浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



細巻すし その1 +スタンドカレーサカエヤ

dancyotei2013-04-08


4月8日(土)



友人が「ラーメンやの海苔はなぜどこもまずいんだろう」
とつぶやいていた。


確かにそうだ。


それで、そうだうまい海苔を食べようと、思い付き、
今日は、細巻をまた作ってみようと考えた。


昨年、細巻の海苔巻を作ってみたのだが、


この時、海苔がまずい、と、しみじみ思った。


この海苔は近所のスーパーで特に選びもせず
あるものを買っただけ。


細巻というのは海苔の割合が相対的に多いので
よりそう感じたのではある。


ふり返ってみると、海苔というもの、日本人にとっては
とても身近な存在なのだが、私は子供の頃から、ほとんど意識をした
ことのない食べ物であった。
あってもなくてもよいような、不思議な存在というのであろうか?。


じゃあ、そもそも、海苔を食べる機会というのは、
今、普段どのくらいあるだろうか。


コンビニのおにぎり。毎日とはいわないが、そうとうな頻度で
食べている。それから、太巻きやら細巻やらの巻きずし。


もみ海苔として、炊き込みご飯だったり、
大根おろしにかけたり。
永谷園のお茶漬け海苔にも入っている。
せいろの蕎麦。もりそばにもみ海苔をかけると、
ざるそばになる。


また、先のラーメンやでラーメンにものせる。


拙亭では食べないが、朝飯にはご飯に味付け海苔、
というのも日本の食卓では定番であった。


あるいは、同じくそばや。
東京の特に藪など老舗の蕎麦やの酒の肴。
これも、私はあまりやらないが、焼海苔は定番で、
炭を下に入れる、焼海苔専用の塗りの器まである。


このように、海苔というものは、かなりの頻度で食べているのだが、
うまいまずいを意識したことはほとんどなかった。
香りはあるが、味はあるような、ないような、、。


もっといえば、私にはなぜ海苔というものがあるのか
理解できなかったといってもよかろう。


巻きずしやおにぎりのように、形を保つため
という機能はむろん海苔がなければ成り立たない。
しかし、食い物のとしては、ほぼ、添え物。
もみ海苔は、見栄えにも影響するので、あればよいが、
なかったらなくてもよい、そういう存在であった。


個人的には、やはり“不思議な食い物”である。


ともあれ。


では、うまい海苔(味がない、といっていながら、うまい海苔とは、
矛盾しているようだが、海苔の場合、香りがよい、ということであろうか。)
というのは、どこで買えるか。


東京で、海苔といえば、日本橋山本山?。
(山本屋でもよいのだが。)


山本山のものであれば、まずい、ということはよもやあるまい。


昼すぎ、床やのついでに、細巻の具も含めて、買い物に出る。


今日は暖かい。
運動を兼ねて、徒歩で出る。


仲御徒町のQBで髪を切って、広小路の松坂屋へまわる。
地下の食品売り場の山本山で贈答用ではなく、市販用では
一番高い、一袋、10枚入り1050円のものを買う。
それから「のりせんべい」(缶入り)も。これは、以前にどこかで
食べてうまかったので。


松坂屋から、吉池にまわる。


海苔巻の材料だが、干瓢。
それから鉄火巻用にマグロ、と、思ってきた。


吉池は久しぶりかもしれない。
魚の売場をみると、なかなか充実している。


目についたのは、生の白魚。
東北のもの。
刺身、と、書いてある。


白魚というのは、春先が旬であった。
(月もおぼろに 白魚の 篝も霞む 春の宵、、なんという黙阿弥の
名セリフは、その昔の、隅田川河口、大川端の風景であった。)
よいかもしれない。


むろん海苔巻ではなく、にぎりにできよう。


1パックでも随分と量があるが、650円と安くはない。


それから、マグロ。
これはちょっと筋っぽいが、脂の多い大トロといってよいものの、
切り落とし。筋っぽいので、安い。400円ほど。


それから、赤身も切り落とし。
300円台。
鉄火巻なら、切り落としで十分。


折角なので、生のわさび(青物の)も買おう。
それから、乾物売場で干瓢。


買って帰る。


帰り道は、春日通りを真っ直ぐ東へ。


昭和通りを越して、ちょっと行ったところ。
前にもなん回か書いているが、春日通り沿いに
スタンドカレーの店がある。名前は[サカエヤ]


いつもは、そんなことはないのだが、どうしてであろうか。
今日は、この店の前を通ると、無性にカレーが食べたくなった。


少し迷ったのだが、吸い込まれるように、入ってしまった。


1時半と、昼は少しすぎた時間。
カウンターだけの小さな店だが、お客は3人ほどいる。


スツールに座る。


ここは小母さんもいたような気もするが、基本は小父さん一人で
やっている。60は越えていようか、愛想がよく几帳面そうな人。
こういう一人、あるいは夫婦でやっている小さな
食べ物やのご主人というのは、皆どうも味がある。


座って、これまた、吸い寄せられるように、カツカレーを
頼んでしまった。
毎度書いているような気がするが、カツカレーは好物。
どうせなら好きなもの、で、ある。


そして、けんちん汁も?!。


そう、この店、なにが特徴かといえば、カレーやなのに、
けんちん汁がある、のである。
カレーとけんちん汁、まったく方向性が違うメニューではないか。
なぜけんちん汁があるのか、まったく、不思議である。


「カツが揚がる時間5分ほどかかりまぁす」と、小父さん。


カツカレー





けんちん汁



不思議に不思議を重ねるようだが、このけんちん汁、なにを隠そう、
うまい、のである。
入っているのは、小さめに切られた、里芋、蒟蒻、人参、蓮根など。


カレーに合うのか?といわれれば、まあ、合わなくもないが、
ピッタリの相性、とまでは言われないのが、おもしろい。





明日につづく。





サカエヤ