浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



池波正太郎と下町歩き 9月その9 半期を終わって


これで、4月から6回、NHK文化センターの『講座』、
池波正太郎と下町歩き」今期終了。


参加された方々は、どんな感想も持たれたであろうか。
ご満足いただけたであろうか。


せっかくなので、私としての総括のようなものを
してみたい。


25名もの方に、なにか喋りながら、歩き、
かつ、食べる。なにぶん、私としても、初めての経験で、
1回目、2回目などは、どうなることかと、
自分でも心配はしたのだが、結果としては、
まあまあ、やれるじゃないか、という手応えのようなものは
得られたような気がしてはいる。


そう、4回目の、森下の桜鍋や、みの家、あたりから、
で、あろうか、なんだか、25人の呑み会、大宴会の
ようになって、随分と盛り上がった。
(やはり、今日のように、座敷の方が、落ち着いて、
よかったのかもしれぬ。)


この『講座』を始める時に、NHK文化センターの
担当の方と相談をしている段階では、酒は呑んでいいのか?
という質問を私からすると、原則は“なし”、という
ことになっており、私自身は、この6回を通して、
注文はしなかった。


しかし、生徒の皆さんが自ら注文をするのは
むろん、とめる筋のものでもなく、OK。
そして、私は、むろん、好きなものなので、
周りに座った皆さんのご相伴に預かる、と、
いうことなっていったのである。


適度な運動をし、あるいは、真夏には大汗をかき、
土曜の昼間からではあるが、ビールを呑むのは
この上なく、楽しいものである。


また、私は別だが、参加の皆さん同士は、この『講座』で
たまたま顔を合わせた間柄で、むろん、
なにか利害関係があるわけでもなく、
この『講座』を選ばれているので、趣味は重なるところも
多いようで、回を重ねる毎に、屈託なく話ができ、
呑める雰囲気になっていったのかもしれない。


お勉強だけではなく、普段歩かない“下町”を歩き、
楽しく飯を食い、楽しく呑む。


お勉強と、エンターテイメント、を、同時に
そこそこは、ご提供できたのではないか、とも思う。


また、こういう形が、私という人間に向いている。
いや、私にはこれしかできない、ともいえる。
また、他の人には、これら両方は、なかなかできない、
という自信も、いくばくかは、持つこともできたようには思う。


それから、私の格好のこと。


4月の袷から、始まり、9月の絽の羽織まで、
この6回は、すべて、着物で通した。
(7月の両国、森下は、浴衣にしたが。)
これは、やはり、下町を案内するというのには、
それらしい雰囲気になったのではなかろうか、と、
思っている。
が、まあ、そういう側面もあるのだが、
白状をすれば、自分が着たいから、というのが
第一の理由ではある。


また、資料作りのこと。


これは楽屋話。毎回この『講座』のために
資料を作ったわけだが、すべての回で、資・史料を捜し、
知っていると思っている街であっても、新たに
調べ直した。そして、私なりのフィルターを通し、
おもしろい、興味深い、伝えるべき、と考えたことを、
皆さんにお渡しする資料にまとめている。


さらに楽屋を明かすと、そのプロセスは、千代田、中央、台東、
墨田、江東などの“下町”各区の区史をまずは、買い集めるところから
始まる。これは、歩く界隈の概略をつかむには、とても便利。
(これらは、基本は皆、古書だが、今、こういう専門の古書も、
Webで簡単に捜せて、比べて、安いものを買えるのは、この上なく、
便利である。)
そして、さらに、興味を持った、関連する専門資・史料を
捜す。まあ、そんな具合、で、ある。


私の近所、例えば、浅草の歴史なら、ある程度深く調べてあったが、
それ以外のところとなると、心許ないところの方が多かった。
そんな自分とすれば、知っておかなければならないのだが、
手薄に感じていたところなど、この機会にある程度
十二分に調べられたのは、そうとうに、有意義であった。
つまり、自分自身の勉強になったということである。


ま、ま、そんなこんなの、ゴタクもありながら、だが、
とにかく、至らぬながらも、参加いただく皆さんに、楽しんでいただくこと、
これが、すべてであろうと、考えて取組んだつもりである。


この6回分、お付き合いいただいた皆様に、
深く感謝するとともに、また、10月からの来期も、
ご期待いただければ、幸い、で、ある。


また、こうした貴重な機会を与えて下さった
NHK文化センターに感謝の言葉を申し上げたい。


さらに。


『講座』の内容を、一応、読んでいただくことを
前提に、ベツモノとして、この日記にも書いている。
読者の皆様には、これはこれで「断腸亭料理日記」の
一ジャンルとして、読んでいただければ幸いである。