浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



神田和泉町・ラーメン・饗 くろ喜

1月12日(月)昼

時間があったので、近所であるがまだ行けていなかった
課題のラーメン店、神田和泉町の[饗 くろ喜]へ
行ってみることにした。

行列を考えてお昼の時刻ははさけて2時近く。

清洲橋通り沿い。
総武線のガードから少し北、北へ向かって左側。

店の前まできてみると、列はなし。

運がよいのか、ウイークデーのこのくらいの時刻は
こんなものか。

間口一間ほどでそう大きな店ではない。

開店は2011年でもう5年もたっている。

屋根に書かれているローマ字を読むと、MOTENASHI
KUROKIとあって、
店名の饗は、モテナシと読ませるようである。
(饗という字の訓読みは一義的にはアエと読むのが正しそうである。
アエは大和時代の古めかしい言葉で饗応料理のこと。
あるいは民俗語彙で神様へのもてなし料理のことになる。)

入るとすぐ左に券売機。

限定ものもあるようだが、ここの基本メニューは
味噌と塩のみでしょうゆはない。

雲呑もあるようでひかれたが、一先ず“全部のせ”らしい
特製で、券売機の上にあった塩にしてみる。

右側に奥に向かってカウンター。

入口に近い空席に座る。

食券を出すと、お兄さんが細麺と平打ち麺と選べますが、
と、聞く。

わからなので、おすすめは?と聞くと、ちょっと困ったようで
お客様のお好みなので、選んでください、という。

初めてきて、わからんよ、と、こちらも困っていると、
細麺の方がシコシコ(であったかツルツルであったか)、
平打ち麺は、モチモチ。

それもよくわからん。

ちょっとお兄さん、考えて、
細麺の方がしっかりした感じです。
じゃあ、そっちで。

私なども食いものについて書いているが反省すべきであろう。

食感などを表す擬態語を話し言葉にしても書き言葉にしても、
いろいろ使われている。いや、むしろ、氾濫しているといった方が
よいかもしれない。
グルメレポーターの使うものなど最たるものであろう。
耳には慣れている。
ただ、これ普通の人間が口語として使うことは実際のところは
滅多になかろう。

まあ、食べてみればある程度わかるのだが、実感が伴わなければ
ツルツル、モチモチ、シコシコ、シャキシャキ、
だけいわれても相手に通じないのである。

ともあれ、待つ。

カウンターの目の前は調理場。

奥にご主人と見られる五十格好の坊主頭の男性を頭(かしら)に
4人(5人であったか)ほど。席数の割に多いかもしれぬ。

きた。


毎度感心をするが、どこもきれいに盛り付けるものである。

煮玉子、白髪ねぎ、チャーシューが二種。
海苔に小松菜、雲呑。

スープは多少色がついているが、ほぼ透明。
脂の層があって、麺。

食べてみる。

麺はかなりの細麺でしっかりした歯応え。
なにか混ぜ込んでいるのか麺が黒くまだらになっている。

ちょっと中華の海老麺のよう。
ひょっとすると、近いものではなかろうか。
入っているのは海老ではないと思うのだが、なんであろうか。

食感は?
やっぱり、明確にこれだ、という言葉は見つからない。
海老麺と書いたが、海老麺を食べたことのある方ならば
あれに近いものと思ってもらえばよい。
(やはり、安易にツルツルだのシコシコだの、モチモチだの
擬態語を使うのはあまり関心はしなかろう。)

スープは鶏系が主であろうか。
他のものもむろん入っているのであろう。
すっきりしており、厚みもある。
ただ、あえてそうしているのかもしれぬが、
麺や具材の割にスープが少ないような印象である。

青みとしてのっている小松菜。
これがうまい。
ただゆでて置いてあったものをのせているのでは
なかろう。
ゆで置きのものは往々にして、水っぽくなる。
しかし、小松菜のしっかりした食感と味、香りがある。
どうやっているのかわからぬが、これを丁寧な仕事、と、
いうのであろう。

雲呑は海老が入っているか。
皮もなめらかな口当たりで、うまい。
(プリプリはやめてみた。)

温まった。

ご馳走様でした。

さて。

どうなのであろうか。

やはり噂通り、水準はラクラク超えている、
うまいラーメンであろう。

昨年あたりはご多分にもれず、噂が噂を呼んでか行列が増え、
カリスマ的な人気といってもよい状態だったかもしれぬ。
まあ、問題はそこまでの内容なのか、である。

これ一杯食べただけではむろんわからない。
創作メニューのようなもの、別看板の鴨のラーメン、
いろいろな取り組みもしているようである。
地理的になかなかきずらいのだが、またきてみなければいけなかろう。

だがまあ、毎度書いているが、こういう意欲的な店が出てきてくれるのは、
東京のラーメンシーンにとって、とても有意義なことだとは思う。

 

千代田区神田和泉町2-15
03-3863-7117