引き続き、文楽師「つるつる」。
途中で注がれて、またいっぱいになっちゃう。
(ここで切る録音も残っている。)
一八、もうベロベロ。
八「あー、もういい。
あたくしはねー、余興をご覧に入れる。
あたくしは、踊りを踊って、、
旦「踊りを踊る、って、お前の踊りなんぞおもしろくねえ。」
八「おもしろくないって、あーた知らないんだ。
あたくしはねー、かっぽれをご覧に入れる、、
(手ぬぐいをねじって、鉢巻きをする仕草)
かっぽれはあたし、売りもんだったんだ、、
(旦那が芸者に対して、一八を指さし)
旦「おい、見てやれよ、だいぶ酔ってるから、、
あ~~~~~~、い~~~か、、、、、」
(階段から、落っこちたてい。手を振りながら、階下の者に)
八「ダイジョブ、、
落っこちたんじゃ、ないんです。飛び降りたの。
もー、ドロン。
あのね、大将にそ言っといて下さいよ。
一八の身体を見ましたところ、あれはたいへんな重症でございます。
とても、この世のものではございますまい。
どうか、香典を十分にやっていただきたい。
こう仰って。ヘイ。
ちょいと、女将に礼を、、え?おやすみになった?!。
あーそーすか。
お御折?。(おみおり。みやげの折詰。以降片手に折をぶら下げる仕草。)
すいません。どーかよろしく仰って下さい。
あー、げんちゃん。
君に、下足を揃えてもらっちゃ、すまないねー。
(袂をさぐり、なにか出す仕草。)
これはねー、煙草。
なに言ってんの、、げんちゃん、煙草、煙草。
女将さんによろしく言って。
じゃ、さいならー。
(鼻歌)
ちゃちゃんちゃ~~ん。
こうなりゃもう、こっちの身体だ。
出りゃぁ、しめたもんだ。
ちゃちゃ~~~ん、ちゃちゃん、、
これでねー、家い帰ったら、お梅ちゃんがねー、怒るよ。
どしたの、たいへん遅いじゃないの。
こういうことんなる。だから、俺、冗談いっちゃいけない。
こっちゃぁ、商売だよ。
商売だって、待ってるもんの身になってご覧なさいよ~、
(折を振る仕草。)
あ、折の底が抜けちゃったよ、、。
帰ろー。
こりゃ、酔っ払ったなぁ~、、、
(右手で扇子を床に打ち付け音を出し、左手で戸を叩く仕草。)
ただいま~~、ただいま~~、ただいま~~。
女「お帰んなさい。今、開けますよ。
今開けるわよ、ドンドン叩いて。酔っ払って帰ってきて。
ほんとに、しょうーがないねー。
(開ける仕草。)
あー、くさい。
(袂で、顔を覆う仕草。)
こっちお入んなさい。
八「折をね、持ってきました。」
女「おみやげって、折の底が抜けてるじゃない。」
八「底が、抜けてますけどね、、あのー、照焼きだのねー、蒲鉾やなにか
ポストのそばに、います!。」
女「なんだい!。もー、おやすみなさい!。」
八「寝ますよ。
師匠は寝た?。
あーそう。
お梅ちゃん、寝ましたか?。寝た?
あー、そう。いい、いいんですよ~。
お梅ちゃんが寝ましたぁ~~(節が付いている。)
(梯子段・階段を上がる仕草。)
梯子段をぉ~~~上がってぇ~~~
二階ぃ~~~~、よし、っと。
こいで、いいんだよ。これでもう、こっちの身体ですよ。
これで、チンチーン、と鳴りゃぁ、ツー、、、
あー。
こりゃぁ、まずいねー。師匠の枕元を通るよ。まずいね、こりゃ。
目ざといからねー、師匠は。
誰だ、そこへきたのは。
一八でございます。
なにしに来たんだ
憚り(便所)にまいりました。
憚り、そっちにあらー。
こりゃ、まずいよ。
なんかいい工夫は、、
一八の部屋の真下が小梅の部屋。
一八の部屋には明り取りの格子があり、外せば下へ抜けている。
ここから降りよう。
だが、飛び降りたら、音もするし、いけない。一計を案じる。
天井の梁に帯を掛けて、つたって、降りればいい!。
帯だけじゃ足らないので、腹巻、褌まで使って、綱を作る。
つかまってみる。目が回るね~~、そうだ、手ぬぐいで目隠しをしよう。
こうして、二時になって、チンチーンと鳴ると、つるつる、つるつる、
っと。
と、奴さん、綱につかまったまま、寝てしまう。
で、
チンチーン、と鳴ったから、つるつるつるつる~~~~~、っと、
下へ降りる、ってぇと、下はもう、すっかりご飯の仕度ができている。
おみおつけの鍋のそばへ降りた。(つまり、12時間後の午後の二時。)
「あれ!、一八っつあん、どうしたの?」
八「あ~~~、っとこれはどーも。
あ~、おはようございます。」
師「この野郎。
なんてぇ姿だ。呆れたもんだ。
この野郎、寝ぼけやがったか!。」
八「あ、は、は、は。
井戸替えの夢ぇ見ました。」
これで、下げ。
“井戸替え”はもうわからない。井戸というものは、定期的に
掃除をする。これが井戸替え。専門の職人があり井戸へ入る。
この様子が、今の上から綱で降りてきた一八の様子。
つづく