浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



かつ丼

dancyotei2013-07-09

7月7日(日)第二食

さて。

午後。

今度はかつ丼、で、ある。

かつ丼というのは、毎度書いているが、
時として無性に食べたくなる食い物の一つである。

なぜであろうか。
わからぬが、思い出したように、作っている。

しかし、かつ丼というのは、その生い立ちを
考えてみると、不思議な食い物である。

以前に、丼物の歴史を明治、大正、昭和の読売新聞記事から
調べたことがあった。
(これ、いま読み返しても、われながらなかなかおもしろい。)

明治初めにはまず、うな丼。
その後に天丼、そして、大正に入り、親子丼。
そして同時期に、丼ではないが、豚のカツレツ(とんかつ)が
登場。

そして、最後、昭和7年にかつ丼が登場している。

新聞記事になっているくらいであるから、
一般化しているのは、もう少し前のことではあろうが。

ただ、順番が親子丼ができてから、かつ丼ができているということ。
これは重要なことであろう。

玉ねぎなどの野菜と鶏を甘辛く煮て、玉子でとじたものを
飯にのっけたものが親子丼。

この鶏をとんかつにかえたものかつ丼である。
かつ丼の発祥は一説には、早稲田の方のそばやであるともいう。
今も東京の蕎麦やには、必ずかつ丼がある。
(多くは、親子丼も同時にあるが。)

新聞記事を調べた時にも疑問だと書いたが、
なぜ、親子やかつ丼が、蕎麦やなのか。
これがまずは疑問である。

親子丼の発祥は、東京下町各所にあった、軍鶏鍋やでは
なかったか、と考えている。

もともと、鶏を甘辛く煮た軍鶏鍋を出しており、それを
玉子でとじ、丼飯の上にのせるのであれば、彼らが
最も近い。
事実、人形町の老舗玉ひででは、一般化する以前、
明治20〜30年にはできているといっている。

軍鶏鍋やは蕎麦やほどは多くはない。
どこかで、親子丼は軍鶏鍋やから独立し、街に多くある、
蕎麦やなどでも出されるようになった?。

果たして、ほんとうに蕎麦やだけ、なのか。
同時に(一膳)飯や、その後の大衆食堂のような
ところでも出されるようになった可能性はないのか?。

よくよく考えると、私の子供の頃などはまだ
いわゆる大衆食堂、定食やというようなものは街にたくさんあって、
親子も、かつ丼も(とんかつのような、洋食も)必ず置いていた。
現代においては、こういった大衆食堂が滅びつつあり、
かつ丼は、蕎麦やの専売特許に見えるようになっているだけなのでは、
という仮説である。

ただ、唯一いえる確かなことは、ものがとんかつだが、
かつ丼の発祥は、洋食やや、その後のとんかつやではない、であろう
ということ。
現代においても、どちらにもかつ丼は、普通は置いていない。

ともあれ。
親子の独立、一般化、そして、かつ丼の発祥はどんなふうであったか。

これらは、明治から大正にかけての、東京庶民の食事情を
細かく見てみないと、なかなか真相は見えてこないかもしれない。
(この頃、大衆食堂のようなものはたくさんあったのか、など。
新聞記事ではこれ以上細かくは調べられないので、どうやって
調べるのかもまた、課題だが。)

かつ丼を作る。

冷飯は冷蔵庫にある。

まずは、とんかつを揚げる。

ロース肉のそり返り防止に脂身の縁と筋に包丁で切れ目を入れる。
そして、片面に塩胡椒。

次に大き目の容器に玉子冷水を作る。
パン粉は付けやすいように、さらに大きな容器に広げておく。

肉には両面小麦粉をくまなく、まぶしておく。

玉子冷水に小麦粉を篩いながら、混ぜ入れる。
比較的堅め。

ロース肉に竹串を刺し、衣、パン粉の順につける。

油は先ほど排骨を揚げるのに使ったのですぐに
熱くなる。

二枚揚げる。



ちょっと、温度が高すぎた。
あっという間に、色がついてしまった。

中が半生の可能性はあるが、煮るので問題はなかろう。

包丁で切る。(案の定、ちょっと中は半生。)

ま、OK。

玉ねぎを半分ほど切って用意。

丼鍋に玉ねぎを入れ、桃屋のつゆ、水を少量入れ、
薄める。

点火し、玉ねぎがしんなりしたらかつを投入。
以前の反省を生かし、ロース肉は大きいので一切れほど残す。

わりほぐした玉子二個分を一気に入れ、ふたをする。



これでも多かったか。
つゆも多めで、ふたの脇から噴きこぼれてくる。



まあそれでも、段々に固まってきた。

8割ほど固まった。
丼に盛った飯に、丼鍋から移す。

毎度ながら、これは鬼門。

それにしても量が多いので、土台、無理か。

よ、っと。
あ〜あ、やぱり。



無理やり、のっけた感じ。

あ。

丼も、かつ丼用の蕎麦やで使っている丼もあったのであった。
あれにするのであった。。
(まあ、結果は同じであろうが。)

きれいにのせるには、とにかく、かつはもっと減らさなければならなかろうが、
自分で食べるのに、見栄えにこだわる理由はどれだけあるのか、
ということもある。
かつが山盛りで、よいではないか、ともいえる。


味はむろんかつ丼、うまい。