浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



浅草・並木藪蕎麦

7月21日(月)海の日 夜



連休。



最後の日。



夜。



内儀(かみ)さんは外出。
なぜだか、浅草並木の[藪蕎麦]へ行きたくなった。


梅雨明けは明日になりそう。
今日は比較的すごしやすい一日であった。


あまりにも暑いと、蕎麦という感じでもない。
このくらいがちょうどよいかもしれぬ。


休日の並木[藪]は昼間は観光客で列になるが、
連休、それも最終日の夜には、浅草は人が引けるのが
早い。さほど混んでいないであろう。


6時すぎ、自転車で出る。


短パンに白いポロシャツ。
足元は素足に雪駄
まあ、いつもの恰好である。


夏の夕方の空気というのは、この浅草界隈、独特のにおいがある。
なにかといえば、潮の香りである。


いや、これはなにも浅草に限定したものではない。
海辺ではみなそうであろう。


夕方、海辺では陸風から海風に変わり
海から風が吹き込み潮の香りがする、ということ。


浅草が海辺かといえば、ご存知のように
隅田川が流れているので
ここから海風が入り込んでいるのであろう。


以前に荒川沿いの葛飾、四つ木に住んでいたが、
やはり同じような香りが夏の夕方になるとしていた。


妙に汐の香りが強く、ちょっと、湿気が多いような
モワッとした空気。


海辺で生まれ育たれたり、住んでおられる方は
ご賛同いただけるのではあるまいか。


なぜ、冬は感じることはなく、夏だけなのか、
これはわからぬ。


ただ、この香り、不思議と安心感というのか、
なにか心を落ち着かせてくれる効果があるのである。
私自身は海辺で育ったわけではないので、
原風景の記憶というようなものではないのだと
思われる。
しかし、私自身、山よりも海の方が性に合っており、
遊びに行くのであれば、ダンゼン海。
ダイビングをするのもそうである。
前世が漁師だったのか、わからぬが、なんとなく
海を好むDNAがあるような気がしているのである。


ともあれ。


この潮の香りの中、自転車をこいで、並木へ向かう。
まだ、街は明るい。


雷門も人通りは少なくない。


[藪蕎麦]の前に到着。


自転車を歩道の街路樹の脇に止め、店に。


硝子格子は閉まっており、暖簾の向こうをちょいと
のぞいて、中を確認。


テーブル席はほとんど埋まっているようだが、
小上がりの座敷には空いているところもありそう。


開けて入る。


いらっしゃいましぃ〜。


一人というと、空いている小上がり一番奥のお膳へ
案内される。


雪駄を脱いで、あがり、胡座をかいて座る。


やはり、ビールかな。
酒は呑みすぎる。


肴は、なにがよいか。


あまり蕎麦やで私自身は頼んだことはないが、
天ぷらをもらおうか。


天だね、というところもあるが、ここは天ぷら、
で、ある。
天だね、という場合は、もともとは天ぷらそば
の種、という意味であったのであろう。


それから、板わさも。


板わさ。




天ぷら。



ほう、おもしろい。



さいまき海老である。



ここの天ぷらそばは芝海老のかき揚げなので
このためのもの、なのであろう。


さいまき海老とは、鮨や、などでもいうが、
小さな車海老のことで、江戸前でよく使う
ものといってよかろう。


これを三匹、筏(いかだ)に並べ、くっついたまま
揚げている。


確か神田の[まつや]にもこれがあったはずである。


そばは、ノーマルなざる。





箸の先にわさびを付けて一口分そばをつまみ、
持ち上げ、先をほんの2〜3cm日本一濃いつゆに
つけて、手繰り込む。


どんどん、手繰る。


うまかった。


そば湯も飲んで、お勘定。


ありがとうございますぅ〜。


ご馳走様でした〜。







03-3841-1340
台東区雷門2丁目11−9