12月20日(土)夜
今日は昨日の続き。
向島のふぐ、はしもと。
刺身まで。
12月20日(土)夜
刺身を食べていると、から揚げ。
から揚げ、というのも、うまい。
ふぐ料理の中でもそうとうにうまい。
ふぐは、熱を通すと、コラーゲン質が際立つ。
これがプリッとした食感になる。
魚のから揚げ、というのもいろいろある。
同じようなコラーゲン質だと、おこぜ、なんという魚を思い出す。
おこぜ、も、うまいが、ふぐはもっと上品。
淡白でありながら、うまみも豊富。
ビールからヒレ酒にかえる。
ふぐやのたのしみは、これ、で、ある。
ふたをした、湯呑み、で、出てくる。
湯呑みがそうとうに熱いので、ここのは
竹の網がかぶしているもの。
ふぐやには、テーブルに店の名入りのマッチが常備されている。
これは鍋のガスコンロをつけるため、ではない。
今時のガスコンロは、ここもそうだが、自動点火である。
このマッチは、ヒレ酒に火をつけるため。
ふたを取って、マッチを擦って、ヒレ酒から気化した
アルコールに点火。
アルコールを飛ばす、というようなことなのであろうが、
実際のところ、それほど微妙なものでもなかろう。
まあ、ファイヤーセレモニー、と、いったところ。
しかしこれが、ヒレ酒のたのしみのうちの大切な一つ。
中には、熱くした日本酒に炙ったふぐのヒレが入っている。
ヒレ酒、と、いうのは他にどんな魚でやるのだろう。
わからぬが、ふぐのヒレ酒は、うまい。
熱い酒、こうばしい香、うまみも出ている、ようにも思う。
これは実際のところ、かなりうまく、いくらでも呑めてしまい、
あぶない、のである。
刺身を食い終わると、鍋、で、ある。
骨付きの身と豆腐、白菜、ねぎ、春菊が大皿で運ばれる。
(皿の写真は、撮り忘れてしまった。)
骨付きの身、と書いたが、骨付きでない身を一緒に出す店もある。
いや、そちらの方が多いかもしれぬが、ここは、皆、骨付き。
なぜ骨付きの身を鍋に使うのか。
から揚げのところでも書いたが、
骨と身の間に、コラーゲン質があり、これが柔らかくなり、
また、鍋のつゆに溶け出してくる、ということであろう。
従って、比較的よく煮た方がよいだろう。
身は全部入れ、野菜は白菜の芯、太く切ったねぎから。
煮えてくる。
煮えてきたら、春菊なども入れる。
うまそう。
呑水(とんすい)にぽん酢しょうゆ、もみじおろし。
ねぎもたっぷり。
やっぱり、ふぐは鍋にとどめを刺す。
なん度も書いている、コラーゲンと、淡白だがうまみのある身を
味わい尽くす。
豆腐もうまい。
どんどん食べる。
二人前だが、量もたっぷりある。
うまい、うまい。
食べ終わると、最後のぞうすい。
タイミングを見て、お兄さんがくる。
ここは一度鍋を下げて、調理場で作ってくれるようである。
やっぱり、ぞうすいは、まかせた方が、うまいものができよう。
テーブルで作っても、やってもらった方がよい。
かき混ぜすぎない玉子の加減を考えるのは、
どうせ酔っ払ってもいるし、めんどう、で、ある。
よい具合にぞうすいが出来上がった鍋が再度運ばれる。
取り分けて、
食べる。
ほんの少しの塩味がついているだけ。
味が足らなければ、ぽん酢しょうゆ入れてください、
と、お兄さんがいうが、やはり、これは
このまま食べるべきである。
鍋のつゆに出ている、ふぐの身のコラーゲンと
うまみは、デリケートである。
薄い塩味でじっくりと味わおう。
しみじみと、うまい。
この味は、やはり、東京の味覚ではない。
濃い口しょうゆに慣れた東京人の舌は置いておいて、
ふぐのうまみに集中する。
香もあるように思う。
うまかった、うまかった。
ふぐフルコース、まさに、堪能。
勘定。
鍋で暑くなったので、脱いでいた羽織を着、紐を結び、
雪駄を突っ掛け、出る。
夜の向島。
昼間も暖かかったが、夜も暖か。
通りに出て、タクシーを拾い、元浅草の拙亭まで、帰宅。