浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



sake bar大枡〜浅草考察その2

dancyotei2008-07-10

さて、今日は昨日の続き。
浅草、浅草寺の雷門そばにある、sake bar大枡、のことから
浅草というところについて考えている。


浅草には、東京観光の観光客が訪れる
伝統的な日本っぽいもののある街という顔。
あるいは、明治から戦後まで演芸演劇が栄えた
東京一の盛り場だったという顔。
また、花火や和食の老舗のある「東京下町」の代表、
という顔。
今、外から見た、浅草にはこんな三つの顔があるように思う。


私も、この日記で浅草のことを書く場合も
これら三つの文脈のどれか、で、書いてきたように思う。


しかし、sake bar大枡、は、この三つのどれにも
含まれない。
現代の普通の浅草、とでもいえばよいのか、
そんな店のように思われる、と、昨日書いてきた。


浅草というところは、
むろんのことだが、東京の普通の繁華街としての顔も
持っている。


マクドナルドもあれば、ドトールコーヒーもあるし、
ユニクロも、TSUTAYA、もある。


いろんな歴史や、いろんな顔を持ってはいるが、
今、浅草に住んでいたり、働いていたりする人の
普通の日常というものもある。


少し前だが、千束のおでんや、大多福の、
カウンターで一人でおでんをつまみながら、
三代目さんなのか、四代目さんなのか、
私と同年輩か、少し下の、若主人と思われる方と
話をしたことがあった。


この方はむろん、この地浅草で、生まれ育ったのであろうが、
先ほどから書いている、いろんな顔を持っている浅草も
よいのだが、僕らくらいには、少し不便ですよね、
といっていた。


一つは、夜が早いこと。
老舗や、観光客相手の店が多いので、浅草という街は
全般的に、9時すぎると閉めてしまう店が多い。


また、車。
これはまあ、都心に住んで車を持っている人は
皆そうだと思っていようが、いわゆる、カー用品店というのか、
オートバックスのような業態が、近くにない、ということ。
こうした業態は、浅草近辺では、北千住か、亀戸あたりまで
いかないと、ない。
これに類する業態だが、いわゆる、ホームセンターも
同様。あたりまえの話ではあるが、郊外型立地の業態は
むろん都心にはない。


若者ターゲットという意味で、レンタルCDTSUTAYA
これも、長らく浅草にはなかったのだが、
(地元民の要望に応えて?)数年前に
ロックスに開店している。


そういう意味で、地元に住んでいたり働いている“若め”の人々
向けに、浅草も少しづつ変わってきているのだろう。


今回取り上げた、saka bar大枡のような店は、
その代表なのかもしれない。


夜が早い分、チェーンの居酒屋などもあるにはあるが、
気は利いているが、構えずに、気軽に呑める店というのは
浅草には少なかったと思われる。


ある意味、現代の東京で、浅草という街は
特殊なところである。


東京東部、広い意味での東京下町、でも
別格で、あろう。


東京を代表する大盛り場であった往年の面影は、
今の浅草にはむろんない。
しかし、それでも、同じ下町の中心的な街である、
北千住、錦糸町、門前中町、(蒲田、も入れてもよいかな)
などとも、違う。


街とすれば、観光客も呼び込まねばならぬし
様々な「きれいな下町」を構成する老舗や、季節の行事も
欠かせないもの、ではあるし、浅草のアイデンティティーの
大きな部分を占めてはいるだろう。


そして、押上にご存じのように、新東京タワーができる、
というような話もある。


先日の、六本木ヒルズではないが、近年、
都心は再開発が活発に行なわれ、
いろいろなビルが建てられている。


しかし、これらには、東京に住んでいるものとして、
どこも同じような薄っぺらさを感じてしまう。


押上に新東京タワーができても、
浅草には間違っても、そういう薄っぺらい街には、
なってほしくないし、また、おそらくならないであろう
とも思う。


これから未来に向けて、
観光客にも、「下町」好きな人々にも、そして、
なにより、近隣を含めて、大人から子供まで、
地元に住み働いている人々にとって、浅草らしさを持ちながら、
東京下町を代表する、地に足の着いた、
本当の意味で魅力のある街になっていってほしい。

(では、現代における、その浅草らしさ、の中身はなにか。
これはまた別の機会に考えようか。)