浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)
断腸亭料理日記本店
 

浅草・洋食・ヨシカミ

10月3日(火)夜


今日は、例によって栃木からスペーシア
19時半、浅草着。


なにを食べようか、道々考えてきた。


思いついたのは、洋食。
六区の[ヨシカミ]


しばらくぶり、かもしれない。


東武の浅草駅を北口から降りて、
西へ真っ直ぐ。


馬道を渡って、左にカレーの[夢屋]、右にレストラン
[大宮]、左にラーメンの[与ろゐ屋]。


仲見世を突っ切って、右に伝法院のある伝法院通り。
このあたりも、このくらいの時刻でもはや
人通りは少なく、店もほとんどシャッターを下ろしている。


ウイークエンドの昼間は観光客などの雑踏で真っ直ぐ
歩けぬくらいである。


この伝法院通りは数年前から町並みを昔っぽくしているが
人が多いと人に埋もれてなんだかわからないが、
人がいないくなると店々の看板や外観がよくわかる。
また、常設のものだが、地口行燈なども少し上の方に
建てられている。


地口行燈といってもお分かりにならぬ方が多いかもしれぬ。
じくちあんどん、と読む。


地口、というのは、まあ洒落、駄洒落のこと。
落語の落ちで、洒落、駄洒落で落とすのを
地口落ちなどと言ったりする。


ちょっとした駄洒落とそれを描いた絵が
書いてある。


志ん生師のなにかの枕にあったが「お地蔵さんが電話をかけて
地蔵(自動)電話」。
(公衆電話のことを戦前、自動電話といっていたよう。)


こんな感じのもの。
描かれている絵がまた、今いうヘタウマのような
へろっとしたもので、味がある。


東京では神社仏閣の縁日、お祭りの時などには


参道などに飾るものであった。


伝法院通りからさらに真っ直ぐ、右に、かの、くじらや([捕鯨船])。


右に曲がると[水口食堂]、左に折れて、右側。
[ヨシカミ]到着。


ドアを開けて入る。


なかなか盛況。


いらっしゃいませ、と声がかかり、
一人、と指を出すと、カウンターの真中へ、と。


カウンターもほぼ一杯だが、ガスの調理場の前が
あいていた。


調理風景が正面から見られてよいかもしれぬ。
やはり、プロのフライパンの振り方には一見の価値がある。


カウンターの中、左手のお兄さん、彼も調理をするが
スッと、おしぼりとメニューを前に置く。
この動作、流れるよう。


メニューは実際には私は見ないのだが、こちらも一連の動作として、
メニューを開き、瓶ビールと、チキンライス、コンビネーションサラダを
頼む。


私のチキンライス好きは今さら説明はしなくともよいだろうが、
もう一品は、毎回多少は替えている。
だが、それでも、このコンビネーションサラダとの組み合わせが
最も多いだろう。


お兄さん、引き続いた一連の動作で、グラスに入った水を
出そうとしていたが、ビールの注文を聞いて、引っ込める。


ビールがきた。



ここのつまみは粒の揚げ餅。
今時、どこに売っているのか、と思うような、クラッシックな
つまみであろう。


ビールのグラスにはこの店のコックのイラストと
「うますぎて申し訳ないス!!」。


厨房向かって左では、私にメニューとおしぼりを出した
お兄さんが私のコンビネーションサラダを作り始める。


この場所が人がわかっても、サラダとカツサンドなどの
サンドイッチを作る場所。


揚げ餅をつまみながら、ビールを呑む。


目の前のガス台では、私のものと思われる、
チキンライス(チキラーとここでは略されている。)の
調理が始まっている模様。


コンビネーションサラダは、すぐにきた。



なんということのない、缶詰のホワイトアスパラがのった
レタスベースのサラダ、で、ある。
では、これのどこが好きなのかといえば、上にマヨネーズが
かかっているのだが、下の切ったレタスは、あらかじめ
マヨネーズで和えられている、のである。


普通のレストランでサラダとして出てくると、マヨネーズや
ドレッシングは普通、上からかけただけである。
(これは欧米流なのであろう。)
しかし、これでは、食べる前に自分で和えてから食べねばならない。
皆さんもそうされているであろう。
小さな皿だったり、ぴったりのサイズに盛り付けられていると
自分で和える間にこぼしたりしかねない。
この、あらかじめ和えてあるというのは意外に気が利いている
と思うのである。


そしてこのマヨネーズ。
自家製なのか、わからぬが、酸味が控えめ。
日本人の男性というのは、舌の酸味を感じる部分が多く、
酸味に弱いという。私も酸味はそうそう得意ではない。
これも、好きな理由。


目の前のガス台、チキンライスも終盤。
ケチャップを入れ、最後のあおり。
フライパンを火から外し、手首のスナップをきかせながら
どうであろうか、目の高さあたりまで、舞い上げている
のである。
毎度感心する。


出来た。



これは、なにがよいのかというと、やはり味が濃いこと。
下町の味?、浅草の味?、[ヨシカミ]の味、で、あろう。


うまい、うまい。


ご馳走様でした。





ヨシカミ