6月25日(火)夜
さて。
今日は、蔵前の[幸鮓]という鮨や。
随分前に数回、内儀(かみ)さんと行ったことがあったのだが、
その親方が、この日記を読んでいて下さって、
来てみてください、というメールをいただいた。
8時すぎ、オフィスを出る際に、TELを入れてみる。
20〜30分後に、一人。
出られたのは、お内儀さんのようで、
本名で名乗ったので、わからなかったかもしれぬ。
[幸鮓]は蔵前通り(江戸通り)沿いにある。
大江戸線から上がると、春日通り。
厩橋の交差点を右に曲がって蔵前通りをしばらく行って、
ローソンの先。
しばらくぶりに加え、読んでいただいているところへ
行くのは少し、気恥ずかしい。
店の表には「小肌、穴子のうまい店」という布が掛けられている。
格子を開けて、親方に挨拶をする。
随分前にきた客であるのは、思い出されたようだが、
それが、断腸亭なる者と一致はされていなかった
ようである。
10年近く前になると思うが、それでも顔を憶えておられるのは、
流石の客商売である。
カウンターに座って、上着を脱いで、扇子でパタパタ。
瓶ビールをもらう。
ハートランド。
先代から観音裏で鮨やを営まれていたのだが
ご自身は人形町の老舗、喜寿司で修行をされて、
今はこの地で商売をされている。
まず、出てきたのは、生しらす。
(今日は、撮影の許可をいただいている。)
とりあえずは、そのままで食べてみてください、
とのこと。
生のものはとにかく、鮮度。
へんなところで食べると、なまぐさくてとてもだめなことがあるが、
むろん、そんなことはない。
なるほど、そのままでも、ちょっとほろ苦い味を
ストレートに感じられて、うまい。
もう一品、酒の肴。
汲み上げ湯葉。
前から気になっていたのだが、この店の屋号[幸鮓]の『鮓』の字。
これでスシと読む。古い用法ではあろう。
江戸の頃はこの字がもっぱら使われていたと思われる。
名古屋などでは今も使われているが、今、東京では、鮨、あるいは、
寿司、寿し、あたりが一般的であろう。
なぜ、鮓の字を使うのか。親方に聞いてみた。
なんでも[幸鮓]のもとは京橋の橋の袂にあった店で、
先代の店もその関係。その京橋の店は、幸『鮓』と
書いていたので『鮓』の字を使うようになったとのこと。
証拠に、と、その京橋の[幸鮓]の湯呑みを見せてくれた。
なかなか、味がある湯呑みである。
さて、このあたりで、おまかせで、
にぎりにしてもらう。
まずは、鯛。
にぎりは小さ目。
酢飯と種のバランスはよい具合である。
これは、親方のやはりポリシーなのであろう。
鯛は、しっかりとした食感で、あまみがある。
次に、これなんだかわかります?といって、小鉢が出た。
ちょっと黒っぽい粒。
食べると、磯のような香り。
ほや、のなにかですか?
あ〜。
赤貝の肝です、と。
赤貝の肝は、海藻を食べているので、その味だ、とのこと。
以前に自分で赤貝をさばいたこともあったが、
肝は捨てていた。
なるほど、食べられるのか、と、納得。
鮑でも肝は食べますよね、と。
この以前、某魚やで、鮑の肝だけ売っていた、うまい、と聞いたので
買ってみたら、とても生ぐさくて、あきらめたことがあった。
こういうものはやはり鮮度がよいことが、第一条件なのであろう。
次は、いか。
今は、あおりいか。塩で。
すみいかのないこの季節は、東京の鮨やはどこも基本、あおりいかを使う。
細かい包丁目が入れてある。
あまさと柔らかさは、秀逸。
ただやはり、東京の鮨っ喰いとしては、すみいかの子供、
新いかの出てくるのが待ち遠しい。
小柱。
小柱もむろんうまいが、海苔が実にうまい。
蝦蛄(しゃこ)。
こちらは子持ち。
久しぶりに、小柴のものが入ったので、といっていた。
江戸前の蝦蛄といえば、八景島あたりであったか、小柴のものが
有名であるが、近年はほとんど獲れなくなっていると、聞いている。
私の場合、そこまで蝦蛄へのこだわりはないが、
三河湾だったり、遠くから運んでくるものに比べれば
近い分、よほどものはよいのであろう。
子持ちもうまい。
まぐろ。
赤身だが、づけ、ではなさそう。
あまくてうまい。
今日はここまで。
また明日。
蔵前 幸鮓
台東区蔵前3-4-8
TEL/FAX 03-3863-1622
幸鮓ブログ