新橋烏森の鮨や、しみづ。
昨日は、つまみ、まで。
今日は、にぎり。
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最初の握り。
昆布〆です、と出された白身。
平目ですか?と、聞くと、
甘鯛です。と、親方。
ほほ〜。
祇園でも出た。
逆移入、で、あろうか。
ねっとりとしたうまみで、ある。
と、もう一つ。
ここの、にぎり、に、ついて。
ここのにぎりは、酢飯が赤酢という、昔から江戸前鮨で
使われていた酢ということで、見てわかるほどの色が付いている。
また、味も多少濃い。
(本来、赤酢を使ったわけは、米酢よりも安かったから、という。
赤酢というのは、酒粕を三年ほどねかせたものから作るらしい。
濃い味好みの江戸人には、ちょうど合ったということであろう。)
さらに、にぎりの大きさ。
やはり、この系統らしく、大きめ。
祇園まつもとよりも気持ち大きいかもしれない。
この大きなにぎり、と、いうのも、
“正統江戸前”の流れ。
天神下一心も同様である。
(ただし、一心は頼めば、飯少なめに握ってもくれる。)
祇園まつもと、の、ところで書いたが、
大きい、と、いうのは、絶対的な酢飯の大きさではなく、
ねたとの相対的な比率がむしろ、問題のような気がする。
あくまでも、刺身を食うのではなく、
酢飯と一体になって、うまい、にぎり鮨である。
ただ、江戸前正統だから、単なる伝統の継承という意味で、
にぎりは大きめ、と、いうことは、また、違うのであろう。
昔の大きさでは、現代人にはお腹がすぐに一杯になってしまう。
そこで、全体の大きさは昔よりは小さくしても、
ある程度、ねたと酢飯のバランスで、相対的に一般ものよりも
酢飯は大きめ、というのが、現代においては、
うまいにぎり鮨、なのでは、と、考える。
ここのにぎりも、そういう方向であろう。
さて、次。
まぐろ中トロ。
前に書いたように、産地は聞かない。
比較的熟成が進んで、小なれたあまい味。
小肌。
魚の表面、皮に、包丁目が数本入っているだけで、
特に、凝った握り方はしていない。
比較的、酸っぱ味が勝った〆具合である。
あおりいか。
これはノーマル。
厚みがあり、ねっとりと、うまい。
赤貝。
これも、ノーマルだろう。
普通にうまい。
炙ったぶり?。
ぶりです、と、いって出された。
思わず、ヅケですか、と、聞いてしまった。
これには、答えてくれなかった。
柵から切っている親方の手元が見えたのだが、
柵の表面はちょうど、まぐろのヅケのように
火が通っているように見える。
ぶりなので、切っても、中の色も薄いベージュで
かわりが少ないので、よくはわからない。
いわゆる霜降りなのか、焼き霜、という、焼いて
霜を降る方法なのか、わからない。
ともあれ、表面に軽く火を通してある。
寒ぶり、で、あろうから、強すぎる脂。
これを、緩和するため、で、あろう。
ヅケですか、と、聞いてしまったが、
まぐろヅケのように、なにか別の味を付けているのでは?
とも思ったのではあった。
(ひょっとすると、軽く〆てもある?ような気もしたが、
これはまあ、よくわからなかった。)
煮はま。
これもノーマル。
別段珍しくはないが、正統江戸前ねた。
先に書いたが、やはり、甘いたれ、が、うまい。
海老。
少し前から、右側のコンロの上の大きな鍋のふたの上に
剥いていない海老が数本置いてあったのが、気になっていた。
むろん、温度を保つため、で、あろう。
冷たくなった海老はパサパサになり、いけない。
むろん、茹でてすぐ、の熱いままでも、いけない、のであろう。
観音裏の一新は、出す時間を見計らって、
茹で始め、さらに、ある程度見えるところで冷まし、
にぎっている。
大きな海老を、やはり頭まで使い、にぎる。
そして、出す前に、包丁でトーンと、リズムよく切って
客の前に出す。
うまい。
ここまで。
若干、順番は怪しいのだが、ラインナップは
こんなところだったと思う。
ここまで、ですが、
なにか、お好みがあれば。と、親方。
じゃあ、というので、他の人に出ていた、
春子(かすご)と穴子を。
春子は、なぜだか、内儀さんと二人分で
半分ずつ、切って出てきた。
(ねたが切れそうだったのか、、?)
小肌でも感じたが、やはり酢の味が強め。
おそらく、ここの特徴なのだろう。
穴子。
これも、ここの特徴のようである。
やっぱり二つに切って、一方は甘いたれ付き。
もう一方は、塩。
(ひょっとすると、祇園でもこうして出ていた、
のかも知れぬが、今から考えると、けっこう
酔っていたのかも知れない。よく覚えていないのである。
おそらく、弟子筋なので、同じものであろうが、、。)
甘いたれの方はまあ、普通なのだが、
塩でもいける煮穴子。
ふーむ。これは、ちょいと、乙、な、もの、である。
終了。
お勘定。
二人で、ビール2本、お酒一合。
32000円。
どうであろう、安いのでは?。
最初に時間を切られたからではなく、
なんとなく、ぐずぐず、長居をする空気ではここは
ないようである。
ごちそうさま、おいしかったです、と、
出る。
若い衆が一人、見送りに外まできてくれて、
頭を下げる。
東京でこれをしてくれるところは滅多にない。
他の客でもしていたので、きまり、なのであろうが、
恐縮をしてしまう。
雪駄を引きずり、路地を曲がって、新橋の街へ出る。
にぎりはむろんきれいだが、刺身などは
むしろ、実質本位。
どちらかといえば、無口な親方。
左側にいた3人組が、勝手に喋っていたので、店は
そこそこ賑やかだったが、右の3人、それぞれ男性1人できている、
は、静か。
ほんとうは、静か、な店なのかもしれぬ。
しかし、居心地は、むろん、わるくない。
一回だけでは、むろんよくわからない。
二度、三度、裏馴染み、通って見えてくることも
多い。
新橋というのは、私には、ついでにくるところでもないが、
また、きてみたくなったことは、
間違いない。
TEL:03-3591-5763
住所:東京都港区新橋2丁目15−13