浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



隅田川花火大会

dancyotei2012-08-01



7月28日(土)夜



忘れていたわけではないのだが、
忙しさに取り紛れ、昼すぎになって
近所を歩いている浴衣姿の若い女の子の姿で
気が付いた。


今日は、花火、で、あった。


花火、と、いうのは、むろん、隅田川の花火大会。


うちの内儀(かみ)さんも同様だったようで、
午前中外出をしていたのだが、午後帰宅し、同じようなことを
いっていた。


やはり、浅草に住んでいると、初夏の祭に始まり、
朝顔市、ほうずき市、そして、梅雨が開けて
隅田川の花火大会。


この一連の流れは、待ちに待った、という気分が
毎度、するもの、で、ある。


昨年は、震災影響で、あわや中止になりかけたが、
時期を一月遅らせて、8月に行なわれた。


まあ、1000年に一度の未曾有の大震災、
致し方のないことではあろう。


ただやはり、年中行事、行われるべきものが
正常に行なわれて、はじめて、落ち着いた生活、
というものになる。


最近はどうなのかわからないが、私達がこの元浅草の
マンションを購入した時には、そうであったが、
この界隈のマンションは、花火の見える、隅田川側から
順に売れる。


国際通りにある浅草ビューホテルも、
建設当初、花火の音が聞こえるように、
窓が開けられるようになっている、というのが
話題になった。


やはり、このあたりの者にとっては、
隅田川の花火はなくてはならぬものだし、また、
大袈裟な言い方にはなるが、自慢でもあり、
ある種の誇り、のようなものでもあるように思う。


こんな建て込んだ、川幅の狭くなった
隅田川で花火を上げるなど、普通に考えれば
随分と無理がある。


事実、打ち上げる花火の大きさには川幅の関係で
制限があるという。


隅田川の花火大会は、ご存知のように、
江戸の頃にさかのぼり、両国の川開きに
打ち上げられた花火を源流としている。


落語たがや、などはずばり、これ。


花火を見る人々でごった返す、両国橋上で
馬に乗った旗本に無礼をはたらいたとして、
首をはねられそうになる、たがや。
(たがや、とは、木の桶の周りを〆ている
細く割いた竹=たが、を取り替えて、〆直す
まわり職人。)


火事場の馬鹿力でたがやは、旗本の刀を取って、反対に、
旗本の首をはねてしまう。旗本の首が、天空高くあがり、
まわりで見ていた群集は、たぁ〜がや〜、、、。


今、あまりいわなくなったが、花火をほめる言葉が
た〜まや〜、と、店の名前を呼んだのだが、
そのほめ声に、たがや、を掛けたサゲ。


先年亡くなった談志家元は、江戸の頃の噺ならば、
飛ばされたのは、旗本の首ではなく、たがやの首であろうと、
そう変えてやっていた。


まあ、そんな具合に、東京下町、特に、
隅田川両岸に住む、者にとっては、そんな
歴史と風物を持っている花火大会があることが、
自慢、なのである。


ともあれ。


なぜだか、花火というと、拙亭では、から揚げ。


夕方から、私は鶏のから揚げを、揚げる。
内儀さんは枝豆と、蔵前いせや、という近所の天ぷらやで、
天ぷらのサンドイッチ、天サンドを買ってくる。


花火を待ち切れず、6時前には呑み始める。


から揚げ。



蔵前いせやの、天サンド。







どうも、無理矢理感、が、強く、
不思議なものだが、食べてみると、意外にうまい。


なぜだか花火、というと、うちの内儀さんは、
これを買ってくる。(普段は頼まないと作ってくれない
ものだが、花火の日には売ることにしているようである。)


花火は桜橋の第一会場と、厩橋の第二会場の二ヶ所で
上げられる。
第一が7時から、第二が7時半から。


ご存知のように、TV東京で中継されている。


我々の住む元浅草は第二会場のほぼ真西にあり、
見るのはこちら。


7時半まではTVで見て、第二会場が始まると、
私は浴衣に着替えて、下駄を履いて、内儀さんと、下へ降りる。


うちのマンションでも部屋から見える家もあるのだろうが、
残念ながら、我々の部屋は、隅田川とは反対の西と南が窓で
身を乗り出せば見える程度。毎年、下へ降りて、路上から見る。


近所の同じような条件の人々は、皆路上で見る。
通りがかりの人も多少はいる。




見る、といっても、ビルに1/3は遮られている。

が、それでも、音も十分に聞こえる。





ものによっては、全体が見えるのも、ある。

動画も撮ってみた。




東京の方であれば、一度くらいは、見にこられたことがある方が
多かろう。ご存知の通り、浅草を中心に周辺はごった返す人。
一番よいのは、屋上やら部屋やら、絶好のポジションに場所のある
知り合いに呼んでもらうという方法。
知り合いがいなければ、、、あきらめるしかないか。


我々は、ここなん年も人込みへ行くよりも、
半欠けの花火だが、満足して見ている。








蔵前いせや
台東区蔵前4-37-9
03-3866-5870