浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



根岸・洋食・香味屋

4月14日(日)夜



引き続き、日曜日。



夜は根岸の洋食や、[香味屋]


[香味屋]は、カミヤ、と読む。


東京の洋食やの中では、老舗であるし、有名だと
思うのだが、実際には、どのくらいの方が
この店を知っているのであろうか。


創業は大正14年で、東京の洋食やでは、
紛う方なき、老舗といってよかろう。


ただ、存在感があるような、ないような、ポジションが
なんとなくはっきりしないように思えるのは、
根岸、という立地のせいであろうか。


大体において、根岸といって、どのへんなのか、
お分かりになる方すら少ないのではなかろうか。


最寄駅は、鶯谷


ああ、ホテル街?。


なんて思われる方もおられようが、それは正解。


だが、それは今の根岸。


その昔、江戸の頃は、風雅な別荘地。


○○○○○ 根岸の里の 侘び住まい


なんといって、○○○○になにを入れても
俳句らしくなる、といった扱われ方もされる
根岸。


(例えば、



日が暮れて 根岸の里の 侘び住い



…まあ、普通か。



金魚鉢 根岸の里の 侘び住い



…ちょっと、雰囲気があるかな。



扇風機 根岸の里の 侘び住い



…意味が分からない、か。



洗面器 根岸の里の 侘び住い



…こっちの方がいいか。(皆さんもお試しを!)



閑話休題



剣客商売』では田沼意次の娘、佐々木三冬の住んでいた寮の
あったのが根岸。
(これは池波先生のむろん創作だが)


実際に、例えば、江戸琳派酒井抱一なんという大名画家
が住んでいたり、、、。


また、明治になるが、俳人正岡子規の子規庵も根岸。


落語でも圓生師匠は「根岸お行の松、因果塚の由来でございました」
といってしめくくった『お若伊之助』。
または『茶の湯』なんという噺は根岸が舞台。


今のホテル街からは想像すらできないが、
鶯谷という駅名は、本当に、鶯の声が聞こえる谷、という
意味だったのである。


そんな根岸がなぜ、ホテル街になったのかは、
以前にも書いているので↓このあたりをご参考に。


講座


さて。


[香味屋]であった。


ここはとにかく、デミグラスソースがうまい。


上野藪で蕎麦を食ったので、予約したのは、19時。


元浅草の拙亭からタクシーで向かう。


日曜日の夜もやっているのはありがたい。
これはやはり、下町の食いものやだから、で、あろう。


根岸の、ちょっとわかりずらいところだが、
柳通りという通り沿いにある。


頼んだのは、内儀(かみ)さんは、言っていた通り、
ポークソテー


私は、デミグラスソースを堪能したいので、ビーフシチュー。


さらに、内儀さんの希望でマカロニグラタン。


ビーフシチュー





マカロニグラタン





ポークソテー





内儀さんがポークソテーを食べたかったのは、


実は、近所、浅草寿のとんかつや、[すぎ田]
へ行こうと思っていたから。しかし[すぎ田]へ電話をすると、
臨時休業とのことで、今日は急遽、根岸の[香味屋]になった。


[すぎ田]のものはブランデーの香りをつけた、
バターしょうゆ味。


が、上の写真通り、この店ではお得意の、デミグラスソース。


内儀さんとしては、多少残念であったか?。


ともあれ。


ビーフシチューのデミグラスソースは絶品。


ご飯に合うデミグラスソース。



私の方は、大満足。




帰路は徒歩。


酔っぱらいの足で、30分ほど。






台東区根岸3-18-18
03-3873-2111