浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



続とんかつ放浪記・上野たぬき小路・とんかつ・とん八亭

dancyotei2016-02-22



2月20日(土)第一食

さて、土曜日。

午前中から家で仕事。

昼すぎ、片付けて食べに出る。

断腸亭のとんかつ放浪記、先日からの課題、上野たぬき小路の
とんかつや[とん八亭]を思い出した。

ちょうどよい、行ってみようか。

先日は定休の月曜に行ってしまったった。
営業時間を確認。
土曜日は、昼だけ。
3時までのようである。

今は2時。
急ごう。

朝は降っていなかったと思ったが、
比較的強めに降っている。

天気予報では荒れ模様といっていた。

自転車なので、フードのあるダッフルを着て、出る。
私などもあまりほめられた自転車運転手ではないが、
傘を差しての片手運転はやめよう。

春日通り、御徒町の駅をすぎて、たぬき小路の入口の歩道に
自転車をとめる。

こんな天気でも外国人の観光客はずいぶんと歩いている。

たぬき小路というのは、中央通りから御徒町駅寄り、一本めの
中央通りと並行した文字通り細い路地。

春日通り側の入り口は、片方が[文久堂]という“マムシや”で、
片方がラーメンや。

マムシや”というのは、なんであろうか。
以前は浅草にも上野にも、この手のゲテモノというのか、
精力系というのか、料理やがいくつもあったものであった。

この[文久堂]の脇のたぬき小路にはマムシが入っている、いた(?)
かごのような容器が、置かれているが、これがこの路地を暗く、
多少入りにくくしている。

[とん八亭]は少し奥の方、右側。

間口は一間ほど。
ほんの小さな店。

店の前に「ランチ、カツライス800円」などと書いてある。
これは安い。

暖簾を分けて入る。

中も、広くはない。

カウンターとテーブルが二つほど。

カウンターの向こうは調理場で、40代くらいであろうか、
物静かな感じのご主人と奥さんらしき女将さんの二人。

カウンターに30代とみえる男性二人組、テーブルに年配の男女二人。
天気のせいか、こんなところ。

カウンターの奥に座る。

瓶ビールをもらって、ランチのカツライスではなく、
ここはやっぱりノーマルなロースかつ定食、1,700円也を
頼むことにする。

ビールとお新香が先にくる。



お新香は気を使って作っている様子がわかる。

店の奥にはTVがあって、NHKが映っている。

ここはラードと聞いてきたが、あまりそれらしい匂いはしない。

ここは昭和22年創業という。
戦後すぐ。
まだこのあたりも、闇市が盛んであった頃といってよろしかろう。
現ご主人で三代目とのこと。

ややあって、きた。





揚げあがりの色は薄めであろう。

切り口はほんのりピンク。

ここも塩が置かれている。

最初は、なにも付けずに食べてみる。

柔らかい。
うまみもじゅうぶん。

やはりラードらしいにおいはしない。
新鮮なものなのかもしれぬ。

次の一切れは塩で。
残りはソースをかけて食べる。

脂身もうまい。

ただ、全体として、多少、油っぽく、
油切れがわるい方かもしれぬ。

揚げ色が薄いご近所の[ぽん多本家]などと同じ系統で、
低温で揚げているのであろう。
やはり、この方向であれば、油切れになりがちなのであろう。

まあ、それでも、油がよいというのもあろうが、
私には十分に許容範囲である。

また、衣。
例の金網をここも使っていない。

やっぱり、キャベツに触れている下側が、蒸れて一つはがれた。

それから、ご飯。
ちょっ柔らかめ。

まあ、例のとんかつ会議風に、細かく評価してみると、
こんな感じ。

この値段でこのクオリティーは十分に御の字であろう。
とても上質で心のこもったとんかつを食べたという印象。
少なくとも、私には。

ご馳走様でした。

おいしかったです。

再び雨の上野の街に出る。

ミシュラン掲載店と思って、構えてきてしまったが、
[井泉][ぽん多本家]のような老舗然、名店然とはしていない。
気取らない、肩の張らない上野裏路地の佳店。
そんな店であろう。
今日は雨で少な目であったが、普段は列でもできるのであろうか。
ふらっと寄りたい店なのだが。


03-3831-4209
台東区上野4-3-4