浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



歌舞伎座・五月大歌舞伎團菊祭 その1

dancyotei2018-05-10


5月4日(金)


さて。連休唯一の行事、芝居見物。


今月の歌舞伎座は、毎年恒例の團菊祭。


明治に活躍した九代目團十郎と五代目菊五郎の顕彰を
看板にして、團十郎菊五郎にちなんだ演目を上演する。


夜に「弁天小僧」があるので、夜に決めた。
五月に入ってチケットを取ったが、1階の中央あたりの
そこそこ前が取れた。


いつも着物で行くことにしているが、脚も痛いので、
着物はやめ。
ただ、一応、ジャケットくらいは着ていく。


4時半開演。


内儀(かみ)さんは、銀座のデパートに用があるだかで
先に出て、4時前に歌舞伎座前で待ち合わせ。



弁当は、木挽町[辯松]で買って入る。


演目と配役を写しておく。


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夜の部


河竹黙阿弥


一、弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)


序 幕 雪の下浜松屋の場


    稲瀬川勢揃の場


二幕目


 


    極楽寺屋根立腹の場


    同  山門の場


    滑川土橋の場



弁天小僧菊之助 菊五郎


忠信利平    松緑


赤星十三郎   菊之助


日本駄右衛門  海老蔵


鳶頭清次    松也


松屋宗之助  種之助


関戸吾助    廣松


丁稚長松    寺嶋眞秀


番頭与九郎   橘太郎


岩渕三次    九團次


狼の悪次郎   市蔵


木下川八郎   権十郎


伊皿子七郎   秀調


松屋幸兵衛  團蔵


南郷力丸    左團次


青砥左衛門藤綱 梅玉



二、鬼一法眼三略巻(きいちほうげんさんりゃくのまき)


菊畑



智恵内実は吉岡鬼三太 松緑


吉岡鬼一法眼     團蔵


皆鶴姫        児太郎


笠原湛海       坂東亀蔵


虎蔵実は源牛若丸   時蔵




六歌仙容彩


三、喜撰(きせん)



喜撰法師  菊之助


所化    権十郎


同     歌昇


同     竹松


同     種之助


同     男寅


同     玉太郎


祗園のお梶 時蔵



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とにもかくにも「弁天小僧」で、ある。



幕が開く。



本舞台、浜松屋の店先。


花道から菊五郎の弁天小僧、赤い着物で武家のお嬢様姿、
従者の若党に扮した南郷力丸、左團次が登場する。


「白波五人男」という通称もあってこちらの方が
よく使われるとも思うが、今回は菊五郎出演なので
「弁天小僧」といった方がよいだろう。


歌舞伎といえば、時代物は「勧進帳
世話物はこの「白波五人男」・「弁天小僧」が代名詞といってよいくらい
ポピュラーな演目。


「しらざぁ〜いって聞かせやしょう」の名台詞。
歌舞伎を観たことのない人も一度くらいは
聞いたことがあるであろう。


正しい演目名、外題(げだい)は
「青砥稿花紅彩画(あおとのそうしはなのにしきえ)」という。


弁天小僧が出る幕だけを上演する場合に
今回の外題「弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)」を
使うことになっているとのこと。今回はそういう幕の構成。


この芝居、そもそも幕末期初演の弁天小僧は五代目尾上菊五郎
(当時19歳で名前は市村羽左衛門)で彼への当て書き。
以降、代々菊五郎の当たり役で、いわば音羽菊五郎家のお家芸といってもよい。
(ただ、成田屋團十郎家専売特許の歌舞伎十八番のような
うるさいことはないようで、例えば、海老蔵などが演じたのを
観たことがある。)(五代目菊五郎は毎度書いている、明治に活躍した
「そばや」の菊五郎である。)


作は河竹新七、後の黙阿弥翁。
初演は文久2年(1862年)江戸市村座


私はこの芝居、3回目。
最初が2009年、これが弁天小僧は海老蔵


で、二回目が2014年、通しで弁天小僧は菊五郎
(この菊五郎も今回も、もちろん当代で七代目菊五郎。)


通しだと全部で三幕九場ともう少し長いのだが、この作品の
全体の筋というのは、通しを一度観たが、まあ、
たいしたものではない。(ただ、一度は観なければ、たいしたことがない
ということもわからないわけだが。)
一度観れば、ほぼ、今回上演の弁天小僧の出る幕だけで事足りている
芝居であることはわかる。


しかし、このこと、ちょっとおもしろい。
欧米風、あるいは近代的な考え方では、作品性というのか、
その作品が優れているかどうか、というのは、作品全体で
評価されるべきだと思うのだが、この作品は全体はどうでもよくて、
特定のある役とその登場場面だけが、優れている作品である、
ということ。
それで人気演目として我が国では成立しているということ。
おもしろいではないか。






つづく