12月17日(土)第二食
仕事自身も忙しのだが、
忘年会ピークの一週間。
仕事は来週も暮(くれ)の追い込み、というのか、
今年中にやっておかなければならないことも
まだまだある。もう一息、か。
ともあれ、朝、冷蔵庫をのぞくと、
先週煮た、穴子がまだまだあった。
これ、食べなければ。
飯を炊いて、にぎり鮨にしようか。
飯を炊くには時間が掛かるので、
第二食にしよう。
第一食はトースト。
米を“すしめし”の水加減で浸水をしておく。
飯を速く炊くには、いつもの、鍋で炊く方法、があるのだが、
あれは、今は柔らかめにしか炊けない。
酢飯は、堅くなくてはだめだ。
むろん、鍋で炊いても堅く炊き上げることは
できるのであろうが、これはこれで、
また試行錯誤をしなくてはいけない。
今日のことには間に合わぬので、電気釜にする。
1時間ほど浸水をし、11時頃“すしめし”モードで
炊き始める。
やはり、小一時間はかかる。
鮨酢を用意。
飯は1合。
酢40ccにほんの少ししょうゆと、塩。
砂糖はなしだが、今日は、これに酒も入れてみる。
全国的には、鮨酢には、砂糖を入れることが
多いだろう。
東京の人間が地方へいって鮨を食べると、
酢飯の甘さがいつも気になる。
江戸でにぎりの鮨が生まれた頃の酢飯は
赤酢を使っていたといい、今でも、私が通っている
新橋のしみづ、などは使っており、色が付いた酢飯である。
もともと赤酢というのは、安い酒粕を使って作った酢、ということであるが、
今、一般的に使われている米酢よりも、旨味が濃いともいう。
それで、今日は酒を入れてみようと思ったのではある。
(今度赤酢を手に入れてやってみようか。)
電気釜のスイッチが切れて、7〜8分蒸らす。
ふたを開け、2合炊いたので、そのきっちり半分を
ボールに取る。
ここに作っておいた鮨酢をしゃもじの上からまわしかける。
すぐに、切るように、混ぜる。
全体に行き渡ったら深追いはしない。
これも酢飯のコツであろう。
酢飯のメカニズムは、飯の温度で酢の水分を飛ばす。
以前には、団扇などを使っていたが、
結局、少量の酢飯を作る場合には、すぐに冷めてしまうので
そんな必要はなかった。
また、酢飯というのは、冷まして使うのではない。
これも段々にわかってきたこと。
東京の鮨やでも、ある程度のところは、保温をしながら
使っている。
酢飯は温かくてよいのである。
ある程度酢が全体に行き渡ったら、ここで混ぜるのは
終了。
これ以上混ぜ続けると、飯粒が潰れ、べちゃべちゃな
酢飯になっていく。
あとは、自然に温度がある程度下がるのを待つ。
5分程度。
その間に、冷蔵庫の煮穴子と、たれも出す。
たれは固まっているので、レンジを軽くかけて
ゆるめておく。
穴子はにぎり一つ分の大きさに切り、オーブントースターに
アルミホイルを敷いて、加熱。
東京の鮨やでも、穴子を温めてにぎるところと
冷たいままにぎるところと、ある。
煮上がってすぐであれば、あらためて温める必要は
なかろうが、冷たいままでは脂が固まっており、やはり煮たものは、
温めた方が、うまいであろう。
そて、にぎる、わけであるがこれは
むろん私の場合は、ご愛嬌ではある。
うまくにぎれるようになれるとは、思ってはいない。
これは、プロにまかせる。
一応、にぎりとして形になって魚と酢飯が一緒に口に入る
状態になっていれば、よい程度。
にぎり終わったら、甘いたれをたらす。
やっぱり、ビール。
形はともかく、味は、うまい。
煮た時には、穴子は脂はさほどでもないと思っていたが、
冷蔵庫に入れている間に、脂が表面に出ていた。
多少はあったのであろう。
ホカホカの穴子に酢飯、たれ。
これらが一緒に口の中に入る。
やはり、うまいもの、で、ある。
今日、ちょっと気が付いたのだが、
この穴子の煮汁を煮詰めて作っている、甘いたれ、
鮨やの符丁でいう、ツメ、は、酢飯とともに
食べると、味が変わるのではなかろうか。
いや、たれだけが変わる、というのではないかもしれない。
前にも書いているが、にぎり鮨、というのは、酢飯と
種である魚を一緒ににぎって食べるものだが、にぎることによって
アミノ酸が増える、という。
つまり、にぎるだけで、味が変わるのである。
ここがにぎり鮨の、デリケートなところであろうし、
江戸で生まれたが、日本中いや、今や世界中に
広まっている所以(ゆえん)でもあろう。
トウシロウのにぎったものであるが、
やはり、穴子のにぎりは、うまいもんである。