浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



じゃがいものコロッケ

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2月2日(日)第二食

ポテトコロッケ、で、ある。

肉やさんのじゃがいもコロッケ。

拙亭近所には、いわゆるお肉やさんがもはや少なく
買うとすると、デパートなどに入っている[井泉]だったり、
とんかつ店の揚げ物としてということになる。

つまり気軽に買い食いするものでは、なくなっている。

ご覧になった方も多いかもしれぬ。
先週のNHK「チコちゃんに叱られる!」。
「なぜ、肉やさんにコロッケがあるのか?」

まさに、知らなかった。
私も、ボーっと生きてました。

元祖があったということ。
番組では名前は出されていなかったが、東銀座の[チョウシ屋]さん
という昭和2年創業の精肉店のよう。

初代のご店主が洋食の修行をされて、独立したのだが、
開店資金が足らず、洋食店は開けず、精肉店を始めた。
この時、肉だけではなく、本職であった洋食で、安く売れる
じゃがいものコロッケを売り出したのだが、これが広まった
ということ。
日本ではじゃがいものコロッケはまさにあたり前のメニューだが
番組によれば、じゃがいものコロッケそのものも、この初代の方が、
考えたものとのこと。肉やのコロッケの元祖どころか、
じゃがいものコロッケの元祖でもある、と。
さらに肉やさんで、コロッケ以外にも様々な揚げ物を作って
売るようになったことの元祖にもなろう。

確かこのご主人はレシピを同業の肉やさんに公開され広まった、
と番組では言っていた。見上げたものである。

今も、三代目であったか、が東銀座で営業されている。
サンドイッチなども売られているよう。一度行ってみなければ。

さて。
ここまではよいのだが、コロッケのこと、ちょっと考察。
ちょっと重箱の隅をつつくことようなことになるのだが、
おもしろいので、書いてみる。

あのじゃがいもで小判型の肉やさんのコロッケは
この方が広めたのはおそらく正しい、のであろう。
どこもあの形で挽肉と玉ねぎみじん切りが入っているのは
まさに同じレシピからのものであろう。

だが、じゃがいものコロッケがこの方が本当に元祖なのか、
というのは、ちょっと疑問があるようなのである。

ウィキペディアのコロッケの項によれば、

じゃがいものコロッケは明治28年には既に一般化
していたともいう。出典も明示されているので正しいのであろう。

また大正時代に「コロッケの歌」というのが流行っている。
「今日もコロッケ、明日もコロッケ・・・」というあれ。
(益田太郎冠者作詞~この人、おもしろい。 明治から大正の
男爵で実業家。さらに、明治から大正の軽演劇の脚本家、落語「宗論」
「かんしゃく」の作者でもあるよう。知らなかった。ウィキペディア

この歌は新婚家庭の毎日のおかずが、コロッケと言っている。
大正時代には既にコロッケは一般家庭で作られていた。
これは史実であろう。

この大正期に作られていた家庭のコロッケがどんなもので
あったのか。これはじゃがいものコロッケではなかったのか。
そう予想できるではないか。ベシャメルを作るのが家庭で
一般化してはいなかろう、と。

じゃがいものコロッケは明治終わりから一般化して、家庭でも
作られていた。だが、形、レシピは現代に伝わっている肉やの
じゃがいもコロッケとは違っていた。そういうことでは、
なかろうか。私の仮説であるが。

だが、この明治の家庭のコロッケは、戦後、現代まで家庭には
伝わっていない。これはおもしろい。

おそらく東銀座の[チョウシ屋]さんが広めた肉やさんのコロッケが
どこでも安く買え、家庭では作らなくなった。これも私の仮説。
じゃがいものコロッケは材料費は安いが、かなりの手間がかかる
ことは、一度作ってみればおわかりになろう。

では、明治の家庭で作られていたじゃがいものコロッケは、
どんなものであったのか。これも気になる。
これは私の継続調査にさせていただこう。

だが、流行歌にもなるほど一般化していた家庭のコロッケが
その後、あまり作られなくなったとすると、ちょっとおもしろい。

と、いうことで、その手間のかかる、じゃがいものコロッケを
作ることにした。

だが、ここでちょっと考えたのである。

挽肉・玉ねぎ、小判型の[チョウシ屋]版じゃがいもコロッケ?。

いや、待てよ。
ちょいと、思い出した。

昨日の、鱈の白子の残りがまだある。

あれをじゃがいもの中に入れてコロッケにする。

え?、と思われるかもしれない。

実は、こういうレシピは、存在するのである。

和食の料理人が考えたものだと思う。

鱈ではなく、鯛の白子などでも作る。
以前にこのレシピをなにかで見た記憶があったのである。
ある程度、和食料理人の間では一般的なのであろう。
実際にも小さいものを和食割烹のお通しのようなもので
食べたような記憶もある。

全部ではなく、半分は[チョウシ屋]版でもよいだろう。

買い出し。

じゃがいも、パン粉、油が切れていた。
玉子も。
挽肉はボロネーゼに使った残りを冷凍してある。
玉ねぎもある。

じゃがいもは、長崎産新じゃが、大きなもの。

作る。

 

つづく