浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



冷しかつそばの季節?神楽坂翁庵


5月9日(水)夜


さて、唐突であるが、冷しかつそば、の、季節である。


いやいや、暑くなったものである。
今日の東京の最高気温は、なんと、28℃。


まったくもって、なんということであろう。
暑い日であった。


こう暑くなると、冷たいもの、で、ある。


さて、表題の、冷しかつそば、というもの。
なんであろうか。


知らない方には、だいたい、かつそば、自体が、
なんであろうか、であろう。


かつそば、とは、豚かつ、の、のった、日本そば。
そばに、豚かつをのせる、というのは、なんであろう。
かなりの、妙、さ、加減であろう。


神楽坂といえば、最近は、そうとうに人気の場所、らしい。
江戸の風情を残した、情緒あふれる街。石畳の路地、
料亭、花柳界、エトセトラ。


そんな神楽坂の、坂の下。
蕎麦屋、翁庵。創業は明治17年


まあ、料亭、花柳界、石畳の情緒、とは、ちょっと方向が違う
かも知れぬが、ここはここで、立派な江戸の気風を
今に(あっぱれ、今風にアレンジして)伝えている。


その翁庵の、看板メニューが、かつそば、である。


そして、暑くなると、その、豚かつ、を、冷してしまう、のである。


それが、夏の、神楽坂名物、冷しかつそば、なのである。


と、まあ、妙な、テンションで書き始めてしまった。


今日は、そういうわけで、暑かったが、
筆者は、外出もなく、一日、オフィスにいたため、
外気の暑さはわかってはいたが、汗だくにはなってはいない。


なんとなく、オフィスの喫煙室で煙草を吸いながら、
窓の外の青い空を見ながら、冷しかつそばの季節だなぁ〜、
と、思ったのである。


決めると、夕方から、楽しみで、待ちきれなくなる。


19時過ぎ、さくっと、オフィスを出る。


神楽坂下までは、今日は、歩こう。
外出もないし、歩かなくては。


坂を降りながら、落語を暗誦しはじめる。
稽古、というつもりではない。
軽く、口ずさむ、という感じである。


先週来の、トチリ、トチリが、嘘のようである。
こんな感じで、口ずさむと、軽やかに、セリフが出てくるのは
不思議である。


外濠通りに出て、左。真っ直ぐ。


20分ちょっとの噺の半分もいかないうちに、
神楽坂下の翁庵に到着で、ある。


自動ドアを入る。


「いらっしゃいましー」の声。


一番奥の空いているテーブル席へ
「こちらへどうぞー」と、案内される。


落語もつぶやきながら、
けっこう、ちゃんと歩いてきたので、汗は出る、
が、すぐに引く。


暑かったのであろうが、湿度は
真夏ほどはなかったのではなかろうか。
空気は、さっぱりしているようには思う。


座ると、おしぼりがきて、ちいさな冷奴と、


小さなマカロニサラダの、二つの小皿がくる。


そば焼酎の小瓶をもらう。



暑いが、やっぱり、そば湯割り。


呑む。


ここは、なん人かで呑んでいるのもいるが、
一人のサラリーマン、というのも少なくない。


律儀そうに正座をして、座敷でそばをすすっている
おじさんもいたり、どっかりと、あぐらをかいて、筆者と同じように
ミニのそば焼酎を呑んで、そばを食って帰る人もいる。


回転は、速い。


「ありがとうございまーーーす」


のお店のお姐さんの声を、なん度も聞ける。
呑みながら、これだよなぁ、『ありがとうございます』。
東京の蕎麦屋は、『ありがとうございました』じゃねぇーよなぁ。


などと、また、あらためて、思ったりする。


一瓶は、二杯で終わる。


お待ちかね、冷しかつそば、で、ある。


頼む。



薄いかつを食い、甘めのつゆ、細めのそばをすする。
また、かつを食い、そばをすする。


ふう。うまかった。


立って、勘定をして、、、




「ありがとうございまぁぁぁーす」






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