浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



市谷左内坂・ラーメン・麺や庄の

3月8日(水)昼


水曜日、副鼻腔炎の痛みについに耐えかねて
通っている市谷左内坂下の耳鼻科へ。


昼前に五反田を出てきた。


診察を終えて、ちょうど12時少し前。


昼、ここにいたら、やっぱり
寄っていきたい。


[麺や庄の]。


今はアメリカ含めて、なん軒も店を広げ
店主である庄野氏は、有名人といってよい
のであろう。


私が初めてこの店にきたのは2006年。
もう10年前。
できたのもこの頃であったのでろう。


今の坂下、お濠に向かって左側ではなく、
もう少し坂をあがった途中、反対側。
かの[パク森]のあったところに
居抜きで入っていた。


あの場所は出世コースであったのか。


今、庄野氏は38才というので、あの頃まだ20代であったのか。
見た目にも随分と若そうに見えた。


その頃から好きで通っている。


うまいラーメンやというのは東京でも
少なからずあるが、新しい味を作れるラーメンや
というのは、かなり少ない。
稀有な人。やはり天才なのではないか。
私が考えるには二人。
一人は湯島天神下の[大喜]のご主人。
もう人は、この人。
開店の頃からそう思っていた。


創作ラーメンというのを月替わり程度の頻度で
その頃から出しており、これが愉しみであった。


毎回新しい素材、アイデアを見つけ
新しいものを出してくる。
切れ目なくどんどん出してくるだけでもすごい。


私のポリシーとして新作というのはあまり評価はしない。
新しい素材、新しい味などそうそうあるものではない。
よくあるのは、どこかで流行ったものを
持ってくるというようなもの。
これはまあ、天才とは認められまい。
底が知れるというものである。


この人の場合、どこかにヒントはあるのであろうが、
そこに常人では思いつかぬようなひねりを加える。
そして、その完成度の高さ、である。
むろん、たまにははずれもある。
しかし、平均点はそうとうに高かろう。


これが天才であると考える所以(ゆえん)で、ある。


完成度の高い新しいラーメンをどんどんと
食べさせてもらえるというのは、うれしいし
愉しい。


私はこの市谷左内坂[麺や庄の]と
天神下[大喜]の二軒はそういう意味で
信用している数少ないラーメンやである。
ファンといってもよいかもしれぬ。


昼、幸いにして列ができてしまう前、店に入る


入ってすぐ左に券売機。


創作ラーメン990円也。


これ。


テーマは「鮟鱇」と書いてある。
鮟鱇のつけ麺のよう。
たのしみ。


案内され、カウンター奥のあいている席に。


創作は時間がかかるので気長に待たねばならない。


ややあって、きた。



ご飯も付いている。



麺の脇にから揚げ。
柚子。


スープには紫の菊の花びらが数枚。
白濁している。


ご飯の方には、鮟肝らしきものがのっている。


から揚げを食べてみる。
温かいが、おそらく揚げてあったものを
温め直しているのであろう。
ちょっと硬いところがあったり。
まあ、これは効率を考えたら致し方なかろう。


麺をスープにつけてすする。
鮟鱇の出汁がどんな味なのか、実際のところは
よくわからないのだが、おそらくそれを
使っているのであろう。
かなり塩味はしっかりとしており、旨みも深く、うまい。
こういうところが、完成度の高さ。
この人の安心できるところ。
奇を衒っているだけではない。


麺を食べ終わり、ご飯にかかる。


このスープをご飯にかけるのか、な。


鮟肝に見えたものは、なめてみると、いわゆる鮟肝の
味だけではない。
なにかわからぬが、別のことをしている。


あれ?。


ご飯をかき混ぜてみると、
味噌であろうか、なにか、赤茶っぽいものが出てきた。
これも、全部かき混ぜて、掻っ込む。


スープの味と鮟肝、この味噌のようなものを
合わせて味の設計をしているのであろう。


量があるわけではないので、
夢中になって食べているうちに、
終わってしまった。


「鮟鱇」というテーマでは鮟鱇の身を
使わないわけにはいかなかろうが、から揚げは
もう一つ。


ただ、スープとご飯はわけがわからないうちに
食べ終わらせてしまう。
流石といってよろしかろう。


ご馳走様でした。


うまかった。







麺や庄の

新宿区市谷田町1-3 1F
03-3267-2955