浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



谷中と浅利ぶっかけ、そして、そら豆

6月7日(火)夕



帰り道、なにを食べようか、考える。



初夏、というのは、急に、色々と、
食べるものが出てくる。


秋もそうだが、負けず劣らず、
ではなかろうか。


一昨日食べた、鰹。


初鰹。


もどり鰹も、また、うまいが、
江戸の頃から、ご先祖様達が、大騒ぎをして
食べただけのことはある。


そして、今日、頭に思い浮かんだのは、
谷中。


当今は、年がら年中あるが、
やはり、この時期のもの。


谷中生姜、というのは、むろん、その名の通り、
谷中付近で作られていたので、その名がある。
(正確には、多く栽培されていたのは、今の台東区谷中ではなく、
山を越えた、日暮里側。古くは、日暮里側も谷中といっていた
のである。)


東京では、初夏のつまみ、酒の肴として、安くてうまい。
とても一般的で、どこのスーパーにもあるが
全国的に食べられているのであろうか。


きちんと調べたわけではないが、
そうではない、のではなかろうか。


これもまた、東京の郷土料理、かもしれない。
(どのくらいの地域で、食べられているのであろうか。
例えば、関西地方の方は、食べますか?)


そういえば、居酒屋のチェーンなどでは、
あまり見かけない、ような気もする。


やはり、東京固有のもの?。


洗って、味噌をつけるだけのものだが、
私などには、立派な一品。


なんといったらよいのか。
心の満足度のようなものは、
そうとうに、高い。


しかし、さすがに、谷中一品だけ、ということは
ありえない。


で、思い浮かんだのは、またまた、浅利、
なのだが、今日は、ぶっかけ。


ぶっかけ、というのは、普通にいえば、
深川飯。


いや、その、前身。


今は、深川飯といえば、浅利のむき身の
炊き込みご飯だが、もともとは、
むき身の汁を、飯に、ぶっかけたもの。
深川の漁師が始めたもの、という。


これが、浅利のぶっかけ。


池波レシピと、いってよかろう。


剣客商売で、大治郎は、飯にかけて、四杯も食べる。


牛込神楽坂駅隣のスーパーに寄る。


またまたむき身がないので、殻付き。


その上、谷中を置いていない。
(なんたることであるか!東京のスーパーとして、これは、
いかがなものか!?。)


拙亭近所の、ハナマサにはあるであろう。
浅利だけ買って、出る。


新御徒町駅を出て、ハナマサまでくると、
谷中は、案の定あり、ついでに、そら豆も
安いので、買う。
枝豆もよいが、そら豆もこの時期、欠かせない酒の肴、
で、ある。


帰宅。


まずは、浅利から。


一昨日同様、鍋に浅利を入れ、水を入れ、煮立て、
殻を開ける。
煮汁を別にし、一昨日と同じように、
一つ一つ、殻をはずす。


作品中は、どうも、しょうゆ味らしいが、
私は、味噌の汁の方が好み。


ねぎを五分切りにし、煮汁に入れ、火を通す。


火が通ったら、浅利の身を戻し、
味噌を溶いて、完成。


そら豆は塩茹で。


谷中は、食べやすく、縦に包丁を入れ、
味噌とともに、皿にのせて、終了。






こうして、写真に撮ってみると、なんとまあ、色鮮やかなこと。
まさしく、初夏の味覚、で、ある。





谷中にそら豆、そして浅利のぶっかけ。


酒の肴、なので、飯はなし。なんのことはない、
浅利とねぎの味噌汁、ではないか?!。


いや、これは、断じて、味噌汁ではない。
そう思って作ったので、ぶっかけの、飯ぬき、で、ある。



こんなものどもだが、私には、
随分と、満足度は高い



存分に、初夏の味覚、満喫、で、ある。