浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



末広町・御料理・花ぶさ

12月18日(金)昼


さて。


外神田、末広町の日本料理の花ぶさ。


これは、あまりにも有名な、池波レシピ。
池波正太郎先生が最も足しげく通われた店、の
一つ、で、あろう。


花ぶさについて、先生は、様々なエッセイに書かれているが、
『戦前の東京の心意気をしのばせる』ところ、と、
(「散歩のときなにか食べたくなって」新潮文庫
いう。


私、実は、この店には、いったことがない。


池波先生の有名な行きつけのところでも
いったことがないところは、実際は、ここだけではない。
私なりに、それぞれ、理由があって、いっていないのだが、
ここは、敷居が高そう、あるいは、自分はまだ
この店には、似合わなそう、というようなことであった。


ちょいとした理由があって、
(正式に決まれば、また、ここでお知らせしたいが。)
今まで、行っていない、あるいは避けていた、
池波先生の行きつけだったところも、回ってみなくては
ならなくなった。


と、いうことで、花ぶさ。


今日は午前、王子神谷の事業所で打合せ。


花ぶさは、ランチもやっている。
それも、そこそこ安い、という評判。
また、正月用のお節も、作っているようで、
今年は、ここのにしてみようか、と、も
考えた。


王子から市谷のオフィスへ帰る途中、
ちょいと、回り道になるが、昼飯を食おう。


京浜東北線で王子から戻り、御徒町
御徒町駅南口から歩く。


場所は、ちょっとわかりにくいかもしれない。
中央通りと蔵前橋通り、末広町の交差点の
北西の一画。


交差点から北へ3本目の路地を西に入り、
一本の細い路地の次の路地。
(つまり二本目。)


あった。


間口、二〜三間と、小ぢんまりとした、
印象。


店の外には、ランチのメニューも出ている。
格子を開けて入ると、様々なメディアにも出ている、
白いカウンター。
その向う側は、すぐに調理場。


にこやかに女性が、迎え、一人、というと、
コートとマフラーを預かってくれて、
カウンターに座る。


ランチのメニューは1000円、1500円、
焼き魚、煮魚、その他、色々。
ランチの花ぶさ膳というのが、有名だが、
高価なせいか、これは目立つところには、書かれていない、よう。


先生縁(ゆかり)のメニューと思われる、
えび真薯と鯛茶漬け、1500円、と
いうのにしてみよう。


カウンターを見渡すと、先客は二人。
テーブル席もあり、ここに四人組みで、埋まっている。


階上の座敷にもお客が入っているようである。


調理場の一番手前で仕事をされているのが、
板長さん、で、あろうか。


板長さんは、池波先生と馬が合った、という
大女将のお孫さんらしい。


少しあって、きた。





丼入りのご飯と、胡麻だれがからめられた、
鯛の刺身。
えび真薯ののった、籠。


青物の胡麻よごし、お香こ。
熱い出汁の入った、急須。


鯛茶漬け、と、いうのは、先生はお好きであった、
と、思われる。
しかし、私などは、あまり縁もなく、
食べ慣れたものではない。


お姐さんに一応、食べ方を聞いてみる。


鯛は、もちろん、そのまま召し上がっていただいても
いいのですが、ご飯にのせて、お出汁かけて、
しばらくふたをされると、よいかと、、。


と、いうので、まずは、鯛をそのまま食べてみる。


鯛茶漬けというのは、胡麻だれが、定番なのかどうか、
食べた経験が少ないので、わからない。


胡麻胡麻だれで、口当たりは濃厚だが、
味付けは、あっさりしている。


次に、全部、ご飯の上にのせ、出汁を注ぎ、
いわれた通り、ふたをして、しばらく置いてみる。


その間に、えび真薯を食べてみる。
むろん揚げたて。
ほかほかで、うまい。


もうよいかな。


ふたを取り、添えられている、白胡麻、あられ、海苔を
まぶして、食べてみる。





ふむふむ、初めて食べる味、で、あろうか。
胡麻だれと出汁の塩梅がよいのだろう。
さらさらと、食べられる。


食べ終わると、甘味。
小さな、白玉のぜんざい。





池波先生は、呑んで、たらふく食べた後にも
甘味、は、欠かさなかった。


白玉一つ、ほんのちょいとした量のぜんざいであるが、
甘すぎず、丁寧に作られているようである。
私も、本来は、甘いものもきらいではない。


うまかった。


以前あった、敷居が高そうというイメージはまったく払拭(ふっしょく)された。
温かく、くつろげるところ、で、ある。
むろん、味も一流、なのでろう。


立ち、コートを着て、入口脇で、お勘定と、
お節も二人前、予約。この勘定も済ませておく。


受け取りは、大晦日


毎年、神田のまつやまで、予約した年越しそば、と、
この近所だが、広小路のうさぎや、で、どらやき
買っているが、この場所はその途中で、ちょうどよい。


お節もたのしみ、で、ある。








ぐるなび


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