浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



上野・とんかつ・井泉本店、で宴会。

dancyotei2010-04-13

4月8日(木)夜



4月の年度替りで、どこもそうかもしれぬが、
歓送迎会のシーズン。


私の所属する部門も出る人来る人、退職される人、
などおり、8日に歓送迎会をやることになっていた。


10数人と、人数はさほど多い組織、ではないが、
今回は、幹事の順番が回ってきた。


最近の会社などの宴会をする場所は、
どうであろうか、多くはネットで検索し、
決められている、のではなかろうか。


少なくとも私の周りはそういうことが多い。


従って、幹事自身も一度も行ったことのない店の場合も
あったりするのである。
それで、ハズレ、のこともなくはない。


ネットなどができる前は、どうしていたか、
考えてみると、会社の宴会などでは、わざわざ
ガイドブックを買って調べて、なんということはせず、
まあ、知っているところ。
あるいは、新しいところを捜すにしても、
誰かに聞いたところ。
いわば顔が見える範囲の、文字通り
口コミであったと思われる。


そういう意味では、あまりハズレ、
というのは、なかったわけである。


(ネットの口コミというのは、
ある程度は参考になるのだが、結局、
どこの誰だかわからない者が書いているので、
やはり、このへんが曲者。


私がネットで調べる場合には、そのコメントをしている
人物が、他にどんなコメントをしているのか、
わりによく見たりはする。


毎度のことだが、余談、で、ある。


こうしたコメントをする人には、
マニア、といってよいような人がいる。
以前には私もこの種のコメントを書いていたことが
あるのだが、今はしていない。
なぜかといえば、コメントを書き始めると
コメントを書くこと自体が目的になり、
とにかく、新しい店を捜し、あるいは、
行っていない店を捜し、出かけるようになるのである。


個人的には、そういう行為自体が本末転倒。
まっとうな人間のすることではないと、気が付いた。
うまいと思えば、普通の人間であれば、通うものである。


数をこなすのは、プロの飲食関連の編集者、ライターであれば、
普通のことかもしれぬ。しかし、素人でこれをすれば、
結局、グルメライター“気取り”、というところに
行き着くのである。
プロであれば、書いている内容の質、が、あたり前だが
直に問われる。だが、素人が書くネットは、日本ではそうそう
批判やら、反論を書く人は少ない。


先日、王子の居酒屋の回に書いたが、勘違い発言を
する人もあり、私は、注意が必要であると思っている。
むろん、ちゃんとした見識を持っている人もいなくはないが。)



まあ、そんなことで、幹事として、店選び。


と、思いついたのは、上野のとんかつ、井泉


この前、夜いったばかり。
前にも書いているが、夜もいいし、ここは、
二階に座敷もあり、以前の下谷花柳界の香りを
多少感じられる(と、聞いていた)。
川島雄三監督の映画「喜劇・とんかつ一代」のモデルの
店でもあり、水谷良重(現二代目八重子)が
下谷芸者役で出演している。)


で、その座敷で、宴会をしてみたい、という
とても個人的な動機、で、あった。


とんかつやで、宴会というのは、どうなるか。
つまみなど、あるのか?そこが気になるところ。


むろん古い店だし、いくらでも対応策はあるだろうし、
ここは弁当や仕出しもやっており、人数の多さも、
大丈夫であろう、と、踏んで、TELをしてみた。


と、若女将、で、あろうか、電話に出られ、
やはり、つまみになるものは用意をしてもらえるとのこと。


内容は、焼き豚、サラダ、肉団子、串かつ。
これに、ひれかつの定食をつけて、4000円
いかない。
飲みものは、呑み放題コースなどはないので、別会計。


私の部門は、呑む人間も多い。
呑み放題などにすると、いいオジサンが
周りに迷惑をかけるほどのことが、あったりもするので、
むしろ、ない方がよいであろう。


ここで、宴会をしよう、というのは、正直のところ、
先のように、完全に私の趣味である。
会社は市谷で、西の方、南の方に住んでいる人々もあり、
上野、という場所には多少の異論もあった。
しかし、そこは幹事の特権、勘弁をしてもらうとして、
ここに決定。(ただし、上司である部門のトップをはじめ
事業所のある柏周辺やTX沿線に住んでいる者も少なくないので、
不便な人ばかり、ではない。)
15名(最終的には、減って、13名)で
お願いすることにした。


19時スタート。
18時半頃、オフィスを出て、ぞろぞろと
大江戸線に乗り、上野御徒町駅まで。
井泉は、降りたらすぐ、で、ある。


入り、名前をいって、二階の座敷に上がる。








二階なのだが、一見、一階のような
庭が見える。
広くはないが、落ち着いた和室。
それでも20人以上は楽に座れそう。


開宴。


最初は、焼き豚。





添えられているのは、なぜか、薄切りの生姜。
鮨やの、甘酢漬け、よりは少し薄めの味。


串かつ。





串が刺さっていないが、
これは確か、盛り付ける前に抜いていた
と思われる。
むろん、揚げ立てであるし、長ねぎが、うまい。


きゅうりのサラダ。





マヨネーズのサラダだが、かにが入っており、
意外にうまい。クセになる味。


肉団子。





さすがにとんかつや。
サラダ以外は、みんな肉。
それも豚肉。さらに、肉団子も揚げたもの。


最後は、ひれかつと、ご飯、豚汁。





これ、肉団子と串かつは2〜3人で一皿だが、
焼き豚とサラダは、一人一皿。
全部食べると、そうとうに満腹。


余らせる人もいたので“おみや”にしてもらう、
のも店にお願いした。
やはり、老舗ではこういう頼みも問題なく、
聞いてくれる。


とんかつの味は、むろんうまい。


見栄えばかりでたいしてうまくもない、
神楽坂あたりの、古い家屋をリフォームした、
今風の和洋折衷居酒屋、のようなところ、、よりも、
どれほどよいか。


私はそう思うのである。




井泉





文京区湯島3-40−3
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