浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



海苔巻・細巻

dancyotei2012-12-17


12月15日(土)深夜



今週は、忘年会が続いた。
来週はもう一段落するであろう。


呑んで浮かれている、というよりは
なんとなく、それを理由に、日頃の鬱憤解消
といった気分で、それなりに精神衛生上は
役に立っている。


今日も一日調べもの。


夕方から鮨、が、ぼんやりと、食べたかったのだが、
調べものをしていたので、内儀(かみ)さんに言いそびれた。


夕飯を食って、遅い時間になり、また、思い出した。


鮨、と、いって、魚もないし、、
で、思い付いたのは、海苔巻。


干瓢はないが、乾燥椎茸を甘辛く煮ればよかろう。
出汁用のスライスがある。


米を研いで、浸水。
2時間。


11時頃から作り始める。


乾燥椎茸スライスを小鍋に入れて、
水を入れ、一度煮立てる。


火を止めて、もどすために、しばらく放置。


15分程度。


だいぶもどっている。
もういいか、煮込み。


酒、みりん、しょうゆ、砂糖。


弱火で煮詰める。





さらに火を止めてしばらく置くと、
椎茸に戻るのか、自然と煮汁がなくなる。





細巻というのは作ったことはない。
(いや、細巻はおろか巻き鮨自体、初めて、で、ある。)


ちょっと調べると、まずは、海苔。
太巻は、普通の海苔全型全部を使って巻く。
細巻はその半裁、1/2に切ったサイズ。
(海苔全型というのは、21cm×19cmだそうな。)


そうだ。


確か、柳橋の美家古鮨での話。
あそこで鉄火巻を頼むと普通の細巻よりも、
少し太い。
これは、お腹を一杯にするため、という。


美家古鮨は東京の鮨やの中でも、鮨発祥の頃に
創業しており、古い形を多く伝えている店。


江戸で鮨が生まれた当初、握り鮨の大きさは
今の二倍はあったのか。当時の浮世絵を見ると、
まるで握り飯のようなものであった。
巻物にもそんな名残が残っているのかもしれない。
(だが、鉄火巻だけが太い、というのも
不思議といえば、不思議、で、ある。)


柳橋美家古鮨では、細巻用に切ったの海苔を
90度回転させた縦長に置いて巻簾で巻く。
こうすると、太巻と細巻の中間程度の太さになる。
これが柳橋美家古鮨の鉄火巻


閑話休題


飯を炊く。


いつものように、ホーローの鍋で。


酢飯用に水加減は少な目。


強火にかけて、煮立てる。
吹いてきたら火を止め、一度しゃ文字で
下からかき混ぜる。


今度は、最少の弱火。


あとは水分がなくなるのを待つ。


鮨酢と、海苔の準備。


海苔!。


あ、切れていた。


飯が炊きあがるまで、一っ走り、買いに出る。
ハナマサ


買ってきた。


飯。
まだ、吹いているが、ちょっと焦げくさい。
急いで火を止める。


このあたりが鍋で飯を炊く場合の難しいところ。
水分は飛び切っていないが、焦げ始めている。
もっと弱火がよいのだろうが、うちのガスコンロでは
限界の弱火。


一分ほど置いて、もう一度弱火にし、数十秒。
火を止めて、蒸らし。七分。


鮨酢は一合分、40cc。
ほんの少し、しょうゆを入れる。


ボールに鍋の炊き上がった飯、二合分の半分を取り、
鮨酢を入れ、手早く合わせる。


全体に行き渡った、、が、寒いせいか、水分の飛びが
わるい。
やはり、微妙なもの、で、ある。


あまり混ぜすぎもよくない。
粘りが広がってしまう。


5〜6分、冷めるのを待つ。





酢飯の場合、これも大事。


さて、海苔。




これが全型。


包丁で、半裁。


いよいよ、巻簾に海苔をおいて、巻く。


一本分と思われる量の酢飯をのせて、広げる。





細巻である。
それこそ飯粒、一つ分、重ならないくらいであろう。


椎茸を絞って、中央へ置いていく。


よし、巻く。





一応巻けた。


柳歯包丁に水して、半分に切って、さらに半分。
四つに切る。


、、、切っている最中に、危うく、破裂しそうになったが、
なんとか、押さえてリカバー。
(中味の多い太巻ではおそらくこうはいかなかっただろう。)


これも、どうでもよいが、東京の鮨やでは、
干瓢の海苔巻はこの四つ切、カッパやら鉄火やら
他のものは六つ切りと決まっている。
なぜだか、干瓢だけが長く切る習慣がある。
お気づきであろうか。板さんに聞いてみたことがあるが、
理由はやはりよくわからない。


ともあれ、皿に載せる。





ちょっと、椎茸がかたよってしまった。



だがまあ、食べると、海苔巻、にはなっている。


難をいえば切がない。
やはり酢飯の水分がやはりちょっと多かった。


もう一つ、海苔がまずい。


細巻というもの、細い分、全体の味に占める海苔の
割合は、そうとうなものではなかろうか。


初夏の頃、私の住む東京下町は、祭シーズン。
界隈の鮨やでは、町内の神酒所に鮨の差し入れを
したりする。この頃はちょうど、新海苔が出回る時期でもあり、
差し入れする鮨には、海苔だけはと、この新海苔を使う、
と聞いたことがある。


確かに、新海苔は味が違う。


具はともかく、細巻にするのであれば、
海苔はよいものを。
これ、必須かもしれない。