浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



2019-05-01から1ヶ月間の記事一覧

断腸亭落語案内 その8 三遊亭円生 松葉屋瀬川

引き続き円生師の「松葉屋瀬川」なのだが、ちょっと横道にそれて、吉原など昔の遊郭での専門用語、台(だい)、台屋、台のもの、について、ちょっとマニアックな話し。 私は誤解をしていたようなのである。 妓楼、女郎屋でお客が食べるものを誂えるのが“台屋…

断腸亭落語案内 その7 三遊亭円生 松葉屋瀬川

引き続き、円生師の「松葉屋瀬川」。 [下総屋]の若旦那を番頭が浅草見物に連れ出す。今日は三月十五日。旧暦であろう。 浅草見附(浅草橋)から、浅草まで沿道の説明を番頭が始めるのだが、善次郎の方がよっぽど詳しい。関東大震災で焼け杉並に移転したが…

断腸亭落語案内 その6 三遊亭円生 ちきり伊勢屋~松葉屋瀬川

引き続き「ちきり伊勢屋」。 伝次郎の馴染みの幇間(たいこもち)一八(いっぱち)から、着物と羽織を巻き上げたので、さっそく、表の[富士屋]という質屋に、伝次郎が持っていく。 すると、番頭はちょっと目が届かぬ(引き取れない)ものという。こんな形…

断腸亭落語案内 その5 三遊亭円生 ちきり伊勢屋

引き続き円生師匠の「ちきり伊勢屋」。 伝次郎は白井左近に言い渡された二月十五日に死ねずに、半年以上経ち、乞食のような姿になり高輪の通りで幼馴染の伊之助という者に会う。 その少し前に、高輪の大木戸んとこで、伝次郎は白井左近に会ったという。 白井…

断腸亭落語案内 その4 三遊亭円生 ちきり伊勢屋

引き続き、円生師匠の「ちきり伊勢屋」。 伝次郎が、白井左近に死を宣告されたのが7月。そこから慈善を始めて3か月、10月になった。もう金も半ば使ってしまっている。 そこから“心を入れ替えて”遊び始める。柳橋で芸者買い、吉原へもいく。 遊んでみれば、む…

断腸亭落語案内 その3 三遊亭円生 御神酒徳利~ちきり伊勢屋

引き続き、円生師(6代目)の「御神酒徳利」。 夢枕に神奈川宿[新羽屋]のお稲荷様が立った。 善「ぅへぇ~。ありがとうございます。ありがとうございます。 ご遠方わざわざおいでいただきまして。 お帰りは新幹線で。」 (笑) これから。急いで、鴻池善右…

断腸亭落語案内 その2 三遊亭円生 御神酒徳利

引き続き円生(6代目)師の「御神酒徳利」。 馬喰町の老舗の宿や[刈豆屋]の通い番頭の善六という人が主人公。 商家の番頭というのは小僧、手代から多くはなるが、奉公が終わり奉公人ではなく、給金で雇われるようになっている。住み込みのままの場合もある…

断腸亭落語案内 その1 三遊亭円生 御神酒徳利

昨日からのつづき、ではあるが、いい加減、タイトルを変えた方がよいか。 断腸亭落語案内?、、前にも書いたような気もするが。まあ、よいか。「その1」として再スタートにしよう。 須田先生からも離れ、現代の東京の落語家から音の残っている、過去の落語…

須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」~断腸亭考察 その37

引き続き、今の東京の落語界について。 元来私は談志信者である。小谷野先生 は「立川流真理教徒」と書かれている。自分ではそこまでではない、とは思っているのだが、素人落語の師匠である志らく師はもちろん、立川流の師匠連を一番多く聞いてきているのは…

須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」~断腸亭考察 その36

須田先生の「三遊亭円朝と民衆世界」から江戸(東京)落語と「悪党の世紀」について私の考えたことを書いてきた。 江戸(東京)落語が「悪党の世紀」を経たことによって、人間をより深く考えるものになったのではないか、という仮説で、ある。 東京の今の落…

須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」~断腸亭考察 その35

「黄金餅」に匹敵する「悪党の世紀」的な、上方種の落語「らくだ」についてちょっと考えている。 「らくだ」は明治末に京都の桂文吾(4代目)から東京の柳家小さん(3代目)に伝えられたという。 小さん(3代目)は幕末の安政3年(1857年)生まれ、昭和5年(…

須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」~断腸亭考察 その34

引き続き「黄金餅」。 情報が少ないながら、円朝以降どんな風に現代まで伝わってきたのか、追ってきた。 後半があり、金兵衛の餅やは一度は成功するが、金兵衛の息子によって家は潰れる。この勧善懲悪の後半部分はおもしろくなかったため、演じられなくなっ…

須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」~断腸亭考察 その33

引き続き「黄金餅」。 夜が明けて、金兵衛はすぐに桐ケ谷の焼き場に戻ってくる。 扉をドンドン叩きながら、「オーイ、焼けたか~、焼けたか~」「焼けたか~、って、芋ぉ買いにきたんじゃねぇよ~」 こんな場面もギャグ満載。ここから、骨上げ、焼き場の骨を…

須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」~断腸亭考察 その32

引き続き、名作「黄金餅」。 西念が死んじゃって、金兵衛は飲み込んだ金を取ろうと算段。葬式を仕切ることにする。大家にいって、通夜の準備。 早桶※なんぞ買えないから、井戸端に干してあった奈漬けの樽(大家のを無断借用)に納める。長屋の者も集まって、…

須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」~断腸亭考察 その31

このシリーズもそろそろ終盤が見えてきた。 引き続き「黄金餅」。これも、実は「悪党の世紀」の作と考えてよさそうなのである。 金山寺味噌を売る金兵衛と願人坊主の西念が住む長屋があるのが、下谷の山崎町。※1 ここは明治になり万年町、今は東上野4丁目と…

須田努著「三遊亭円朝と民衆世界 ~断腸亭考察 」その30

引き続き「品川心中」。 金蔵一人、海に突き落とされて、ずぶ濡れ。元結(もっとい)が取れて、ざんばら髪。海藻はつく、船虫なんぞが這いまわる有様。 このまま桟橋に上がって、白木屋に戻るのは恥の上塗り。そのまま、ざぶざぶと遠浅の海を歩き、岸に上が…

須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」~断腸亭考察 その29

引き続き「悪党の世紀」と落語の関わりを実際の噺をみながら考えている。 幕末当時にできた噺が「悪党の世紀」を反映しているであろうということもあって「唐茄子屋政談」をみたのだが、“反映”どころではなくお話そのものが、殺伐としてしまう。まあ、考えて…

須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」~断腸亭考察 その28

因業大家vs.店子「唐茄子屋政談」を見てきた。 書いたように、落語でもあるがオリジンは講談で、落語というメディアにとどまっていない作品。「悪党の世紀」そのものといってもよいという理解をした。 さて、次。「大工調べ」で、ある。 有名でもありまた、…

須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」~断腸亭考察 その27

引き続き「悪党の世紀」を踏まえての断腸亭の考察。 円朝の忠義・孝行の孝行に対し徹底的に茶化す「二十四孝」(+「天災」)について考えている。 これ、どちらも真実なのである。抵抗する八五郎も説教、意見をする大家、紅羅坊奈丸も。 どちらも人間の中に…

須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」~断腸亭考察 その26

さて。須田先生の研究も読み終わり、私の考えたこと。 幕末の動乱、民衆達にとっては「悪党の世紀」のなかで落語はどのようになったのか。変わったのか、変わらなかったのか、円朝師と作品はわかったのだがその他の落語家と作品たちも含めてである。 もちろ…

須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」その25

さて。引き続き「名人長二」。 晩年「文七元結」の次の作。 あらすじは書かぬが、ざっくりいうと、超職人気質の指物職人の長二の噺。 因縁ドラマがあって、お話としてはやはり勧善懲悪になっている。それも職人気質の真っ直ぐな長二ゆえに、最終的には勝者と…

須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」その24

令和になりました。来る時代の皆様のご多幸をお祈り申し上げます。また、相変わりませず、宜しくお願いいたします。断腸亭 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「文七元結」やはり素直によい噺であると思う。名作といってよい。書いているように、…