浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



両国・山くじらすき焼き・ももんじや その2

dancyotei2013-12-19


12月15日(日)夜


引き続き、両国の猪鍋[ももんじや]。



昨日は座ったところまで。



ここは鹿肉刺身などがついたコースもあって
食べたこともあるが、基本の「猪鍋定食」というもので
十分である。4,725円也。


お通し。





これは猪のすね肉、と、いう。
煮込み、で、ある。


まずは、ビール。


呑んでいるうちに、鉄鍋が運ばれる。


鉄鍋には、赤味噌ベースの割り下が張られている。


待つほどのこともなく、大きな皿に、猪肉と野菜、豆腐、
白滝などをのせて、お姐さんが運んできてくれる。


猪肉というのを見たことがある方はどのくらいおられようか。
猪鍋を、別名、ぼたん鍋というのは、この色から、で、ある。


豚肉は薄いピンクであるが、
猪肉というのは実に鮮やかなぼたんの花の色。
つまり真っ赤、である。
鍋にするのは、ばら肉で、この鮮やかな赤に白い脂身が入り、
このコントラストが美しい。


お姐さんは手際よく二人前の肉、野菜を鍋に入れていく。





野菜はねぎと芹。


猪鍋が他の鍋と最も違う点がある。


鍋料理は、肉でも魚でもほとんどのものが煮すぎないのが
鉄則であろう。すき焼きでも、よい牛肉であれば、なおさらだし
ふぐなどは骨付きの部分などは、コラーゲンが柔らかくなるまで
煮た方が出汁も出るしうまいと思われるが、他の魚でも身の部分は
煮えればどんどん食べる。


火が通れば通るほど、硬くなるものがほとんどであろう。


しか〜〜し!。


猪肉はそうではない。


煮れば煮るほど、柔らかくなる、という不思議な肉、
なのである。


豚でも牛でも、肉は火が通ると一度硬くなり、
さらに長時間煮込むと柔かくなってくるわけだが、
もしかすると猪肉は、これが早い、のかもしれない。


お姐さんは15分煮込んでください、といって出て行った。


この店に初めてきたのは、なん年か前の亥(いのしし)年の正月であった。


この店にきたら同じようなことを考える人でごった返しており、
予約はしてきたのだが、そんなことはお構いなく、
やたらと待たされた。
まあ、12年に一度の書き入れ年であったのであろう。


小一時間待ってやっと鍋がきて、待ちかねていたので
煮えたそばから食べ始めた。そして食べ終わる頃に、
この15分煮込んでください、を聞かされた、のであった。(遅かりしぃ。)


そんなわけで、ビールから燗酒に替えて、豆腐やらをつまみながら
ゆっくり待つ。


段々にいい感じになってくる。




15分経った。いいだろう。


食べよう。



むろん、色が変わっただけでも食べられるのであるが、
15分煮ると、見た目はしっかりしている感じだが
肉の部分は驚くほど柔らかくなる。


これに対して、脂身は割にしっかりしている。
豚などでは煮ると脂身も柔らかく、溶けてくる感じであるが
そうはならない。


味付けは、と、いうと、そうとうに甘い。
鯨(または牛)の大和煮というのを、
ある程度の年齢以上の方であればご存知かと思うが、ほぼあれ。


あれはこの店の味を真似たのではないかと、
思うほどである。


まあ、上品な味というのではないが、うまいものである。


また、見た目脂身が多いように思うのだが、
溶け出ていないのか、ほとんどベトベトした感じがなく、
それこそ、いくらでも入る。


とまらない。


煮えるまでの時間、待っていたせいもあり、
バクバクと食べ、二人でペロッと完食。


途中、ご飯となめこ汁もでてきて、これも完食。


鍋に残った味噌のつゆをご飯にかけて食べたいくらい。


腹一杯。


ご馳走様でした。


階下の帳場で勘定。



両国で猪鍋、たまにはよいものである。



タクシーで帰宅。







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