浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



鶏肉パリパリ焼き〜笠原流〜

dancyotei2016-01-18



1月16日(土)第一食

さて。

引き続き、笠原将弘氏のレシピ、で、ある。

その後、もう少しこの人のことのレシピを知ってみたいと
kindleで読める簡単そうなレシピ集「笠原将弘の 30分で和定食」を
買ってみた。

目にとまったのが「鶏のパリパリ焼き」。

鶏もも肉をフライパンで焼く簡単なものだが
これに「ねぎ塩おろし添え」というのが付く。

鶏もも肉はいつもハナマサで大袋のものを買っておいて
冷凍庫に凍らせてあるのだが、これが切れており、
昨夜、帰りに2kg入りを一袋買っておいた。

大根、ねぎはある。

大根はおろして、ねぎはみじん切りにしておく。

もも肉は両面に塩をしておく。
(塩は、笠原氏はいわゆる精製塩ではなく、
ミネラルの入っている粗塩を使いたいと書いている。)



さて、鶏もも肉をフライパンで焼く、というのは、
以前凝っていたことがあった。

以外にこれ、簡単ではない。

笠原流では細かく触れていないのだが、
私が、会得した、というほどでもないが、
ノウハウを書いてみたい。

まず、もも肉というのは意外に厚みのある部分があって、
こういう部分は火が通りにくいのである。
なにも考えずに、ただ焼いただけでは厚い中心は
生ということになってしまう。

そこで私も試行錯誤をしたのである。
ふたをして蒸し焼きにしてみたり、
弱火で時間をかけたり。

どちらも火は通るのだが、蒸し焼きにすると、
パリパリの皮、というのができなくなる。
弱火で時間をかけると、水分が抜けて縮んだ
堅いものになってしまう。

で、この二つは、ダメ。

そこで、まず、厚みのある部分をあらかじめ
広げておく、ということ。
ちょっと文章で説明しずらいが厚い部分の真横から
横に包丁を入れて外側に開く。
おわかりになろうか。
だがこれ、端の方ならば外に広がってよいのだが、
真ん中に近いところであれば、使えない手ではある。
(上の写真では左端が広げてある部分である。)

もう一つ。
これは笠原氏ではないが、別のプロのノウハウで
お皿に重石をしてフライパンに押し付けて焼く。

特に厚い部分をフライパンの表面に押し付けながら焼く。
こうすると火が通る。

笠原氏はどう書いているかというと、
フライ返しなどで押し付けると書いている。

皿をのせて重石をすると、ついていなくてもよいのだが、
フライ返しだと、ずっとついていなければならない。

今日は、同時進行ですることはないので、
フライ返し式でやってみた。

テフロンのフライパンに油を敷いて、熱くし、
皮側から焼く。
この時からフライ返しで押し付ける。
火加減は中火。

押し付けるのは全体であるが、厚い部分は特に
念入りに押す。



もも肉というのは必ずしも平らではなく、
フライパンに接していない部分がでてしまう。
これを解消するという意味が一つ。
それで、皮目全体を均等にパリパリに仕上げる。

また、焼けてくると特に厚い部分を押し付ける。
すると、生焼けの部分からであろう、水分が出てくるのだが、
厚い部分が他の部分と同程度の厚みになり、火が通る。
こういう理屈であろうか。

皮がパリパリになったのらひっくり返す。

なかなかいい感じのパリパリになっている。

ひっくり返したら中心まで火が通れば終了だが、
中火のままでもう片面にも軽く焦げ目が入るくらい。

いいだろう。焼き上がり。

皿にのせ、大根おろしに塩、ねぎのみじん切りを和える。



出来上がり。

どうであろうか、なかなかそれらしいではないか。

あ、包丁で切っておくのを忘れた。

ナイフで皿の上で切る。

レモン(ポッカレモン)を振る。

塩の入ったおろしにねぎみじん切り、これは
なかなかのものである。
私は初めてではなかろうか。

普通、おろし、というとしょうゆであるが塩、というのは
あまり聞いたことがない。
笠原氏のオリジナルなのか、やっている人はやっていることなのか。
特にねぎとの相性というのが抜群である。

ねぎ塩おろしは、他にどんなものによいのか。
脂のもの?、牛ステーキなどか。

ともあれ。

笠原氏というのは、かの吉兆(東京)で10年ほど修行をされており、
むろんのこと手の込んだ伝統的な割烹料理もお手の物なのであろう。
ただ、レシピ集はどちらかといえばこういう定番のおかずものが多い。
家庭の主婦だったり一般人対象なのでこういうこと、なのであろう。
そして、前回の鯖の味噌煮のように、定番のものを奇を衒うのではなく、
簡単だが新しい手法で違ったうまさを作り出している。

ただ定番のものをいかにうまく作るか、数多くの料理研究家は、意外に
笠原氏のような新たなアプローチはしない。定番のものは定番の作り方。
そうでなければ、別の味付けにしたり、新しいメニューにしてしまうことが
多いのではなかろうか。
定番のものに新たなアプローチをする方が実際はたいへんなこと
であることはいうまでもない。
こういう姿勢が私は笠原氏に好感を持つ理由なのである。


P.S.ねぎ塩おろしには、黒胡椒を加えるのが笠原氏レシピであった。
忘れてしまった。食べ終わってから気が付いた。

「笠原将弘の 30分で和定食」
笠原将弘の 30分で和定食 (旬の料理はこの人から。)