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断腸亭落語案内 その12 古今亭志ん生

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さて。

円生師を書いてきた。
次は、志ん生師にいってみる。

五代目古今亭志ん生。今、NHK大河「いだてん」でビートたけし氏が
演じている。金原亭馬生(10代目)、古今亭志ん朝の父。池波志乃の祖父。

志ん生師は明治23年(1890年)~昭和48年(1973年)。
円生師(6代目)、書かなかったので書いておくと円生師は明治33年
(1900年)~昭和54年(1979年)で十歳下である。

「いだてん」のたけし氏が演じているのは、志ん生ではなく、たけし
であろう。まあ、それでよいのだろうが。ついでに、他の人も書いてみる。
森山未来氏演じる若き志ん生はよい。もう出演なくなっているが
松尾スズキ氏の橘家円喬(4代目)は「富久」を演っていたが、あれは
酷かった。落語にもなっていなかった。むろん、素人に名人の噺をしろ
ということ自体、無理であろうが。
私の師、志らく師から教えられたが、落語はリズムとメロディー。
落語に聞こえるリズムとメロディーがあって、台詞でもないし朗読でも
ないのである。これがなければどんなに上手い俳優がやっても落語に
聞こえないのである。誰も教えないのか、時間がないのか。
俳優としての松尾氏は好きであるが。

いずれにしても「いだてん」で宮藤官九郎氏は志ん生師も描きたかったよう。
たのしみである。

さて。
志ん生師といえばなんであろうか。
好きな噺。

一般的には「火炎太鼓」。
そして、先にも出た「富久」。

この二席は私も同意する。
どうも富くじと古道具は志ん生師自身好きだったように聞こえる噺。

また、前に書いた「黄金餅」

また、ちょっとこれも先に書いたが「寝床」。
そして「らくだ」、「文七元結」。

また「はてなの茶碗」「井戸の茶碗」あたり。
「火炎太鼓」もそうだが古道具やのものは志ん生師自身も
好きだったのでなかろうか。

あまりいわれないかもしれぬが「三軒長屋」。
一席ものにしては長いが私は大好きである。

とにかく噺の数が多いので、むろんまだまだあるが、今挙げたのは
噺自体もおもしろく、志ん生師のできもよいものである。

談志好きが同じであった小谷野敦氏は「21世紀の落語入門」

志ん生はどうしても好きになれない、理解できない
と書かれている。落語好きでも、こういう人はいるのだろう。

まあ、志ん生師はクセが強い。
録音も、数はとても多いのだが、出来がよいものわるいものの
差が激しい。言い間違い、トチリその他含めてである。
そして当たり前だが、晩年、倒れてから後のものは特に
よくない。つまり玉石混交。

落語家、芸人ではいわれることだが、フラがある。
フラの説明はむずかしいのだが、持って生まれたその人のおかしみ
というのであろうか。今でいえば、天然?、か。
他の人であれば、同じことを喋ってもちっともおもしろくない
というフレーズ、噺は多いだろう。

酒好き、貧乏。
死後に長女の美濃部美津子氏(「いだてん」では小泉今日子氏)
が書かれた「志ん生の食卓」

で、確か「家族は貧乏だったみたいだね」みたいな、ことを志ん生師が
いっていた、と書かれていたと思う。
(読んだのだが、ちょっと探したが今手元に出てこないでの未確認。)
ひどい言いようである。どの口が言いうか。
だが、いかにも志ん生師ならいいそうである。

改名の数、師匠を変えた数、まあとにかく多い。
夜逃げ、引っ越しの数。また、いられなくなって、廃業というのか、
どの師匠にもついておらず、寄席にも出演られない時期まであった。
俺の方から(師匠を)破門してやった、ぐらい言いかねない。
詳しくは「びんぼう自慢」

「なめくじ艦隊」

志ん生一代」(結城 昌治)

あたりを読まれればお分かりになろう。

全身落語家。この人が、落語そのものという感じであろうか。

見ていて、かわいい。
危なっかしい。

酒好き。
いつも酒が入っていたのであろうか、高座で寝てしまって、
楽屋から起こしにきたら、客が「寝かしといてやれ」といった
という逸話は有名であろう。

志ん生、談志、ビートたけし」悪党説、というのを書いたが、
そういうキャラでもあろう。

まじめな人は、理解できないのか?。
そうかもしれぬ。
もちろん、志ん生は落語だが、志ん生だけが落語ではない。
別段、志ん生がわからなくとも円生師もいれば、文楽師もいる。
もちろん、新旧他の落語家もたくさんいる。
それでよろしかろう。

No.1はなんであろうか。
やはり、私だと「黄金餅」になるかもしれぬ。
先日、長々書いたのであれ以上付け加えることはないのだが、
志ん生師の、この噺の枕を書いてみようか。

ケチという切り口の小噺をする。

三つ四つ、演るのだが、

 ケチな人は、
 出すということはなんでもいやだ。
 袖から手ぇだすのもいやだ。
 息を出すのもいやだ。
 出さきゃと苦しいから、少ぉ~し出しとこう。

談志師も言っていたが、この「少ぉ~し出しとこう」が素敵なのである。

 こういう人は、トゲなんぞ刺しても抜きませんな。
 これは身に入ったんだ、なんてな。
 いついっ日(か)トゲ入り、なんてちゃんと帳面につけてあって
 下に認めの判(はん)が押してあったりなんかして。

志ん生師のを聞くと、そうとうおもしろいのだがこうして
文字にすると、おもしろさが半減以下である。
まったく同じように同じことを別の人が演っても志ん生師ほどは可笑しくない
はずである。これがやはり志ん生師のフラ、なのであろう。

 

つづく