浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



浅草・トンテキ元気

dancyotei2015-05-26



5月24日(日)夜

さて。

肉、で、ある。

肉、が食べたくなるということは、ある。

肉、自身は、最近も流行りなのであろう。

肉会なるものも話題のようだし、熟成肉なんというのが
生まれてきたりもしている。

拙亭近所の、浅草・上野付近で肉、といえば、
[今半]他すき焼きは老舗がたくさんある。

また“紅花”(古いか)のような、鉄板系というのか、
目の前で、よい手際で焼いて切って食べさせてくれる、
[松波]のようなところもなん軒かある。

これらはこれらでわるくはないが、もう少しないかと調べてみると、
西浅草に[トンテキ元気]なるところを見つけた。

少し前にメディアにも取り上げられ、ちょっと話題であった。

鹿児島黒豚のトンテキとハンバーグが目玉。

ここは元[豚八]という浅草でも有名な24時間営業の
とんかつやであった。

とんかつやで24時間営業というのは、今となっては
かなり妙であるが、この店の創業は1960年頃という。

まだ24時間営業のファミレスなどがなかった頃。
ビートたけし師匠などもまだ若かりし頃。
(師がフランス座で働き始めたのは1974年)
浅草がまだもう少し、芸人の街として栄えていた頃、
と、いってよいのであろう。

これが数年前に今の店に変わっていた。

場所は合羽橋本通り。TXの浅草駅からだと西浅草側に出てすぐ。

合羽橋通りが国際通りに出る直前のところ。
[今半]の斜向かい。

どぜうの[飯田屋]はちょい先。蕎麦の[おざわ]も裏手にある。

観光客はあまりこないこのあたり、浅草でもちょっと濃いところ
かもしれない。

6時頃一応TELを入れ、営業を確認。
席も頼む。

雪駄を突っ掛けて、内儀(かみ)さんと徒歩で出る。

真っ直ぐ東へ行って、国際通りを北上。
15分ほどで到着。

入り、入口付近の席に座る。

こはちょっと不思議な店。

[トンテキ元気]という店名の他になぜか
[浅草ちゃんこ場]という名前もある。

実際には同じ店なのだが、トンテキやハンバーグなどの
鹿児島黒豚メニューの店と、元玉ノ井部屋の力士が作る
ちゃんこ鍋の店が合体しているというところか。

店内はファミレスのような雰囲気。

客層は、浅草の日曜日の夜のお客に、ちょっと遠方から
肉というので、きたと見えるお客が2割ほど加わったという
感じであろうか。

浅草の日曜の夜の客というのは、我々も含まれるであろうが、
サンダル履きに普段着姿の気取らない地元の人々。

ここは溶岩プレートで焼いた黒トンテキ、黒トンバーグ
というのが目玉になっている。

瓶ビールをもらって、
その黒トンテキ200gと黒トンバーグ200gのセットで1,800円というのを
二人で一つ。

なんだかガテンな感じ。

それから軟骨の煮込み。
豚味噌キャベツ。

軟骨からきた。



関節のようである。

まあ、煮込み。
ちょっと甘目のつゆ。

豚味噌キャベツ。



キャベツは湯通し、もしくは蒸し、かもしれぬ。
完全な生よりは、よいかもしれぬ。

肉味噌も少し甘めだが、なかなかいける。

基本、鹿児島の味付けであろうか、全般的に甘め。

ビールから、レモンサワーに替える。

トンテキとハンバーグのセットがきた。




トンテキはわさびじょうゆで、
ハンバーグは、テーブルにある専用のソースで、
という。

しょうゆは、ドロッとしたたまりじょうゆ。
これも鹿児島流であろうか。

プリプリとした歯応えがあり、うまみがたっぷり。
なるほどうまい。

ハンバーグの方。
ソースというのは、しょうゆベースでちょっと酸味のあるようなもの。
これもうまい。
ハンバーグは普通はビーフのみか、合挽きであるが、豚のみであろうか。

ハンバーグでみずみずしいという表現もいささか妙なのではあるが、
そんな感じである。

ジューシーなどという形容詞がハンバーグにはよく使われるが
あれは、脂が多ければ簡単にできるもの。
それとは異なり、ふんわりとしておりうまみが濃い。

なるほど、噂通りうまい名物である。

量もあり、うまかったが、これで\1,800。
決して安くはない。

浅草地元の民として老婆心ではあるが、ちょいと書いてみる。
ほぼメニューは看板のこの一品で、それ以外は居酒屋メニューである。
店の見え方もガッツリ系の居酒屋で満足度は高とはいえ、
\1,800は高く見えてしまっている。

ちゃんこ鍋もよいが、夏は食べない。

ガッツリ系ならばもっと安いやきとんやのような店でも
近くにうまいところはあまたある。

ランチのハンバーグ定食\1,200はよいとして、
夜はポジションは曖昧な感じが否めない。

あるいは。どうせなんでもアリなら、元のとんかつも出して、
豚ならお任せ、にしてはどうだろうか。
うまいものができれば、高くとも客は呼べるのではなかろうか。






トンテキ元気