浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



本郷東大正門前・喫茶ルオー

3月4日(水)昼


さて。


今日は、午前中、王子方面にあるの社内の研究所で打合せ。


昼過ぎ、終えて、市ヶ谷まで南北線で帰社。


、、なのだが、昼飯、で、ある。


いろいろ、考えたのだが、なかなか、思い付かない。


途中下車、か、、、
王子、駒込、、、?


東大前!


カレー、でも食うか。
東大正門前の、ルオー。


東大、というのは、大学入試のその昔、
共通一次で、駒場へ試験を受けにいった、
ということ以外、縁は、皆無。
(高校が中野区だったので、共通一次駒場
東大教養学部だったのである。)


こちら、本郷には入ったことすらなかった。
昨年、本郷で開かれるとある学会にくる機会があり、
安田講堂やら、学食やら、キャンパス内を歩き回った。
そのついでに、この正門前にある、ここの店に初めて入り、
有名なカレーを食った。


ここは、一説には昭和27年(1952年)の創業という。


今から20数年前、私が高校生の頃。
今のように、東京でもインドカレーのような店も
多くはなく、カレーの有名な店というと、神保町だったり
茶店をルーツとするところが少なくなかった。
(神保町、ボンディー、エチオピアなどがそれにあたる。)
雑誌などで、東京のカレーというとここは必ず登場していた。


おそらく、昭和30〜40年代、学生街の喫茶店→安くてうまい、
そして、当時、ちょっとおしゃれなメニューというような位置付けで
茶店だが、ちょっとひねったうまいカレーを出す店、というのが
出てきたのであろう。
(まあ、ちょっとひねったといっても、
今から考えると、“日本のカレー”の範囲は越えていなのだが。)


ともあれ。


南北線の東大前で、降りる。
この駅で降りたのは、始めて、で、ある。


出たところは、東大前、とはいいながら、
本郷通り農学部のはずれで、随分と北側、で、ある。


ちょうど、ここは、駒込追分(むろん今の地名ではないが)。
(そうである、ここはもう本郷ではなく、既に駒込、で、ある。)


今の、本郷通りと(旧)白山通りの分岐の交差点がある。


東大の脇を本郷通りが走り、言問通りの交差点、
そのすぐ北に左に屈曲する分かれ道、で、ある。
白山通りは、中山道本郷通りは今は、王子までいき、
その後、北本通り、荒川を渡って、川口、と、岩槻街道
なっている。


江戸の頃は、この岩槻街道は、将軍様が日光参詣に使う、
日光御成街道と呼ばれ、幸手宿で現日光街道と合流する。


この角、本郷通りに面して、酒屋さんがある。
古い町屋で見たところ、梁の太さから、震災後の建築のよう。
ここの店は江戸から続いているらしい。
また、この場所には、文京区の史跡になっているらしいが、
日光御成街道の一里塚があったという。
(今、測ってみると日本橋から、4.1km。まあ、一里である。)


江戸の地図。



モノクロで、鮮明なものではないが、このあたり、で、ある。
ご存じの通り、今の東大は、加賀中納言前田家。
これを見て、おもしろいのは、水戸家、本多家、阿部家、
それから、御先手組の組屋敷、など、親藩譜代の
有力家と幕府の先鋒隊が周りを取り囲んでいること。
やはり、外様の最有力藩のお目付け、で、あろう。


また、中山道側を少し北へいったところに
片町というのが見える。駒込片町(かたまち)。


これは先日、柳橋の美家古鮨のところに出てきた、
御蔵前片町、など、江戸にもいくつかあった片町の
一つ、である。
今でも京都などはそうだが、本来、町は、通りに面した
両側が一つの町、という考え方をしていた。
例えば、この近くでも、本郷一丁目からはじまり、六丁目まで、
本郷通りに面した両側が同じ町内。


これに対して、武家屋敷などの多い城下町では、
片側は武家屋敷で町屋はなく、片側だけの町、というので
片町、と呼ばれる町が多く存在したのである。
(御蔵前片町の向かい側は、幕府の御米蔵、で、ある。)


今、この追分の交差点の西側は、西片という町名である。
これはもともとは、上の江戸の地図にあるように、片町は、
中山道の東側だけにあり、片町であったわけだが、
明治に入り、両側を片町にする、という妙なことがおこり、
東側を東片町、西側、今の西片側を、西片町とした。
そしてその後、町名として、本来の片町であった東片は消え、
向丘となり、西片だけ残った、と、いうことである。
(よくよく考えると、そうとうに妙な話、で、ある。
まあ、当時駒込片町といういい方が広く定着していたから、
なのであろう。)


さて、東大の正門前、ルオー、で、ある。


入ると、前にきた時には、禁煙ではなかったと思う、のだが、
入ってすぐのテーブルは禁煙。


ちょっと、困った私の顔に、店のおかあさんが気が付いたのであろう、


奥は大丈夫ですよ。


と、いってもらった。


一番奥のテーブルに座る。


まよわず、カレー、ミニコーヒー付き、950円也、を、
頼む。


待っている間に、メニューを見ると、
コーヒー380円。
今見ると、安いように思われる。


東京では、ドトールのような、セルフサービスの
コーヒーショップがたくさんできて、おり、
これらは一杯200円ほど。
そして一方、ルノアールだのはチェーンの
茶店は、500円近くになっているだろう。


昔の個人営業の喫茶店というのは、
数はそうとうに減っている。
(別段、私自身は、こうした昭和の喫茶店にそれほどの
思い入れがあるわけではないが。)


カレーがきた。




ご飯の盛りが、大きめ、ではなかろうか。
東大とはいえ、学生街だから、で、あろうか。


このカレー、メニューには、セイロン風、と
書いているが、なにがセイロン風なのか、
よくわからない。


いわゆる、さらさらの(もしくは、最近はやりの
ギーがたっぷり入ったこってりの)スパイスのきつい、
インドカレーでもないし、洋食やで作る、
欧風カレーとも少し違う。まあ、どちらかといえば、
普通のルーのカレーに近い味、と、いった方がよい
のかもしれない。


レシピはどんなものなのか、わからない。
わからないが、辛味もそこそこあって、
なかなかうまいカレー、で、ある。


食べ終わり、コーヒーを飲んで、一服


周りのお客、会話を聞いていると、
やっぱり、東大関係の人々もいる様子。


カレーもうまいし、居心地のよい
“喫茶店”で、ある。





ルオー
TEL:03-3811-1808
住所:東京都文京区本郷6丁目1−14