浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



福岡出張

dancyotei2010-03-04

3月3日(水)


九州、福岡出張。


福岡といっても、福岡市ではなく、空港の福岡市とは反対の東側。
志免(しめ)町というところ。


夜、訪問先の社長さんにこの近所の鮨やへ、連れていって、
いただいた。


九州というところ、どこへいっても、海のもの山のもの、
なんでもうまい。


特に、福岡というところは、魚がうまくて、そのうえ安い。
(今日のものは、安くはなかろうが。)
また、いうまでもなく、九州は酒、とくに焼酎がうまい。


出たものは、まず、白子(おそらくふぐ)、ぽん酢、と、鯵の胡麻和え。





毎度書いているが、東京あたりで食べると、
ひとつ間違うと、そうとう生ぐさいものにあたってしまう。
こちらは、ふぐの本場でもあるし、こうしたものに対して、
皆、口が肥えている、というのか、本当に、うまいものを
知っているので、半端なものは、出てこないのだろう。
べら棒に、うまい。


鯵。
こちらでは、鯖や鯵の刺身をこうした胡麻和えに
することが多いよう、で、ある。



それから、生きている、白魚のおどり。


これは、生まれて初めて、で、あったかも知れぬ。
完全に生きて、泳いでいるものに、うずらの玉子を
浮かせた、酢じょうゆをかけて、のむ。
季節の風物詩、なのであろう。





その昔、江戸湾佃島あたりでも獲れた、と、いう、
白魚。こうしたものが季節になれば食べられる、というのは
ほんとうに、うらやましい。
(空輸して、東京で食べても、なんの意味もなかろう。)



月も朧(おぼろ)に白魚の 篝(かがり)も霞む春の空〜


こいつぁ春から縁起が良いわい



(歌舞伎「三人吉三廓初買」黙阿弥)







それから、鯨。
鯨などは、おそらく福岡にあがるもの、ではなかろう。
しかし、東京で食べるものとは大違い。
三〜四種類ほどの部位が出たが、鮮度が違うのか、
柔らかさ、旨み、含めて、そうとうに、うまかった。






再び白子。今度は焼いたもの。
穴子白焼き、毛蟹。






にぎり鮨で、鯛、まぐろ赤身、炙った平貝、
さより、鰤、やりいか。


東京人の味覚では、酢飯の味は、やはり、あまめ、
で、あるが、驚いたのは、やりいか。





連れてきてくださった、社長さんも自慢されていたが、
いか、に関しては、福岡はそうとうに、レベルが高い。


やりいかは、東京などでは、普通、鮨やでは、
煮いか、といい、少なくとも、ボイルをする。


それが、こちらのものは、生で一杯、まるまる使い、
一つのにぎりにしていた。これがあまいこと、
柔らかいこと。
これも、生まれて初めての体験、で、あった。


うまかった。



食い物はそんなところ、なのだが、
九州というところ、やはり、人が、よい。


人がよい、というのは、ただよい人、という意味ではない。
ちゃんとしている、と、いうこと、で、ある。


よく、九州の女性は、男を立てる、などというが、
女性に限らず、九州の人と接すると、
日本人がなくしてしまった、筋(すじ)、というのか、
折り目の正しさ、と、いうのか、そういうものを、
社会として、まだ持っているように思うのである。
例外もむろんあろうが、平均値とすれば、まだまだ、
レベルは高かろう。


街を歩いていたり、あるいは、こうした飲食店で、
あるいは、仕事で接する人々から受ける印象として、
そのように思うのである。


日本の他の地方では感じない、人に接した時の気持ちのよさ、を
感じる。
(日本の他の地方と比べ、歴史的な背景なども影響している
の、かもしれない。)


しかし、九州の人と酒を呑むのは、なかなかたいへん、で、ある。


むろん酒、自体にも強いし、呑んだ相手が社長さんであり、
いい加減なことを言おうものなら、張り倒されかねない
(まあ、実際にはそんなことはなかろうが)ような、
そんな気持ちで、呑んでいたわけである。
(しかし、むろん、気を使っていただいており、
ご馳走をしていただいた、のである。)


そんなこんな、ヘロヘロで、飛行機に乗って、
帰京。



そんな一日、ではあった。





追記


この件、複数反響をいただいております。
(個別に返信はいたしません。)


白子は、ふぐではなく、たらではないか、ということ。
これは、今となっては、確認の術(すべ)がないので、
そういう情報があることのみ追記します。


また、白魚は、シラウオではなく、この時期の福岡では
シロウオではないか、とのこと。
これは、ご馳走をしていただいた、社長さんがいわれていたことで、
私の聞き間違えである可能性もあり、また、社長さんの記憶違い
であるかもしれず、私自身では確認の術(すべ)がありません。
まあ、本当のことであろうと、書いたものであることを追記いたします。


また、当地は私の地元ではありませんので
どこの店であるかは、あえて書いておりません。



さらに、蛇足ですが。
この文章は、私、断腸亭錠志個人の趣味と、責任で書いており
客観的、公平無私な情報発信を目的としてはいません。
(細かく調べて書く場合もありまた、そうでないことも
あります。私の日記ですから。)


また、毎度、書いていますが、メール等お送りいただく場合、
初対面の挨拶として、自分はどこでなにをしているなに者なのか、
年はいくつなのかなどを、明らかにすることは、
他の人は知りませんが、私は、社会人として最低限の常識である、と考えます。
(少なくとも、私は明らかにしていますので。)


また、その上で、なにかを、主張されるのであれば、
論拠、出典、(あるいは、自分は料理人である、魚やである、などなど)、は
明記してしかるべきと考えます。