浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



歌舞伎座・秀山祭九月大歌舞伎 その1

dancyotei2017-09-19

9月18日(月)敬老の日


祝日、で、ある。


急に思い立って、歌舞伎座へ芝居を観に行くことにした。


今月、9月は毎年恒例の秀山祭。


秀山祭というのは、初代中村吉右衛門を記念したもの。
ということで、当代吉右衛門が座長で
中村吉右衛門家、播磨屋に縁のある芝居が上演される、
ということでよいのか。


昼が「彦山権現誓助剱(ひこさんごんげんちかいのすけだち)」
「極付 幡随長兵衛(きわめつき ばんずいちょうべえ)」など。


夜が「ひらかな盛衰記(ひらがなせいすいき)逆櫓」と
「再桜遇清水(さいかいざくらみそめのきよみず)」。


夜の「再桜遇清水」は清玄・桜姫とも呼ばれ、
名前だけは聞いたことがあるが、むろん初見。
ちょっと興味を惹かれた。


なぜかというと、志ん生師が落語の枕でよく、
この清玄・桜姫のことを喋っていた。
廓噺などで、であるが、男というものは、必ず女性に迷う、
高名な清水寺の坊さんの清玄も、、、というような
ものである。


志ん生師の年代なので、明治から大正、まあ戦前あたりまでは
清玄・清姫の話は誰しもが知っている常識であったのであろう。
やはり、これは観ておきたいということである。


16時開場なので、例によって着物を着て、
15時前に内儀(かみ)さんとともに出る。


九州から列島を縦断した台風一過、予報通り真夏の暑さ。


着物はむろん夏物。
ごく薄い緑の縮の一重に、黒の絽の羽織。
帯は紺献上、白足袋に雪駄


着ただけで、汗が噴き出してくる。


稲荷町の駅にたどり着くだけで、大汗、で、ある。


夏の場合、襦袢はもちろん単衣(ひとえ)なのだが、
これが化繊のもの。
人に聞けば、これが暑さの原因という。
汗を吸わないので、皮膚に貼り付く。


いい加減、もう少しよいのを考えようか。
銀座に着いて、少しでも涼しいところをと、地下を通って
東銀座まで。


地上に上がる。


いつもは三越の地下で買うこともあるが、今日の弁当は
木挽町[辧松]にしようと決めてきた。
元来、歌舞伎座にはこの店が入っていたと思うのだが、
今は、晴海通りを挟んで向こう側にある。


赤飯の二段重にする。


歌舞伎座には東京[吉兆〕が入っているが、
あまり、食指はそそられない。


弁当を買って、歌舞伎座



4時開場で、入る。


今日は、直前にしては運よくよい席。
花道上手側の2席目。
前から9列目。


花道は間近だし、本舞台も十分に役者の顔が見える。


演目と配役を写しておく。


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夜の部



一、ひらかな盛衰記(ひらがなせいすいき)



逆櫓



船頭松右衛門実は樋口次郎兼光  吉右衛門



漁師権四郎 歌 六



お筆 雀右衛門



船頭明神丸富蔵 又五郎



同 灘吉九郎作 錦之助



同 日吉丸又六 松 江



松右衛門女房およし 東 蔵



畠山重忠 左團次





「遇曽我中村」より


松 貫四 作


中村吉右衛門 監修



戸部和久 補綴



二、再桜遇清水(さいかいざくらみそめのきよみず)



桜にまよふ破戒清玄



新清水花見の場


雪の下桂庵宿の場


六浦庵室の場



清水法師清玄/奴浪平 染五郎



桜姫 雀右衛門



奴磯平 歌 昇



奴灘平 種之助



妙寿 米 吉



妙喜 児太郎



大藤内成景 吉之丞



石塚団兵衛 橘三郎



按摩多門 宗之助



荏柄平太胤長 桂 三



千葉之助清玄 錦之助



山路 東 蔵 ※



中村魁春 休演につき、代役



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これはいつもそうなのだが、歌舞伎座オフィシャルページを写している。
「ひらかな盛衰記 逆櫓」と「再桜遇清水」のそれぞれ、
外題(タイトル)の頭に一、二と振られているのがお分かりであろう。


今はそういう上演のされ方はしないのだが、江戸期末あたりの
ことであろうか、一番目、二番目といって、二種類の芝居を
順番に演った。
この場合種類が決まっており、一番目が時代物。二番目は世話物。


時代物とは江戸時代からみて、時代劇なので、それ以前のお話。
これに対して、世話物は江戸を舞台にした、江戸リアルタイムの
現代劇ドラマ。(まあ、原則なので、例外は沢山あろう。)


落語「酢豆腐」で昨日の夜、吉原へ行ったという若旦那に
「ゆうべは乙な二番目があったんでしょう!?」といった冷やかしの
言葉をぶつける件(くだり)がある。
世話物はみな色っぽい話ということはないが、一番目、二番目は
日常こんな使われ方をしていたのである。


ともあれ。


一応、この夜の部は、この一番目、二番目にあてているようである。





つづく