10月22日(水)夜
今日は両国で仕事上の会食。
両国というのが最初に決まっており、
場所を探した。
探すといっても、私のこと知っているところからの
ピックアップになる。
1.そば[ほそ川]
随分前に行ったきりでご無沙汰だが、
最近はミシュランにも載っているという。
2.猪鍋[ももんじや]
まあ、好き嫌いというのは、すべての人に薦められるという
ものではないが、食べてみれば、思いのほか、十分にうまいのだが。
3.ふぐ[ひょうたん]
この日記には書いていなかったやもしれぬが、
複数回行ったことがある。
創業80年以上というから戦前、昭和初期の創業であるが、
洒落てはいないが、きれいで庶民的な下町のふぐや、
という感じであろうか。
この季節というのに、なんだか鍋が二軒も入ってしまった。
会食でそば、というのも、ミシュラン店とはいえ、
いま一つか。
結局[ひょうたん]に決まった。
もう鍋でもわるい季節ではないが、10月末、
暖かい日であったら、と心配はしていたが、
幸いというべきか、冷たい雨の夕方になった。
場所は京葉道路を東へ行って、清澄通りの交差点の少し先。
南側。
JRの両国駅からは少し離れている。
7時前、店に入る。
むろん予約をしてあり、3名。
入ると、お二階へどうぞ〜、とのこと。
そう大きな店ではない。
一階は入れ込み。
靴を脱いで、二階へ上がる。
奥の部屋。
座敷であるが、テーブル。
四人掛けが二つ。
まだ10月、そうそう混んではいない。
頼んだのは、刺身と鍋のコース。
煮凝りやら、から揚げやら、焼ふぐやら、他の料理が
入ったコースもあるが、ここのご主人のおすすめは、
シンプルに刺しと、鍋ということである。
ビールをもらい、乾杯。
刺身がきた。
ふぐさし。
久しぶり、で、ある。
いつ以来か、覚えていないほど。
まあ、東日本の人間には元来縁は少ないふぐ、で
私も、数えるほどしか食べていない。
白身の魚、で、あるが、同じ白身でも鯛、平目、真子鰈、
その他、いろいろあるが、人によっては最もうまいという。
こうして薄造りにするのが普通だが、しこしことかなり
しっかりした食感。
ぽん酢しょうゆの味ではないか、とも食べ慣れないと
思ってしまうのだが、むろんそんなことはない。
ふぐ自身の味もしっかりと感じられる。
なにがといって、なかなか言葉にしにくいのであるが、
やはり独特のウマミ、だと思う。
細く切ってある、皮もまた、コリコリとした食感が
たのしい。
食べ終わった頃、鍋がくる。
煮て、そろそろよいかな。
鍋の方は、骨のまわりなどのコラーゲン。
そして、やはり、滋味といってよいような、ウマミ。
食べ終わり、玉子のおじや。
これもまた、うまい。
季節に一度は食べたい、とまで思うほど食べ慣れてはいない。
しかし、やっぱり、ふぐ刺しに、ふぐ鍋、うまいもの、である。
ふぐというと、私などは落語「らくだ」を思い出す。
主人公の『らくだ』は、登場はするが既にふぐに当たって
冒頭から死んでいる。だが、死体のまま噺の下げまで出ずっぱり。
「らくだ」はおそらく上方(関西)が起源の噺で
それで、ふぐにあたって、ということなのであろう。
『ゆんべ、湯の帰(けえ)りこの野郎に逢ったら、ピカッと光るものを
ぶら下げていやがったから。
「手料理かい?」って聞いたら、
「あたぼうよ!こう安くっちゃ食わずにはおられねえ」
「よせよ、そんなものあぶねぇぜ」
「なぁに、ふぐなんぞこっちから当ててやる」って。
野郎も乱暴だが、ふぐにはかなわねえ』
以前はあぶないので、安かったのか、、。