浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



浅草観音裏のこと+鮨・一新・その2

dancyotei2007-04-24

今日は昨日の続き。


4月21日(土)夜。内儀(かみ)さんの希望で、観音裏の鮨屋、一新へいく。


06年10月


昨日は、浅草花柳界のことから、銘酒屋のことやら、書いてきた。


この界隈というと、もう一つ、お富士さんの植木市であろう。


五月末と6月の末の土日であろうか、今年の正確な日程は
筆者、今、情報は持っていないが、五月六月になん日間か
この界隈で植木市が開かれる。


お富士さんこと、浅草警察の斜前にある、浅間神社
縁日である。


柳通り、それと交差する通りに、提灯などが掲げられ、
ずらりと植木屋が店を広げる。
草花もあれば、文字通り、植木もあるし、金魚やメダカなどの
魚もある。飲食のいわゆる縁日の屋台もでて、
なかなか、盛んなものである。
筆者も、植木は嫌いではないので、昔からよく覗く。
この頃は、ちょうど、下町はお祭りのシーズンであるが、
植木市もなくてはならぬ、初夏の浅草の風物詩、で、あろう。


そんなこんなの、浅草観音裏。


本来の主役である、料亭やら、芸者さんには筆者、縁はない。
したがって、知識もない。
興味がないこともないが、
投資をしたいほど興味があるかといわれれば、そこまでは
今はない、というところである。
いずれまた、そういう機会が、あるかも知れぬが
そのときまた、ということで、一新のこと。


一新は、浅草四丁目。
旧町では昨日書いた、象潟町、ということになる。


柳通りの西側、千束五叉路からきている通りの北側。
路地を入ったところ、で、ある。
北へ向かって右側。


入ると店は狭い。
きれいな白木のカウンター、同じく白木のねた箱があり、
その向こうに、つけ台。ご主人がにこやかに迎える。
予約席との札があるカウンターの真ん中、
ご主人の前に座る。


カウンターには先客がおり、ほぼ満席。
カウンターの中は、ご主人一人である。
前にきたときには、助っ人がいたこともあったが
基本的には、お一人なのであろう。
なかなか、たいへん、で、ある。
ここへきたら、ゆっくりと構えるのがよい。


瓶ビールをもらい、つまみからにしてもらう。
(握りだけだと、7〜8000円。つまみ付きだと、
その倍、くらいであろうか。)


お通しで、もずく酢。


続いて、蒸鮑。
これは、江戸前の仕事、で、あろう。
太助寿司でも、天神下一心でも、駒形の松波でも出る。


鶏皮で煮たもので、香りがつく。
柔らかく、うまい。


次に、まごち。
白身、で、ある。
なかなかうまい。


まごち、の刺身というのは初めて、、と、いうよりも、まごち、という魚自体が、
筆者、初めてかもしれない。
ご主人に「めごちとは違うんですか?」と、思わず聞いてしまった。


めごちといえば、江戸前天ぷらのねた、で、あるが、
似たような魚なのかと思ったら、随分に違うらしい。
種類としては、近いものなのであろうが、
まごちは、1m近くもなるような魚らしい。


たこ。煮たこ、で、ある。
すだちを絞って、出されたのは、初めて、で、ある。
柔らかく、さわやかで、うまい。


貝。鳥貝、青柳、みる貝の三種。
貝の季節であろう。
鳥貝は、むろん生で、みずみずしく、あまい。


中トロ。


どこのものかと聞いてみると、石巻だという。
初めてかもしれない。
脂の入り方は、大間のものに、似た感じである。
石巻のものは、築地にはあまり入らないらしい。


やりいか。


煮たもの、で、ある。
甘いタレをかけてある。
子持ち。
やりいかも、江戸前の仕事、で、あろう。


ここまでで、つまみは終了であるが、
随分な量である。
これだけでも、十分満足である。



握り。


小肌から。
ちょっと、軽い感じで、うまい。


赤貝。
貝は、いろんなものを、揃えている。


づけ。


中トロ。
握りでも、むろん、うまい。


さいまき海老。
さいまき海老とは、少し小ぶりな車海老のこと。
ここの、看板であろう。
有頭のままゆでて、見ている前で皮をむき、
握って出してくれる。


前にも書いていると思われるが、
茹でた海老といえば、江戸前の鮨では今でも
定番である。しかし、パサパサし、彩りぐらいのもので、格別うまい
と思ったことはなかった。皆さんもそうであろう。
ここのさいまき海老は、そんな感覚を、すっかり洗い流してくれる。
みずみずしく、滋味のあるうまい海老で、ある。


穴子
ここのものも、熊笹にはさんで、炙る。


煮浅利。
煮蛤ではなく、煮浅利。
小さな、浅利に横に包丁を入れ、開き、握る。
これも、江戸前らしい仕事であろう。


玉子。
なんというのであろうか、いわゆるだし巻きではなく、
名前はわからないが、松波でも出るが、カステラのように、
ふんわりと焼かれたもので、切れ目を入れ、
酢飯をはさんで出す。
ふわふわで、うまい。


〆は、海苔巻。
干瓢巻、で、ある。
正しい江戸前鮨の、〆、で、あろう。



腹一杯。



観音裏一新。よい江戸前鮨屋、で、ある。