浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



市谷左内町界隈と、麺や庄の その3

dancyotei2008-04-22


二回に渡って、市谷左内坂界隈について書いてみた。
今日は、麺や庄の、へ。



4月18日(金)夜


雨の中、左内坂の急な坂を、なぜか少し足早に、


とっ、とっ、とっ、と、降りていく。


どうであろうか、ここ、麺や庄のは、
オフィスに最も近いところにあるラーメンやの一つで、
会社帰り、月に、2〜3回以上は寄っているだろう。


夜は、10:00までやっている、というのもうれしい。


昼などは、もちろん、夜遅い時間でも、入り口前に
列ができていることもあり、やはり人気の店、で、ある。


こんな雨の日は、狙い目。


店の前に来ると、予想通り、列はなし。
しかし、ドアを開けて入ると、カウンターだけの店内は、
満席。


このカウンターは、ここの先代、有名になった、
カレーのパク森からのものである。
(いや、ひょっとすると、その前からのものかもしれない。
はっきりした記憶ではないが、パク森がここに店を開く前は
カウンターの天ぷらや、ではなかっただろうか。
パク森は、ここからは出て行ったが、駅の向こう、
靖国通り沿いに市ヶ谷駅前店として、ある。)


入口左側にある、券売機。
今日は、月替わりで内容が変わる、創作ラーメンにしよう。
今月に入って、売切れになっていることも多く、
食べられていなかったのである。


それから、焼酎のお湯割り。


券を買って、券売機の前にある、縁台に座り待つことにする。


と、すぐにあいた。


あいたカウンター、奥の方に座る。


今月の、創作ラーメンは、
「蟹味噌つけ麺〜北海仕立て」と、書いてある。


どんなものであろうか。


焼酎のお湯割りを呑みながら、待つ。


きた。





毎度のことであるが、ここの創作ラーメンは凝っている。
食べ方がなん段階かになっていることなども
多いのだが、今月もそうである。


まずは、味噌味のつけ麺。麺は細麺。
普通につけ麺として食べる。


次に、皿に添えられている、蟹味噌と蟹肉を
つけ汁に入れて、麺をつけて食べる。


そして、昆布酢(酢の中に細かく切った昆布を漬けてあるよう)を
つけ汁に加えて、酸味を利かせて、食べる。


最後に、別料金でバターライスをもらい、
つけ汁に入れて、汁かけごはんとして、完食、という。
これが、食べ方として、カウンターに貼ってある。


ノーマルにそのまま、つけて食べる。
ちょっと唐辛子の利いた味噌味。


蟹味噌と、蟹肉を入れてみると。
、、、これは、味、ということではなかろう。
蟹肉と、蟹味噌の風味が加えられるということであろう。
なかなか、うまい。


最後の、1/3。昆布酢なるものを少しずつ、
量を加減しながら、入れてみる。


これもよい。


さて、あらかた腹は一杯なのだが、
せっかくであるから、そのバターライスもいってみようか。


¥100を出して、頼む。





バターがのり、ご飯の表面に焦げ目がつけてある。


残ったつゆに入れてみる。





味噌ラーメンといえば、バター。


また、ラーメンの残り汁に、ご飯を入れるのは、
うまいもの、で、ある。
ここの創作ラーメンでは前にもあった。
メニューの設定からご飯を入れる、
というのを用意している、というのは、
やはり、勘どころを押さえている。


「北海味噌」と、貼り紙には書いてあるが、
味噌バターに蟹味噌の風味が加わって、うまい。


完食、で、ある。


ちょっと食いすぎ、で、あるが、
うまかった、うまかった。


毎度のことであるが、ここの主人は、年は20代と思われ、
若いのだが、たいしたものである。


毎月、月替わりで新しいメニューを考えるのは、
たいへんではなかろうかと思う。


ほんとうに、この人は、ラーメンが好きなのであろう。
いや、それ以上に、「味」を考えるのが、好きなのかもしれない。
(このあたり、やはり、天神下大喜と似通っている。)


時たま、え?、というようなものも、なくはないが、
大方は、はずしてはいない。


単に奇を衒うだけなら、簡単で、そういうところも
少なくない昨今の東京ラーメン事情ではある。


だが、大喜にしても、ここにしても、味に対するセンス、
味を思い描く能力というのか、そういうものも持っている種類の、
人、ではないかと思うのである。
Aというものに、Bというものを合わせると、こうなって、
うまいはずである、という。


(そういう意味では、今日のものなどは、
いたって、普通、想定の範囲の味の組み合わせ。
途中で味をかえて、楽しむ、というのは、サービス精神、
ということになるかもしれない。)


こういう、味を、それも独りよがりではなく的確に
思い描ける人は、そうそういない。


毎月、換えられるほど、ということは、このタイプの人には
凡人が考える以上にたいへんな作業ではなく、
きっと、どんどんと、色んなアイデアが湯水のように
湧いて出てくる、そうい人なのではあるまいか。
むろん、料理人、創作者としての産みの苦しみは、
あるのであろうが。


いずれにしても、たいしたものである。





住所 新宿区市谷左内町1
TEL 03-3267-2955



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