浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



路麺・神楽坂そば/ワインバー・ル・トランブルー

dancyotei2007-05-23

5月23日(水)朝、夜


さて、今日は、自転車で会社まで、いってみよう。
理由は、途中、路麺に寄っていこう、ということなのである。


目当ては、水道橋三崎町の、名店、とんがらし、で、ある。


あたり前であるが、スーツ姿。
前のカゴにかばんを入れ、家を出る。


例によって、昌平坂を上がり、水道橋へ降りる。


後楽園の前で左に折れて、三崎町。
とんがらし、前、、、、。


げ、、やってない。


8時少し前。営業開始がなん時からだったのか、
確認してくるべきであった。
(実は、11時前)


さて、困った。
わざわざ、自転車できてみたのに、このテイタラク、で、ある。


どうしようか。


神楽坂、か。


外濠通り沿いならば、開いているところがあったはずである。


飯田橋へ出て、外濠通り、神楽坂下の手前、北側。
パチンコ屋やら、間口の狭い、飲食店が並んでいる一画。


よかった、やっている。


神楽坂そば、という名前であった。
この日記で書いたことはなかったが、来たことはある。


細い、うなぎの寝床のような店。


「おかあさん」と、いうような言い方がぴったりくるような
女性と、娘さんなのか、バイトなのか、若い女性の二人。


スツールに腰かけ、野菜かき揚げそば。





茹で麺。普通の天ぷらそば、で、ある。


食べ終わり、シャカシャカと、自転車をこいで、オフィスに向かう。




さて。



これだけでは、はっきりいって、この日記の一話分の
ネタにはならない。


この路麺、実は夜は、別の業態になるのである。
なんと、ワインバー。


業界では、こうした、一つの店舗で二通りの使い方をするのを


二毛作、というらしい。
昼は定食屋で、夜は居酒屋、といようなのは、
よくある例かもしれない。


しかし、朝から夕方までは、路麺、立ち喰いそば。
18時からは、ワインバー、というのは、なかなかないかもしれない。


神楽坂そばは、店の看板にも書いてあるが、
1966年、昭和41年、創業。
なかなか、古い。


昼は、文字通り、お母さんが路麺を営業し、
夜は、息子さんが、ワインバーをやっている。


もっとも、ワインバーをはじめたのは最近であるらしい。


じゃあ、いってみようか、で、ある。
この事実は知ってはいたが、入ったことはなかった。


20時過ぎ、仕事を終え、再び、自転車で神楽坂へ向かう。


店の前に立って、改めて見てみると、朝と同じ店とは思えない。


看板も替わり、濃紺に、LE TRAN BLEU という文字。


ガラスの扉は、同じであるはずだが、これすら
同じだとは思えない。
別段、変わった扉ではないが、それらしく見えるのが
不思議である。


開けて入る。


中は、アンダーな照明で、働いている男性も
黒いそれらしい衣装。


「一人」、と、いうと、「こちらへ」と、案内された
空いていた、カウンターの一画が、偶然であるが、
朝、そばを食った、席と、まったく同じ場所。


なにか、不思議な気分、で、ある。


とても同じ店とは思えない。
朝の光が差し込んでいた、店と、


「おはよう〜」「野菜天ぷら〜」
「ありがとうございます〜〜」


などという言葉が飛び交っていた店が、


「本日のワインは、赤が、イタリアの○○で、
ロゼが、、、、で、ございます、、、」


などという。


お客さんも若いカップルやら、女性の二人組みやら。
パスタや、チーズ、つまみもうまそうなものがある。


まったくもって、お洒落なワインバー。


不思議な店である。


“本日のワイン”赤をもらい、
つまみは、鴨レバーのブルケッタ。





レバーペーストには、ピスタチオが入っています」
と、いう注釈付き。
なかなか、うまい。





食べて、一杯で、出る。



ワインは¥400、ブルケッタは¥600。
〆て、¥1000。


安いし、半端な立ち呑みよりは、よっぽど気が利いていよう。
なかなか、おもしろい。


お母さんの路麺と、息子さんのワインバー。


まったく同じ店とは思えないが、本質は、
どちらも、同じよう匂いがしている。
そんなふうにも、思える。


店を出て、夜風に吹かれて、自転車で帰路へ。





HP