浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



大根三品[浦里・ふろふき・鶏皮スープ]

10月25日(木)夜



さて。



木曜日。


今日は、この前書いた池波レシピ、〔浦里〕


書いたこともあり、是非とも食べたくなった。


池波先生の文章は、こんな感じ。




大根おろしへ梅干の肉をこまかくきざんだものをまぜ合わせ、



これへ、もみ海苔と鰹ぶしのけずったものをかけ、醤油をたらした一品で、



炊きたての飯を食べる



 この一品。名を〔浦里〕といい、吉原の遊里で、朝帰りの〔なじみ客〕



の酒のさかなや飯の菜(さい)に出すものだが、、」



「ちょいと、その、うまいものだ。」




池波正太郎著「その男(1)」文春文庫






この作品、ご存知の方はそうは多くなかろう。
幕末から明治にかけての幕臣を描いたもの。
池波作品の中では、マイナーなものといってよいかもしれないが、
池波先生らしい作品だと思われる。


この〔浦里〕は直接、ストーリーとは関係がないのだが、
主人公が登楼(作品では吉原ではなく深川の岡場所)をする
場面描写で出てくる。


大根は、今、一本、100円と、随分安い。


この前は、一本を買うと残ってしまう、と、書いたが、
これを避けるためには、使い切ってしまうしかない。


〔浦里〕は大根おろしだが、たいした量にはならない。
まさか、大根一本、すべておろしにするわけにも
いくまい。


こうなれば大根づくし、で、いくしかない。


すぐに思い浮かぶのは、ふろふき


それから汁、スープのようなもの。
この前の鶏皮の出汁がまだあるので、あれで
煮ればよかろう。


大根一本を買って、帰宅。


最も時間がかかるのは、ふろふき。


これから取りかかる。


圧力鍋で下茹でをすれば多少時間短縮にはなる。


輪切りで三切れほどあればよかろう。


おろし用に尻尾側を残し、三つ、輪切りにし
皮をむく。面倒なので面取りは省略。


圧力鍋に入れ、ひたひたより少し多めに水を入れ、
一応、和食のセオリーなので、米粒を少し入れる。


ふたをして、点火、加圧。
圧が上がって、弱火で5分。
あとは放置。


次に、スープ。


こちらの大根は、火が通りやすいように、3〜4mmの
厚さで1/4の銀杏切り。


鶏皮のスープに入れ、点火。
しょうゆ味で、ちょいとピリ辛のスープにしよう。
唐辛子の輪切りも入れておく。


次は、ふろふきの味噌。


八丁味噌西京味噌の半々。
酒でのばし、ちょいと、砂糖。


加熱しながらよく混ぜる。
馴染んで、煮詰まってきたら、卵黄を加え、
さらに練る。
玉子の黄身を入れるだけで、味噌は各段にうまくなる。


とろみが出てきたら終了。
置いておく。


圧力鍋の圧が下がっているのを確認し、
ふたを開ける。
火はほぼ通っている。
崩さないように気を付けながら、軽く洗う。


下茹でをした大根は出汁を含ませる。
幸い、鰹出汁も冷蔵庫に残っていたので
これに薄口しょうゆ、酒をちょいと入れ、加熱。


大根を入れ、弱火。味を含ませる。


さて。


ここまでやって、肝心の〔浦里〕の大根をおろす。


おろしたら、水を絞って、梅肉、にんべんの鰹節削り節、
しょうゆをたらし、よく和える。


味見。


梅肉は市販の練梅で、着色料が入っているのか妙に赤い。


味はよい塩梅か。


もみ海苔をかける。





ふろふきも、盛り付け。





スープの大根はあらかた火は通っているよう。
火を止めておき、先に〔浦里〕とふろふきで
呑み始める。


だいぶ涼しくなったが、まだ、ビール。


〔浦里〕は、どうもつまみ始めると、とまらない。
これ、追求するとすると、やはり、練梅の味がポイントであろう。


そういえば、最近見なくなったが、桃屋
梅ごのみ、というのがあったが、あれなぞを入れると、
もっとうまかろう。


ふろふきも、味噌の具合はちょうどよく出来た。
やはり、ちょいと甘めがこれはよいかもしれない。
卵黄のまろやかさも外せない。


一つ食べ終わり、もう一つ。


スープも出す。





熱いスープが腹に染み渡る。



大根づくし。


これだけ味が違うと、あきるということはない。



まあ、成功、で、あろう。