6月20日(火)夜
焼き鳥が食いたかった。
まあ、それだけなのである。
ここは、千代田線・湯島駅そばなのであるが、
町名は、台東区上野一丁目。
旧町名では上野西黒門町。
(池波ファンの方なら、覚えておいでかも知れぬが、
北大門町の文蔵親分の、北大門町は、この隣、北側。)
上野界隈でうまい焼き鳥や、というと、
どんなところがあるのだろうか。
少し調べて、ここに行き当たった。
鳥屋といえば、上野、天神下、湯島、と、名の知れたところが
何件もある。前にも書いているが、鳥つね
など、随分とある。しかし、これらの店は皆、鍋が売り物。
(焼き鳥もある店もあろうが。)
上野界隈、うまい焼き鳥や、と、なると、どうなのであろうか。
なかなか、少ないように思う。
湯島駅の北へ向かって後ろ側の出口のすぐそばだが、
筆者は大江戸線の上野御徒町。
春日通りと中央通りの交差点から、裏通りを抜けて、昌平橋通り
(池之端、天神下、明神下から昌平橋への通り)へ出る。
昌平橋通りを明神下方向に歩き、左側、千代田線出口の隣。
同じ経営の讃岐うどんやの隣。
間口二間もないような、小さなところ。
入ると、すぐ左に二階への階段。
(二階にも席があるようである。)
奥に向かってカウンター7席ほど。
カウンターの前は調理場。
ガラスで覆われているが、もうもうと、煙を上げて、焼き鳥を焼いている。
カウンターに座る。
とりあえず、レモンサワーをもらう。
お通しに、野菜スティックに味噌が添えられて出てくる。
調理場の中は、ご主人なのかマスターなのか、
ガタイのよいおとっつぁんと、眼鏡のお兄さん。
焼き鳥の5本セット、¥850、と、いうのと、
名古屋風味噌味、どて煮、を。
野菜スティックなのだが、この味噌が、なかなか、よい。
ちょっと甘めで、何が入っているのかよくわからぬが、妙にうまい。
腹も減っており、バクバクと食う。
どて煮が、上がる。
む、む。これは、間違いなく正調名古屋風である。
八丁味噌で甘い。かなり粘度がある。
名古屋の味、そのものではなかろうか。
ひょっとして、マスターは名古屋の方?と、思うくらい。
二年半ほど住んでいたので、わかるつもりであるが、
実に、正しい八丁味噌を使った名古屋の甘い味噌味である。
レバーや皮、他に、大根、牛蒡などが、柔らかく煮てある。
うまい、と、いえよう。
さて、焼き鳥。
手羽先、ししとう、塩で。
備長炭で、焼きたて、ジュウジュウいいながら運ばれる。
うまい。
それから、つくね、レバー、ねぎま、これらは、たれ。
筆者はレバーが特に好きだが、どれも、うまい。
追加で、鳥皮ぽん酢。
ぽん酢が別になっており、つけて食べる。
鶏皮は一度ゆがいて、さらにあぶって焦げ目が付けられている。
なかなか、細かい仕事ではなかろうか。
これも、うまい。
呑みながら、気が付いたのだが、マスターとお兄さんの格好。
和食ではない。帽子はかぶっていないが洋食の上着。
洋食の修行をされた方なのであろうか。
フォアグラのパテ、などというメニューもある。
また、どて煮にしても、鶏皮にしても、一品の味の組み立て方というのか
仕上げ方、まとめ方が、とても繊細なように感じる。
お客に対してはむろん丁寧だが、仕事には厳しい。
なにか、微妙な緊張感のようなものも、調理場の中からは感じられた。
只者ではない。
と、このへんで、レモンサワー二杯で、帰る。
値段は、ごく普通の居酒屋。
なかなか、めっけものの、焼き鳥や、で、ある。
ぶらぶら歩いて、上野御徒町まで。