]以外にも近所には製麺所は
地場産業といってよいほど、いくつもあるが、どちらかと
いえば、そば、うどんがメインのところが多かろう。

おそらく、この店のいう“やわふわ”の博多うどんのために、
オリジナルの配合でオリジナルのうどんの麺を作っている、
ということなのであろう。

うまかった。

ご馳走様でした。

さて。
逮捕リスクを抱えながら入手した駅弁「博多名物かしわめし」。

食べたのは、夜。

博多壽改良軒製。
開けるとこんな感じ。

ビールをあけて食べる。
ご飯がもちろん、かしわ飯。
その上に、海苔、鶏の照り焼き、きれいな錦糸玉子。
おかずは、がめ煮、一般にいう筑前煮、と高菜の漬物。

しおりが付いている。

元々は、寿軒というところが売っていたものらしいが、
少し前に廃業。それを引き継いで復刻させたもの、
だそうな。
その際に、できるだけ伝統的な作り方を再現した、という。

これによれば元来、江戸期から黒田家福岡藩は鶏卵生産を
奨励しており、江戸、大坂にも出荷していたという。
その関係で、鶏肉もよく食べていたという。
ここにも入っているがめ煮も、かしわ飯も、あるいは
博多名物の鶏の水炊きなども、そういう背景があるらしい。
特に、成長し玉子を産まなくなった親鶏を使う。
若鳥と違って、身は堅い。
この弁当もその親鶏を使っているとのこと。

なるほど、上にのっている照り焼きも、がめ煮
鶏も、それとわかるほどコリコリの食感。
これが、うまい。

おそらく身が固い親鶏は、若鳥に比べれば
安いのであろう。庶民のうまいもの。
そういうことなのである。

かしわ飯。
やはり、これも甘め。
そして、やっぱり、あの香りがある。

駅弁系には、あの香り、が、よく使われているように
思うのだが、どんなものか。
だが“あの香り”の正体がなにかは依然としてわかっていないが。

ともあれこの駅弁、かしわ飯も、おかずも、どれもうまい。

駅弁まで食べて博多、福岡のかしわ飯、ほんの少しだが
わかってきたような気がする。

さて。
かしわ飯の「かしわ」とはなんであろうか。
もちろん、鶏のこと、というのは皆知っている。

ではなぜ鶏を「かしわ」というのか。
語源とすれば、在来の和鶏は羽が茶色で、この色が
柏の葉っぱに似ているから、という。
また、今は名古屋以西のようだが以前は東日本でも
使われていたとのこと。 (語源由来辞典

柏の葉の色のことだというのは、私は知らなかった。
猪肉をぼたん、馬肉をさくら、という。これらは肉の色。
まあ、近いところか。

ともあれ、博多かしわ飯。
博多と書いてきたが、実際には、博多の街だけでなく、
福岡地方と地域はもう少し広げてもよいのであろう。

そして、江戸期から、鶏肉(それも親鶏)が庶民にも
よく食べられていたであろうということ。

私は知らなかったちょっと意外な歴史である。
大分の鶏から揚げ、宮崎の炭火の焼鳥だったり、
九州広く、鶏はよく食べられている(?)。
福岡の鶏肉食文化は九州広くに関係があることなのか。

ヤワうどんから博多うどん、さらにかしわ飯に広がったが、
おもしろく、慣れてくるとうまいものであった。

さらに一つまた、疑問というのか、謎が出てきている。
甘い、ということ。東京の濃口しょうゆ文化とは相当に違う。

福岡のしょうゆは甘い。ただ、かしわ飯が甘いのは、
しょうゆだけではないのかもしれぬ、とは思っている。
砂糖なのか、みりんなのか、甘くなるもの。
言われていることと思うが“甘め”食文化と言ってよいのであろう。
ただ甘いのは、むろん福岡のしょうゆも関係しているだろう。
今回調べていてわかったのだが、福岡のしょうゆが甘いのは
甘味料を入れて甘くしているよう。これはおもしろい。
#FUKUOKA

まだまだ、全体像は理解できたとは言えないが、博多・福岡
食文化ちょっと気にしてみたい。

 

 


博多どんたく・小伝馬町店

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