浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。
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断腸亭落語案内 その62 金原亭馬生 柳田格之進

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引き続き、十代目金原亭馬生「柳田格之進」。

碁会所通い、万屋万兵衛と打つのが数日続き、
今日は特別に暑い。そして、碁会所は満員。
万兵衛の申し出で、これならば、手前の家へいらっしゃいませぬか
と誘われ、行ってみる。
店の奥の離れで、町の喧噪を離れ、静かで誠に涼しい。

馬道の万屋万兵衛の家の離れで碁を打ち終わり、
酒、肴のもてなし。
柳田は浪々の身で、返すことができぬと、遠慮をするが、
すすめ上手で、受ける。
お土産までもらって帰る。

明くる朝になると万屋の小僧が柳田の家に迎えにくる。
今日は、行けないというと小僧は、きっと柳田様はそうおっしゃる
だろうから、お前は柳田様が来るまで帰ってきてはいけないと
言われてきたという。
それではしょうがないと、柳田は出かける。
碁を打ち終わると、またご馳走が出てお土産をもらって帰る。

これが度重なる。
そのうちに、米が一俵、柳田の家に万屋から届く。
沢庵が樽で届く。
酒も届く。

生活に困っている柳田にはありがたいことは間違いない。
あー、こんなことをしていてはいけない、自分が世に出たら
この恩は返そうと思う。

そのうちに、秋になり、涼風が立ってくる。

中秋の名月
万屋で月見をするというので、柳田は招かれる。

例によって万兵衛と柳田は碁になる。
二人、夢中になる。

碁の最中に、番頭の徳兵衛が小梅の水戸様の掛け、五十両
主人の万兵衛に渡しにくる。万兵衛も碁に夢中で、はいはい、と
受け取る。

なん番かの勝負が終わり、遅くなったことに気付き、
柳田は、お嬢様へと土産ももらって帰る。

柳田が帰った後、番頭が先ほどの五十両は、と聞くと、
万兵衛は、、、受け取ったことはなんとなく、覚えている
のだが、持ってもいないし、あたりにもない。

番頭の徳兵衛は、ことによると柳田様が持って行ってしまった
のでは、という。万兵衛は慌ててたしなめる。

もし仮に、柳田様が持って行ったとしてもそれはそれでいい。
差し上げたいと思っていたのだが、あの方は受け取らない。
私の小遣いの方に付けておきなさい、と万兵衛。

忠義の番頭、徳兵衛は納得がいかない。

翌日、徳兵衛は万兵衛に内緒で柳田の家にくる。

十両がなくなったことを言い、知らないか、と聞く。
柳田は怒る。
武士に対して、失礼な奴。

徳兵衛も引き下がらない。

柳田は天地神明に掛けて、金は盗まぬ、と。

徳兵衛はあくまで、そうおっしゃるなら、お奉行所
訴え出るという。

柳田は、旧主家への差し障りを考え、わかった、という。

わしは取らぬ。
だが、そうまでいうのであれば、わしは取らぬが、
十両用意してやる。
取っていないので今はない。明日、取りにまいれ。

取っていないので、必ず後で、その金は出てくる。
その時はどうする、と、柳田。

まあ、そんなことはないでしょうが、私の首と主人万兵衛の首を
差し上げます。

そう言って徳兵衛は帰る。

しばらく考えて、柳田は手紙を書く。
娘の糸に、久しぶりに牛込の叔母のところへ行ってこい。
今日は泊まってきてよいぞ、と。

狭い家、話しは聞こえていたので、糸は、むろん気が付く。

お父様は、お腹を召す(切腹する)おつもりなのでしょ。

どうぞ、この糸をご離縁下さい。
女という者は、吉原というところへ行くと、お金になる
と聞いています。私がまいりますのでその金を徳兵衛に
おやり下さいと、いう。

お腹を召すと、柳田は盗人の汚名を着て腹を切った、だらしの
ない奴だ、といわれます。
取らないものは、必ず後で出ます。その時に、徳兵衛、万兵衛の
首をお打ちになりまして、ご武名をお上げください、と。

、、そうか、、、そうか、すまない。
馬鹿な父だ。万兵衛とつきあったのが、誤りであった。
だが、柳田の家名は汚したくない。
お前、吉原とやらへ行ってくれるか。

はい。どうぞ、お売りください、と。

ちょうど一軒置いた隣に、女衒(ぜげん)がおり、その手配で
吉原の[角海老]へ。
糸は器量もよく、躾も行き届き、教養もある。
柳田は、五十両を手にする。

さすがに、柳田はこの五十両の金を前に涙をこぼす。
すまなかった。愚かな父を恨んでくれ。
と、声を上げて哭(な)いた。

明くる朝。
徳兵衛が訪れる。

柳田は、わしは取ってはおらん。だが、そこに居合わせた不運で
その方(ほう)へ遣わすんだ。よいか。取ってはおらんものは必ず出る。
その方と万兵衛の首をもらうという約束を忘れるなよ、といって、
十両を渡す。

徳兵衛は、見ろ、やっぱり取ったんだ、すぐに五十両出てきた、と。

帰って、主人万兵衛に事の顛末を話し、五十両を渡す。

万兵衛は、あれほど私の小遣いにしておけと言ったのに、
なぜそういう余計なことをするんだ。
慌てて下駄を突っ掛けて、阿部川町へ。

柳田の家の雨戸には釘が打ってある。
戸を開けてみると、手紙があった。
家主と万兵衛宛に、故あって当地を立ち退くものなり、柳田格之進、と。

 

つづく