引き続き、土曜日。
浅草から芝大門まで、自転車を飛ばして
味芳斎支店までやってきた。
ビルの1階、赤いテントの比較的小さな店。
いい陽気で、表のドアは開けられている。
入ると、のどかな土曜日の昼下がり、
席はパラパラと、あいている。
案内された奥の席に座る。
目当ては決まっているのだが、
一応メニューを見る。
牛肉飯、牛肉飯。
確かにあった。1000円也。
お姐さんに頼む。
この店のご主人らしい人が、同年輩の常連さんらしい人と
スポーツ新聞を広げてなにやらたのしげに談笑。
立ち働いているのは、若主人なのか背の高めの男性と、
注文を取りにきた、中国人のお姐さん。
あとからもポツポツとお客が入ってくる。
常連さんらしい人は、事前情報の通り、
牛肉飯のことを、牛丼、といっている。
やはり、待つほどのこともなく、
きた。牛肉飯。
牛肉の煮込みと、もやしなどの野菜が半々にのった、
確かに、カレーのよう。
上には、香菜(パクチー、コリアンダー)。
スープの具はキャベツのよう。
食べてみる。
ん!。
なるほど、辛い。
牛でも、この肉はなんであろうか。
バラか?。
見た目には、慶楽などの牛バラ肉煮込み、の、ようだが、そうとうに辛い。
辛いのはわかるのだが、他にも香辛料が入っているよう。
友人情報では、肉はどうも、すね肉。
香辛料は、にんにく、しょうがに、八角、丁子(グローブ)、
桂皮(シナモン)、に、むろん、唐辛子。
なるほど、黄色い、ターメリックが入っていないだけで、
カレーに近い。
砂糖が入っているのか、酒なのか、多少の甘みもある。
香菜はちょい苦手なので、よけながら、食べようとするのだが、
いやいや、この辛さ、香菜の香りなど、ぶっ飛ばす。
辛いが、うまい。
ハフ、ハフ、ハフと、掻っ込む。
けっこう、量があるのだが、夢中で食べ終わる。
うまかった。ご馳走様ぁ〜。
勘定をして、出る。
噂通り、味芳斎支店、只者ではない。
あとの情報では、見た目には、町の気の置けない
中華や、なのであるが、創業50年以上にもなる、
四川薬膳料理の店、ということ。
なるほど、四川。
それでこの辛さと、いうこと、で、ある。
“四川薬膳”というのがどんな料理ジャンルなのか、
よくわからないが、ちょっと、四川の隣の雲南料理を思い出す。
雲南料理は、末広町と、拙亭の近所にもある、架橋米線。
これらも薬膳系で香辛料が強い。
このあたりだと、ネイティブな味で、馴染みにくいところもあるが、
ここ、味芳斎は50年もやっているからか、さすがに日本人にも
こなれた味。
他にも、レバニラだの、レバピーマンなどがうまい、
とのこと。
浜松町大門は、通常の行動範囲外だが、羽田からの帰りにでも
またこよう。
さて。
店を出て、路地を抜けて、神明様へ。
神明様、とは、芝神明、芝大神宮である。
日柄もよいのか、結婚式をやっている。
芝の神明様といえば、先日の、中村座の『め組の喧嘩』の舞台、で、ある。
この絵は「芝神明生姜市」。三代国貞、二代広重の合作
幕末の頃のもの。
きれいなお姐さんが歩いているが、いわゆる茶屋のお姐さん
で、あろうか、芸者さんであろうか。
この頃の神明様の境内では、『め組の喧嘩』のように
相撲の興行が行なわれていたり、普通の茶店はもちろん、楊弓場、
陰間(かげま・男色)茶屋まである、このあたりで最も栄えた
盛り場であったといってよかろう。
境内も、今よりもずっと広かった。
今の神明様はビルに埋もれ、茶店すらなく、面影はない。
しかし、さすがに辛かった。
一息入れに、近くでコーヒー店を探し、一服。
一休みし、帰路へ。
味芳斎
03-3433-1095
港区芝大門1-10-1