浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



蕎麦・神田まつや


11月23日(金)勤労感謝の日

さて。

引き続いて、勤労感謝の日

半蔵門国立劇場の芝居がはねて、
劇場の外に出てくる。

雨はやんでいるが、寒い。

書いたように、着物を着てきている。

冬物で羽織。

真冬になると羽織を着ているくらいでは
寒くて耐えられないのだが、今日はまだ耐えられるくらい。

さて、どこへ行こうか。

芝居を観た後は、やはり、どこかで
一杯、ということになる。

半蔵門国立劇場周辺には、目ぼしいところはないので、
必然的に、どこかへ出なければならない。

終演後、国立劇場からは、都バスが出ているが、
これは新宿行と東京駅行で、私達には帰り道にはならない。

ここからだと、やはり神田か有楽町方面。

有楽町、銀座方面でもよいのだが、
やはり、家への帰路が短い方がよいので、
神田方面、と、いうことになる。

神田方面でも、やはり須田町。
着物を着ているので、どうしても和食。
それもちゃんとしているところの方が、
気分、で、ある。

寒いので、鍋。

軍鶏鍋の[ぼたん]というのも考えたのだが、ちょいと、
重い、か。

と、すると、蕎麦。

須田町は、ご存知の[まつや][藪]


[まつや]は、先月、やはり国立の帰りに寄っている。

この二軒を比較すると、どうしても
私は、まつやの方に足が向いてしまう。

[藪]が別にどうということはないのだが、
比較の問題だが、[まつや]の方が居心地がよい。

タクシーに乗って、神田須田町まで。

内儀(かみ)さんが降りてから言っていたのだが、
タクシーの運転手がビビッてた、と。
これは、朝に乗った時にもそうだったようである。

こういう格好をしているからだろうか。
わからぬが、私は、タクシーに乗る場合、
道にはうるさい。

つい最近までは自家用車を持っていた上に、
20年以上東京でサラリーマンをしているので、
そこいらのタクシー運転手よりも都心部の道は
知っていることが多い、のである。

なめんなよ!、という気持ちが、
態度が出るのかもしれない。

ともあれ。

靖国通り淡路町の交差点の先で降りる。

右側の出入口、格子を開けて入る。

5時前で、満席、ではない。

左側の出入口直近、ちょっと寒いが、
そこしかあいていなかった。

座って、お酒、お燗。



今日は特に、燗の加減はいわなかったと思うが、
普通の上燗で、きた。

酒の肴は?

うに。

それから焼鳥。



うにはすぐくる。

ここのうには、毎年ここで年越しそばとともに
買っているもの。
焼酎の入ってる、いわゆる練うに、で、ある。

つまんでみると、家で食べているものと
微妙に違う。
だが、やはり、このうにをなめながら、
燗酒を呑む、というのは、なかなか乙なもの、
で、ある。

呑みながら、ちょいと、寒いので
温かいものと、天ぬきを追加で頼む。

と、天ぬきから、きた。



天ぬきとは、天ぷらそばのそば抜き、のこと、で、ある。

藪系はかき揚げだが、ここは海老天

やっぱり、冬のそばやの酒の肴といえば、
この天ぬきにとどめをさす。

天ぷらの衣がふやけたものが、また、うまいし、
熱いつゆを飲みながら、酒を呑むのもまた、よろしい。

焼鳥もきた。




蕎麦やで焼鳥があるのは珍しいが、このあたりが
気の置けない蕎麦や、まつやの特徴であろう。

鶏もうまいが、ねぎがよい。
これはさすが、蕎麦や。

蕎麦は、もり。





壁に貼ってあったが、新そばのよう。

香りが、というが、私にはわからない。
いつもうまい、まつやのそば、で、ある。

うまかった。
ご馳走様です。

勘定をして、出る。

帰りは、秋葉原を抜けて、末広町まで歩き、
銀座線で稲荷町まで。




まつや