浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



洋食・日本橋・たいめいけん

(一週間遅れになってしまったが、お許しを。)




5月8日(土)夕



さて。



『街歩き講座』の6月分は、色々考えて、
洋食の日本橋たいめいけんにした。


歩くところは、日本橋界隈。


テーマが、池波先生縁(ゆかり)の飲食店と下町歩き、
というわけなのだが、4月の第一回が、浅草で店は前川、
5月の第二回が、外神田で末広町の花ぶさ。


この場所選び、意外とむずかしい。
和食、和食、と、和食が続くので、次は
中華、とも考えた。


店を決めるのは、簡単なのだが、町がむずかしいのである。


中華だと、揚子江菜館とも、思ったのだが、町は神田神保町
神保町だと、どんなところを回ろうか、と考えるのだが、
神保町はそもそも、下町、といってよいのか、というところ。
江戸の頃は、基本的には、武家地ばかりで
あまりドラマチックな話題もない。また、明治以降は
大学など多く、文教地区といってよかろう。
それでも、なんとか考えるのが講座の“仕事”なのであろうが、
一先ず、ハードルが高いので、後回し。


かわって、日本橋の洋食、たいめいけん
たいめいけん、は、問題なかろうし、
日本橋も話題には、事欠かない。


といった、わけで、たいめいけん


予約は既に先週、TELで済ませている。


町(日本橋)の下見と、たいめいけん、へ
行ってみることにした。


夕方、16時頃、内儀(かみ)さんとともに、出る。
稲荷町から銀座線で、日本橋


半端な時間なので、並ぶこともないであろう。


駅から上がり、コレドの脇の路地を入る。


左側に広場があり、その脇に『名水白木屋の井戸』なる
碑を見つけた。
今まで、なん度もここは通っているが、気がつかなった。


白木屋というのは、ご存知、コレドの前の前の
白木屋百貨店、その前は、呉服店
江戸初期から、続いていた三井越後屋こと三越
引けを取らない、大店(おおだな)であった。


その、店の中にあった井戸のこと。
掘られたのは、白木屋の二代目の頃。正徳元年の1711年、と、いうので、
有名な新井白石の正徳の治、頃で、元禄のあとだが、まあ、
まだ、江戸も中期の初め、というところであろうか。


当時のこのあたりの、水事情というもの。


江戸、と、いうところ、特に下町は、
ご存知のように江戸湾に向かった埋立地でできている。


家康が江戸城を築いた頃の海岸線は、今の日比谷公園あたりだったり、
八重洲、というくらいで、あのあたりも、海岸。
日本橋はその外なので、既に、埋立地、で、ある。
玉川上水など、が開かれ、木の樋(とい)による水道が
整備されたが、それでも日本橋も水事情はよくなかったようである。


そこで、白木屋二代目の主人が苦労をして、井戸を掘り、
幸運にも水が出て、近隣にも分け与えたという。
その井戸を掘った時に、観音様が出て、これを祀り、
名所になっていたと伝えられているとのこと。
(現在、この観音様は白木屋の閉店とともに、浅草浅草寺
淡島堂に移されているという。)


ともあれ、江戸期、江戸でも目抜の、
大店が軒を連ねていた、日本橋通(とおり)一丁目
の話、で、ある。


閑話休題


たいめいけん


入ってみると、予想通り、一階もまだ、
列もなく、半分は空席。


奥の席へ、案内され、内儀さんと座る。


まずは、ビール。エビスの瓶。


最初に、つまみに、ここの看板、ボルシチ(¥50)、
コールスロー(同)を一つずつ、もらう。





これどちらも、50円だが、十二分にうまい。


今日は、池波先生のお好みであったものを
食べよう、と、考えてきた。


先生は、二階へ上がり、ポークソテーやら、サーロインステーキ。
それからカツカレー。カレーは、実は、一階と二階で違うものを
出している。これは昔も今も、かわっていない。
一階は、庶民価格(しかし、今は安くはないが)
二階は高級、という区分けがこの店はある。
池波先生は、一階のカレーが昔風で懐かしく、わざわざ、
一階のものを運ばせいてた、という。


そこで、昭和の紙カツカレー。
昔風で、薄いカツであるので、こういう冠が付けられているよう。
それから、ポークソテー、サーロインステーキも
もらってみる。
(二人であるが、そうとうな、量である。)


揃えて、お持ちしますか?
と、聞かれたが、なりゆきで、と。


カツカレーからきた。



カツはともかく、ここでカレーを食べたのは、
初めて、で、ある。


なるほど、昔風。
小麦粉がちょっと、多目、といったらよいのか、
以前は、先々代のお内儀さんが仕込まれていた、
というが、いかにも、そのよう。
以前に銀座の煉瓦亭で食べたカレーもこんな感じではなかったか。


まあ、現代の我々の感覚では、ちょいと、薄い
感じがするもの、で、ある。


ポークソテー





食べてみると、これは、ちょっと厚みがあるが、
なんのことはない、豚ロースのしょうが焼き。


しょうが焼きとして、うまい。


サーロインステーキ。





これは、ソースがしょうゆと、デミグラスソースを
選べるが、デミグラスの方を頼んだ。
(焼き方は別段聞かれなかった。)


デミグラスといっても、こってりではなく、
赤ワインの風味の強い、どちらかといえば、
さっぱりしたもの、で、ある。


ポークソテーの方には、ご飯がついている。
カツカレーと合わせて、やはり、そうとうな量。


その上、肉、肉、肉、、、である。


どれもうまいが、内儀さんと、ふうふういいながら、、、なのであるが、
それでも、食べ切ってしまった。
(まったくもって、少しは、年のことを
考えねば、、、。池波先生のように、痛風
なんぞもある。)


だが、満足、満足。
うまかった。


勘定をし、出る。


帰りは、再び、下見を兼ねて、内儀さんと
三越側を少し歩き、帰宅。










中央区日本橋1-12-10
03−3271−2463


たいめいけん