浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



下関・岡本のうに

dancyotei2006-09-03

8月31日(木)夜


下関のうにやさん、岡本さん、からメールがきた。


読者の方で、憶えておいでの方はおられるだろうか。
毎年、筆者は年越しそばを、神田のまつやに事前に予約し、
晦日に買いにいくのを、楽しい年中行事として、
ここ10年以上も、続けている。


年越し


そして、その「まつや」で、いつも、その下関の「岡本のうに」瓶詰めを
買うことも、いつの頃からか、年中行事になっている。
(と、いうことは、年に一回しか、買わないわけであるが、、。)


うに


そして、その「岡本のうに」を販売されている、当の下関の岡本さんが、
このページをご覧になられて、ご丁寧にメールを下さった、
と、いうわけである。
(「岡本のうに」の岡本商店さんは大正10年創業で、
メールを下さった方は、その3代目の若旦那さん。)


毎度書いているが、このページで書かせていただいていいる、
飲食店やら、(数は少ないが)商品、は当のお店の許可を
いただいてもいない。まあ、勝手に書いている、という状態ではある。


数多くのお店を書かせていただいているが、
こうして、直接、メールなりで、ご連絡をいただく、
と、いうことは、ほとんどない。


やはり、ちょっとびっくり、そして、また、正直うれしいものである。


筆者ごときのページが、販売促進のお役に立っているかといわれれば、
客観的に見て、左程のことはなかろうかと思う。


が、やはり、うれしい。


何通か、岡本さんと、メールのやり取りをさせていただき、
うにの瓶詰め、のことが、少し詳しくなった。


前にも書いているが、筆者、うにの瓶詰めは、高価なものだが、
好物、と、いってもよい。
子供の頃から、好きであった。
酒呑みであった、私の爺さんの影響であったのか、自宅には
置いてあることが多かった。


亡くなった、桂文治師が、親子酒という噺のなかで
つまみ、うに、を出されていた。
筆者勝手に思っているが、(おそらく、間違いなかろうかと思うが)
この、文治師が、噺に出したうには、生うにではなく、
瓶詰めのうに、のはずである。
(東京で生うにを食べるようになったのは、最近、
少なくとも、戦後、ではなかろうか。)


どうも、筆者には、江戸っ子の酒呑みの、手がかからないが
乙で、ちょっと、贅沢なつまみ、そんなイメージなのである。
他には、なにもなし。うにだけを、なめながら、酒を呑むのである。
これはもう、筆者には、天国である。
(むろん、飯(めし)でもよい。)


東京でも、うにの瓶詰めは数多く売られている。
岡本さんの情報によると、山口県の生産量は全国の
約60%を占めているという。
うにの瓶詰めの本場、ということである。
なかでも、アルコール漬のうには、この下関が元祖であるという。
(筆者、前の記事で『アルコール(焼酎?)』というような
表記をしてしまったが、これは、間違いで、現在は、焼酎ではなく、
95度のアルコールで漬けられているという。
(しかし、戦前には、やはり、焼酎で漬けられていた時期も
あったようである。))


たくさん売られているうにの瓶詰めでも、
なかなか、うまいものは少ない。
むろん、値段もピンから切りまであり、数百円のものもある。
しかし、値段だけではなく、どうも甘いものが多い。


そこへ行くと、この、岡本のうには、キリッとさっぱり。
うまい、のである。
うにの瓶詰めは、これでなくてはいけない。


さて、そもそも、うにの瓶詰めであるが、なんというものなのか。
筆者、「練りうに」というような表現もしたことがあった。


しかし、「練りうに」とは『福井県に昔から「越前うに」というものがあり、
これは生うにをざるに置き、何度も塩を振っては水分を完全に切り、
最後に練り上げて造ります。これが本来の「練りうに」だと思われます。
「越前うに」は、爪楊枝の先でわずかを食するそうです。』


なるほど、そういうものもあるそうである。


そして、明確な規定ではないらしいが、うにには、
『うにの割合によって1.粒うに 2.練りうに 3.混合うに 4.うにあえもの』
と分かれるようで、「岡本のうに」は、粒うに、だという。


さて、歴史、で、ある。
アルコール(もしくは焼酎)漬けは古いものではないらしい。
うにの加工品としては当初は塩漬け(塩辛)であったという。
江戸時代後期、文化文政頃、こうした、うにの加工は
下関地区で盛んになり、北九州方面に売り歩いた。


そして、岡本さんは、
文久年間(1861〜1864年)に、外国人が歓談中に杯に
つごうとしたジンが誤って生うにの小鉢にこぼれて、
これを食べた人がとてもおいしくなったと人々に伝えた
というのが始まりとされています。が、他にも諸説あるよう
で実際にはよくわかっておりません。』という。


また、明治の末頃に『縫山和尚という人物』によって
考案され、『下関名物として全国に知られるようになった』
ともいわれているらしい。


今の、筆者が毎年買っている「岡本のうに」の「磯漬粒うに」は
下関市の北隣の豊北町、日本海に浮かぶ角島(つのしま)の
良質なうにを使っているという。
なかみは、馬糞うに9に対して、むらさきうに1。
(やはり、馬糞うにの方が、うまい、のか。原材料としての価格も
馬糞うにの方が、高いようである。)


そして、塩とアルコールのみで漬けて、『香りを楽しむのなら早いうちに』、
『芳醇の味を味わうには熟成作用が進む1年以上のものを』
ということである。(筆者の好みとしては後者である。)


最後に、岡本商店さんの、宣伝。


『9月30日(土)から10月9日(月)まで、新宿 高島屋にて
「ありがとう10周年!TBSはなまるマーケットおめざフェア(仮)」
(AM10:00〜PM20:00)に出店を予定しております。』


ということである。


ともあれ、「岡本のうにの瓶詰め」
価格は安くはないが、筆者には、うまいものである。







岡本のうに