浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



麦とろ・まぐろやまかけ

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10月28日(日)夜

麦とろ、で、ある。

昨夜、なにかのTVでやっていた。
私が食べたいのもあるが、半分は、内儀(かみ)さんの希望。

麦とろというのは、麦飯にとろろ。

浅草にはご存知の方もあろうがその名も[麦とろ]という
料理やがある。
我々もたまに行っている。

麦とろ、うまいものである。

昨年であったか、とろろ汁で有名な東海道丸子宿の江戸からの老舗
[丁子屋]さんクラウドファンディングに参加し、大和芋など
送っていただき、うまさを実感した。

浅草の[麦とろ]も大和芋。

長芋もうまいが、断然大和芋。
粘りも強いし、うまみも濃厚。
もちろん、値段も高いのだが。

[丁子屋]さんから送っていただいたものを食べ終わった後、
やはり通販で取り寄せたりもしたが、それは妙にアクが強かったりし
なかなかむずかしいものであることもわかった。

今日は、近くで売っているものでやってみようと、
考えた。

先に麦飯の準備。
米を研いで、押し麦を入れ、水加減をしておく。
米二合に対して、麦90gほど。

大和芋は自転車で出たついでに、浅草松屋で調達。

棒状でそう大きなものではなくて、500円程度。

麦とろだけではさびしいので、マグロも調達。
そこそこよい中トロのサクとお安いバチマグロ赤身
切り落としを購入。

帰宅。

大和芋、群馬産である。

これはもちろん、切ったものであろう。
1/3くらいであろうか。
産地から取り寄せると一本ものの長いもので値段も
それなりに張る。このくらいの長さで十分である。

まずは、鰹削り節で出汁を取る。
量いらない。
常温に冷ましておく。

大和芋は洗って、ガスの火でひげ根を焼き切る。

皮ごとおろし金でおろす。


これは内儀(かみ)さん。

かなりかゆくなるようである。


そして、すごい粘り。
これが、大和芋、で、ある。

ここに、鰹出汁、全卵1個、酒、しょうゆ、わさび(チューブ)。


静岡県の[丁子屋]さんのレシピは味噌であったが、
やはり私は濃口しょうゆ。

出汁の量をどのくらい入れて、どのくらいにゆるめるのかの
塩梅がなかなか難しい。

この量で100cc、カップ一杯程度入れているが
このくらいでちょうどよさそうである。
また、全卵を入れると薄まる方向ではなく、むしろ
堅くなる方向のようである。

時々味見をしてしょうゆを足す。

よしよし、なかなかうまいものが、できそうである。

麦飯を炊き始める。

先に、山かけ。

中トロのサクを切って、かける。


ブツでよかったが、これは贅沢。
生の本マグロ、中トロ。

マグロにはまったく、とろろはよく合う。
そしてまた、やっぱり大和芋のとろろは、格別。

マグロ山かけ。
「マグロの山芋かけ」の省略形ということになろう。
“山かけ”は蕎麦でも使う言葉であるが
省略形として定着していたわけである。

これはいつ頃のことであろうか。

山芋をかける料理は、マグロが最も代表的といってよいだろうが、
実際にはもっとある。精力が付くという連想からかうなぎ蒲焼
にもかける。また、豆腐、納豆あるいは、ぶりの照り焼きなどに
かけたりするのは和食の定番である。
山芋自体はもしかすると、それこそ狩猟採集生活をしていた
米以前の縄文時代から食べていたのではなかろうか。
日本列島の長い長い歴史の中で様々な食べられ方がされていたことは
想像にかたくない。

ただマグロについていえば、定番の魚として流通に乗り、ちゃんと
食べられるようになったのは明治以降のことだと思われる。
蕎麦の山かけは江戸期には既にありそうだが、
マグロ山かけはそう古くから食べられてきたものでは
ないのではなかろうか。

ともあれ。

麦飯が炊きあがって、麦とろ。


青海苔を散らすべきであった。
だが、もちろん、うまい。

やはり、大和芋、単に長芋の粘り気を
強くしただけではなかろう。
味というのか、うまみというのかが、濃厚になっている
と思うのである。

うまい、うまい。

食べすぎぬよう、注意、で、ある。