浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



カンパチ

dancyotei2008-10-09

10月5日(日)夜


さて。


上野黒門町のとんかつや、本家ぽん多を出て、
毎度お馴染みの吉池の魚売り場へ向かう。
が、その前に、隣のフレッシュネスバーガー
酒も入っているので、コーヒーを飲んで、一休み。


吉池に入って売り場を見てみると、、、


ん?小さいが、カンパチが、ある。
大きいもの、あるいは、刺身用に柵や、切り身に
なっているものは見たことがあるが、
小さいもの一本は珍しい。


子供であろうか。
500円、と、ある。
安いのか?


聞いてみると、天然、という。


どんなものかわからぬが、買ってみようか。


内儀さんは買い物をしていく、というので、別れ、
一人で帰宅。


ふと、思い立ち、刺身包丁を買いに出ることにする。
今まで、ここにも書いているが、刺身包丁というものを
使っておらず、刺身も出刃包丁で切っていたのである。


鯵やら、であれば、そうそう、きれいに切れなくとも
大差はなかろうが、今日のような、ちょっと
かしこまった魚は、やはり、刺身包丁の方がよかろう。


一説には、切り口、切れ方で、刺身の味は、
そうとうに違う、ともいう。
(素人が切っても、違うのかどうかは謎だが。)


日曜日でやっているかどうか、多少危ぶむが
合羽橋へ再度自転車で、出る。


新堀通りに出て、菊谷橋の交差点を渡り、合羽橋道具街。
基本的に、合羽橋のほとんどの店は、日曜休み。


だが、最近は、一般の人を想定してなのか、
プロも日曜休みで、買い出しに来るのか、
わからぬが、多少営業しているところも増えているような
気もする。


包丁を扱っているのは、ちょうど、合羽橋合羽橋
真ん中の合羽橋本通りを右(浅草側)に入ったところに
二軒、向かい合ってある。
先日、ぎんぽをさばくのに、目打ち、を買ったりしている。


来てみると、ここはやっていた。
改めて、売り場を見ると、刺身包丁(柳葉包丁)の高いことにびっくり。
上は、きりがないようで、安くとも、6〜7000円から。
まあ、プロのもの、そんなものであろう。


素人に、そんなものはいらなかろう。
また、和包丁であるから、鉄(鋼)である。
今使っている、出刃も鉄で、使い終わるとすぐに洗い、
よく拭いて乾かしておかないと、簡単に錆びが出てしまう。


見ていると、家庭用、と書かれている、ステンレス、
それもヘンケル製の、刺身包丁があった。


これは格段に安く、3000円ほど。
しかし、刺身包丁で、ドイツ製のヘンケルというのは、
ちと妙だが、見れば、一応片刃。
(洋包丁と和包丁の決定的な違いは、ここである。)


まあ、一先ず、これでよかろう。


買って帰宅。


まず、少し、研いでくださいね、と言われたので、
砥石を湿らせ、研ぎ始める。
ついでに、家の包丁を全部研ぐ。


なんでもそうだが、包丁は切れなくては駄目である。
いや、切れなければ、気持ちがわるい。
薬味にするねぎなどを切るときに、ぼそぼそとしてしまうのは、
どうもいけない。


全部で、5〜6本であるが、出刃も含め、研ぎ終わる。
気持ちがよいものである。


さて、これからカンパチにかかる。





こんな感じ。


その前に、カンパチについて少し調べてみた。


いつものぼうずぼうずコンニャク氏の市場魚貝類図鑑


1mを越えて、大きくなるが、
子供は、「汐っ子(しょっこ)」といって、
小さくとも、脂があるとのこと。


これは、期待が持てるかもしれない。


出刃で、おろす。





なぜか、吉池で、腹は出してあった。


三枚。


骨も、頭も、出汁になるであろう。
取っておく。


おろしても、20cm程度はあり、
子供なのであろうが、小さくはない。


皮は厚そうなので、尻尾から、包丁を入れながら引く。
真中から、半分にし、各1/4のサクにする。


さて、ここでやっと、今日買った、刺身包丁の登場。
本当に、ここだけしか使わない。
なんとなく、これだけしか、使わないのは
もったいないようである。


しかし、切ってみると、さすがに、切りやすい。
当たり前だが、出刃包丁とは大きな差で、ある。


左手で身を押さえ、上から下へ、すーっと引くと、
気持ちよく、真っ直ぐ切れる。
(あたりまえだ。)


並べ方がいま一つ、で、あるが、
切り口は、きれいに切れた。





さて、ビールを開けて、食べてみる。


ふむふむ、ハラスの部分などは、随分と脂もある。
身もシコシコ。
十分にカンパチらしい、味で、ある。


だが、ちょっと、生ぐさいような気もするが、、
鮮度、なのか。
いや、確かな記憶ではないが、カンパチは
寝かした方が、うまい、というようなことを
聞いたような記憶も、あるような、、。


(内儀さんは、生意気にも、首をひねっている。)


しかし、思うに、カンパチというのは、
こうして、刺身で食うよりも、
にぎり鮨に合っているのではなかろうか。
なぜだかわからぬが、なんとなく、そんな気もしなくはもない。


ともあれ。
二人で食うには、量が多く、半身、残ってしまった。


残りは、翌月曜、寝かしたもの、で刺身、と、
私は考えてもいたのだが、内儀さんは、塩で焼いて
しまった。
まあ、これはこれで、脂もあって、そうとうに
うまかったのでは、あったが。