引き続き、
「諏訪の神: 封印された縄文の血祭り」戸矢 学
大きな樅(もみ)の丸太を切り出し、諏訪地方広範な
地域の何千人(?)もの氏子達が出て、山を曳き、里を曳き、
崖から落とし、川に突っ込み、、最後は、四つある神社の境内に
それぞれ四本ずつ建てる。
この柱の意味である。
一般には伊勢神宮などと同じようにお宮を建て替える代わりに
これをする、と説明しているがそうではない、と著者はいう。
ちょっと余談めくがこんなことがある。
よく私の住む浅草でもお神輿は神様なので、
二階から見下ろしてはいけない、などという。
諏訪でも同じこと、御柱を二階から見物してはいけない、
というのを聞いたことがある。
これなどは、最近のことなのではないか、と思うのである。
最近というのはいつなのかといえば、明治以降。
明治以降、天皇を頂点とする、国家神道なんという思想で
国を作ろうと考えられ、教育され、また、寺や仏はダメだ、
というので廃仏毀釈なんという運動が展開され、
数々の仏教系の文化財が壊されたことがあったわけである。
(国家神道というのは古来からの日本の神をある種、
キリスト教のような一神教的な宗教の神に
当てはめたのではなかろうか。)
そもそも、御柱にしても、浅草の神輿にしても、
見下ろしてはいけない、乗ってはいけない、
なんというきまりはなかったのではないか。
日本人の神意識はそんなものではなかった、思うのである。
皆、明治以降の国家神道の影響である。
(これは私の考え。)
そんな神聖なものに土足で乗らないであろう。
明治以降とそれ以前とは大幅に異なっている。
本当の姿は皮をむいてみなければわからない
のである。
ともあれ。
御柱は、そもそもお宮の造営のための丸太ではない、と。
では、なにか。
ある種の依り代(よりしろ)?。
新しい建物を建てる時に、今でも地鎮祭
というのをする。
皆さんも見かけたことがあると思う。
四本の竹を四角く立てて、注連縄(しめなわ)を張る。
正確にはこの注連縄を張った中に神が下りる。
御柱は曳かれて、最後は諏訪大社の境内、お宮の
外側四隅に四角く建てられる。
これはこの結界を作るなためのものか?。
戸矢氏は実に、この四本の柱は、
もともとは結界を作るためのものではなく
奉げものをする「御頭祭」との関連で、四本ではなく、
一本。そして、人“柱”ではなかったのか、と考えている。
ご存知のように死者や神を数える場合、一柱、二柱と
柱という言葉を使う。
柱を四本建てるようになったのは“人柱”をやめた時では
ないかというのである。
この時に、先の結界の意味が生まれたと考えている。
それは祟りを封印するという意図。
本来は文字通り人柱の一本であったのを代用の
御柱四本に替えることで“贄(にえ=奉げもの)”から
結界を作り祟りをなす神を封印する形になっていった
のではないか、と。
祟りをなすのは、当然、建御名方命=物部守屋で、
大祝の生贄をやめた(やめさせられた)のが、奈良時代から
平安時代前。そして、物部守屋の祟りを封印するために、
御柱が四本になった。
Nスペで、柱の意味として、縄文時代の能登であったか
やはり太い柱をなん本も建てて儀礼に使ったとみられる遺跡を
紹介していた。
これは四本以上で四角でもなかったと思う。
意味については、言及はしていなかったか。
四本というのに意味があるのか。
戸矢氏によれば、四本の太い丸太を打ち込んだ
古墳の例があるという。
これはやはり、その被葬者の祟りを封じるためであると。
一本の人柱が、四本の祟り封じの結界に変った
という説には、若干検討の余地があるのかもしれぬ。
例えばもともとは、五本だったというのはいかがであろうか。
四本の結界と、真ん中に人柱の一本。
(仮に四本に意味があるとして。)
(物部守屋以前の諏訪の神も、封じる必要があった、と、戸矢氏は
この後書かれている。)
ともあれ。
御柱はお宮の建て替えなんぞではなく、
そもそもは、人柱の儀礼に使う、大きな丸太であった。
(本数はともかくとして。)
そういう仮説である。
私にはやはり、説得力がある。
伊勢神宮と柱の扱いが違いすぎる。
さて。
もう一つ、触れておかねばならぬのが、
建御名方命=物部守屋以前の諏訪の古い神のことである。
おそらくこれが縄文からの神である。
これはミシャグジという。
一応、これは定説といってよいようである。
このミシャグジ様は、先ほどから出てきている、
諏訪家とは別に神長官という神職の一つを代々続けてきた、
守谷家(物部守屋の子孫?)が今も守っている。
ではミシャクジというのはなにか。
実は、ミシャクジは漢字で書くことができる。
御石神。
ミは敬称、シャクジが石神。
(これは、万葉仮名のような当て字でもなく、
漢字だが漢音ではなく呉音で、ちゃんとした読みである。)
シャクジ(イ)。これ、同じ音ではないか。
つづく