浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



上野藪そば


10月14日(日)第二食


第一食は飯を炊き、鶏のつくねを焼いて、食う。
鶏のつくねは、先日、玉子を入れてフライパンで焼くものを
作ったが、もう少し、焼鳥のつくね、に近いもの、と、
考えて、玉子はやめて、塩のみで鶏ひき肉を練って、
グリルで焼いてみた。たれも作り、多少それらしいものができた。


昼下がり、少し、落語も再開しようと思い、
ちびた下駄を履いて、稽古に出る。
(また、落語会をしたいとは思っているのだが、この分だと
いつになるのか、、。)


一度、蔵前方向に歩き、厩橋あたりまでいき、
再び戻り、今度は拙亭を通り越して、御徒町まで。
例によって、アメ横の魚屋を覗いてみようということである。


アメ横到着。


今日の魚屋。
なぜか、鯛が、大きいのから小さいのまでいろいろある。
鯛は、春から、夏が旬であったか。


牡蠣がある。
これは季節、で、ある。


加熱用のものが、大きなプラチックのトレーに入って、
例によって、¥500。


赤味噌の鍋にしようか。


帰路、海苔やのガードをくぐり、丸井裏。


小腹が減った。
またまた、そばや、で、あるが、
上野藪。


筆者、この上野藪は、どうも、こようと思って、くることは
ほとんどない。ついでに寄っていく、という場合がほとんど、
で、ある。


この界隈であれば、筆者の場合、どうしたって、
池の端藪の方に足が向く。


この二つの藪蕎麦の比較はおもしろいかもしれない。
この二店の違いは、いろいろあろうが、
まず、一番わかりやすい違いは、店の見た目、である。
池の端の方は、日本家屋。
上野は大きくはないが、鉄筋のビル。


これだけで、この前の翁庵ではないが、筆者にとっての、
蕎麦屋としての価値は大きく変わってしまう。


純粋に、味がどうだ、というのではなく、
なん回か書いているが、蕎麦屋に求めるのは、
雰囲気、居心地、だから、なのである。


まあ、筆者など、もともと、今、盛んに(趣味そばファンの間で?)
いわれるような、蕎麦粉がどうした、毎日石臼で挽かなければ、、
と、いったような微妙なことは、わからない。
まあ、東京下町の濃いつゆならば、そんなことは、はなから
考えるまでもないのかも知れない。
また、そこが、実は、趣味そばファンとは
根本的に相容れないところの本質かもしれない。


ちょっと、話がそれてしまった。
趣味そば論議ではなかった。


池の端藪 vs. 上野藪、で、あった。


やはり、池の端のあの、店の外観、畳のある座敷、
ちょっと緊張感のかる、店の中の空気。
お姐さんたちの、注文を通す声、などなど、
むろんメニュー、味もあるが、筆者には、池の端藪蕎麦に
流れている時間そのものが、どうも、たまらない魅力、なのである、


上野のミテクレは、池の端と比べれば、気安い、というところであろうか。
(ちょっと以前には、老舗然とした敷居の高い感じもあったが、最近は
あまり感じなくなっている。)


ともあれ、ふらっと、上野藪に入ってみる。


通されたのは二階。


お酒を、今日は比較的暖かいので、冷、で、もらう。





細かい話だが、池の端はお盆を置いてくれるのだが、
あれが、妙によいのである。
お盆の上に並べられた趣味のいい銚子と、箸と、そば味噌の小鉢。
一つ区切られた、自分だけの酒呑み空間というのか、
そのお盆の上が一つの完結した箱庭のような、
そんなもののような感じがして、愛しささえ憶えるのである。


そばは、軽くせいろ一枚。





こんな具合に、ぱっと呑んで、ぱっとたぐって、
さっと出るのが、よいかもしれない。


上野藪そば、筆者にとっては、そんな位置にある
蕎麦屋、で、ある。






住所 東京都台東区上野6-9-16
電話 03-3831-4728




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