浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



南千住・うなぎ・尾花

dancyotei2010-07-05



6月29日(火)夜



さて。



梅雨も盛り、ではある。
雨も降るが、毎日、蒸し暑い。


梅雨といえば、梅雨寒、なんというのもあるが、
今年は、まったくそんなことはない。
熱帯地方のような気候が続いている。


今日は、夕方、柏。
TXで帰ってくる。


暑いし、、千住で立ち呑み、も、わるくはないが、
久しぶりに、尾花へいってみようか。


尾花は、いうまでもなく、私の大好きな、
南千住のうなぎや、で、ある。


ここへくるようになって、どのくらいになろうか。
少なくとも、葛飾四ツ木に住んでいた頃からなので、
15年以上にはなろうか。
むろん、古い店なので、もっと、長く通っている人も
少なかろう。


そういえば、ここの創業はいつごろなのか。
今まで、調べてみたこともなかった。
この店は、ホームページもなく、滅多にメディアの
取材にも登場しないので、そういった情報は、
あまりオープンになっていないだろう。


少し調べると、なんでも、明治の終わり頃、
ということであるが、シークレットはシークレットで
よいような気もしてくる。


今ある、生のうなぎやである、尾花、が、すべて。
様々な蘊蓄、情報などいらない。


店側の本当の理由はわからぬが、お客として
店にいく側としても、潔いようにも
思われる。


そういえば、この店は、支店というのも
ないのではなかろうか。
ほとんどの有名店が暖簾分け、支店、デパートの出店
その他、うなぎ割烹なんという看板をあげて、
高級な仕立てをし、お客を呼んでいる。
しかし、尾花は、南千住のここだけ、ということ、
なのか。わからぬが、筋が通っているようにも
思われる。


ともあれ。


土用が近付いたウイークエンドなどは、
ここは、行列でたいへんなことになる。
その前に、食べておかねば、で、ある。


6時少しすぎた時間、南千住の駅を下りて、
常磐線の土手下の尾花を目指す。


この南千住の駅前もほんとうに
随分ときれいになった。
回向院の前を通り、まだ明るい、土手下の道。


この駅からの、微妙な距離も、また、
尾花への前奏曲のようで、よいもの、で、ある。


大きな門から入る。
右側に赤い幟のお稲荷さん。


大きな暖簾をくぐって、玄関に入る。
下足のお姐さんへ、一人、と指を出す。


はい、どうぞ〜、と、
下足の札をもらって、中のガラス格子を開けて、
入る。


入れ込みの広い座敷。
ウイークデーだが、7〜8割は埋まっていようか。
案内されたのは、正面の神棚の下付近。
鞄を脇に置き、どっこらしょ、っと、胡坐をかく。


扇子でパタパタ。
噴き出す汗を、手拭いでぬぐう。


むろん、ビール、で、ある。
エビスの瓶。


つまみは、毎度決まっている。
鯉の洗い。


今の季節は、ぴったりだが、
私なんぞは、好きなので、真冬でももらってしまう。


すぐにビールがきて、まずは一杯。
生き返る一杯、で、ある。


鞄から新聞(日経)を取り出し、読む。


前にも書いたような気がするが、ここでは、
なにか池波作品にしても小説やら、あるいは専門書やら
ではなく、待ち時間に読むのは、新聞が気分、である。


なぜであろうか。


例えば、普段、朝、会社への行きがけの
地下鉄の中では、むろん、新聞を読む。
が、帰り道や、昼間移動する車内では、
新聞は読まない。池波作品そのものだったり、
『講座』関連の専門書だったり、
いずれにしても江戸関連のもの、である。
これは、自分にとっては、ある意味勉強ではあるが、
それでもやはり仕事ではなく、息を抜く、というような気分、
なのであろう。


と、すると、仕事は終えている時間で、
寛げる、尾花の入れ込みの座敷なのに、
日経新聞というのは、なぜであろうか。


まわりが、江戸で、下町、なので、なにか、バランスを
取ろうとしているのか、、。
なぁんとなく、そんな気もしてくる。


スイッチを完全に切ってしまうのではなく、
半分は残しておく。
なぜそうなのか、自分でもよくわからぬ。
どっぷり江戸、ではなく、本質的には、
半分は持っておきたいと、いうことが
私の中に、あるのかもしれぬ。


鯉の洗い、も、きた。





冷たい角氷の上にのった、ちょっと厚めに切って、
締まっている、鯉の身。
濃い赤味噌の酢味噌とともに、格別に、うまい。


ゆっくりと、新聞を読みながら、
ビールを呑み、洗いをつまむ。


30分、小半時(こはんとき)。
先に、お新香が運ばれ、
うな重が、くる。


お重の蓋を開け、山椒をふって、、、





まさに、これ以上幸せな時間はどこを探しても
なかろうと思える時、で、ある。


肝吸いを飲み、うな重を掻っ込む。


ふ〜、、。うまかった。


お茶を飲んで、荷物をまとめ、立つ。


帳場で勘定。
若女将なのか、当家の娘さんなのか
若い女性。


玄関の外にある、灰皿の前で、一服。





吸い終わり、玉砂利を踏んで、門を出る。



これで、尾花の時間、終了、で、ある。