浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。
断腸亭料理日記本店
 

断腸亭落語案内 その42 桂文楽 つるつる

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引き続き、文楽師「つるつる」。

旦「おい、だいじょぶかい?!。
  嫌ならよせよ。

  やるぞ!」
八「へい。ありがとうぞんじます。
  右まさに頂戴仕(ちょうだいつかまつ)りました。受け取りは
  差し上げません。

  今度(こんだ)ふーちゃん!。
  あーたお酌。

  えーもう、てるちゃんと、ねーさんはだめ。
  敵のスパイてぇことは、ちゃんとあたくし、心得てるから。
  
  あーた。こないだ歌舞伎でねー、おさらいしましたねー。
  うまかったねー。また、上出来だった。
  いや、ほんとに、あーたねえ、揚幕んとこでねー、チャリーンと
  したらねー、長刀持ってねー、あーた、トン、トン、トン、トン
  トン、て花道の七三のとこでねー、トーンと切ってねー、見得ん
  なった時ねー、お客様がねー、ワーッとほめたらねー、
  おっ母さん泪こぼしてた。あたしの隣で見物してたの。
  いや、まったく。
  あたくしはねー、、、、
  
  呑みますよぉ、、、、、

  (グビ、グビ、グビ、、呑む仕草)

  ふーーーーーー。へぇ。

  お世辞じゃなく、ほんとーですよ。
  
  もー、こーなると破れかぶれです。やーもー、いらっしゃい。
  もー卑怯なこと言いませんから。
  いっぱい注いで下さい。
  
  (コップを差し出す。)
  
  よーし!、よーし!よーし!。

  へ、へ。いい商売だな。
  ご祝儀をいただいて、
  お酒をいただいて、
  そいで、家へ帰れば、お梅ちゃんが待ってる。
  こういう間のいい時には、あたしゃ、帰りになんか拾うよ。
  あたしの運勢、なんてぇものはねー、
  
  (グビ、グビ、グビ、、呑む仕草)

  大将。
  いただいてなんか言うわけじゃありませんけどね、
  ほんとに長いことご贔屓をいただいてますねー。
  しくじったこともあるけどさー。
  (かなり酔っている趣)
  朝起きてねー、
  お湯行ってねー、
  帰ってきて、帝釈様拝むんだ。
  あーたのこと。
  どーか大将になに事もございませんように。
  あたくしは大将のために、生きていられます。
  
  え?なんです?。
  ベラベラお喋りして、半分呑んで、息をついてる?。
  あーた、そんなこというんじゃないよ~
  
  あーたのこと、芸者衆が褒めてますよ。
  いや、ほんと。形(なり)の拵えがうまいって。
  あーたはねー、お背がお高いから、なんでもお似合いだ。
  洋服はもちろんのこと。結城紬が似合って、お召しを召しても
  にやけなくて、紋付き羽織袴が立派で、赤い着物で鎖をつけて、、
  あ、これは失言、失言。
  いえ、なんでもお似合い。
  そりゃーもー、あたしゃ、請け合って、、、

  (右手の湯飲みを見て)

  大将?、、あたしゃ、半分いただいたん、、
  これ、五十銭、下さい。
  え?、手前(てめえ)が間抜けだから、注がれたんだ、?

  (芸者に)
  誰、これ?注いだの。どして、そいうことすんの?
  これ、お金が掛かってるん。営業で呑んでるんですよ、今日はこれ。
  
  (旦那に)
  大将、あたしゃこれ、警察に訴えるよ。営業妨害でしょ?!。
  
  ちくしょー、クスクス笑ってやがる。おぼえてやがれ。
  よーし!。そーいうことするんなら、どいつが注いだかねー、
  あたしゃ、犯人を捕縛しますから、、、

  (呑む、グビ、グビ、グビ)

  女の生来ですね。人をいじめるという。
  
  (誰かに注がれる)
  あー、、、!こりゃ、驚いた。
  ふーちゃん、ふーテキ!、油断も隙もならないね。ふー子!。
  ふーちゃん、こっちいらっしゃい。
  こっちへ、いらっしゃい、って。

  そーいうこと、ありかい?。
  ありなら、ありでいいよ。
  大将にバラすよ、こないだのこと。
  知らないと思ってやがるな。知ってるぞ。なんだって知ってるんだ。
  
  大将、珍談!。大珍談。
  この、ふーちゃんなるものがねー、普段お座敷い出てねー、
  あたしゃ、男は大嫌い、てなこと言って、それが大違い。
  あーたがこないだ、鳴尾の競馬(兵庫県阪神競馬の前身)いらした。
  あたしも東京駅お送り申した。
  大将!、ご機嫌よく行ってらっしゃい!、大きな穴を取って
  らっしゃいよ~、って。汽車がスーッと出た。
  プラットフォームから下へ降りるとねー、かのふーちゃんなるものがねー
  向こうから来るじゃないすか。あー、ふーちゃんが来たな、って思うから
  ふーちゃん!、って、あたしゃ呼ぼうと思った。そいたらねー、あたしの
  顔を見てねー、スーッとそれた。
  ハテ?おかしなことをするな、と思うとねー、、大将、、それるわけ。
  それるわけあり。そばにね、乙な“丹次郎”(“丹次郎”は色男の代名詞。)
  なるものが、ステッキを付きの、洋服拵えで、あーたが知ってる人。
  あーたがね、さんざ贔屓、、
  
  (右袖を右手でパンと後ろに叩き)
  
  今さら、和睦を申し込んだって、だめだよ。みんな喋っちまう。

  (右袖を右手でパンと後ろに叩き)

  およしなさいよ。なにをすんだよ、ちくしょうめ。
  
  (右袖を右手でパンと後ろに叩き)

  およしってんだよー。

  (くすぐられる仕草)

  あ、は、はー、くすぐっちゃだめだよ。
  あはは~~~~。

  あー、またいっぱいになっちゃった。

 

つづく